山の暮らしの物語15 発電所を造ろう
Let build a power plant
ゆきちゃんは とんでもない村に生まれた。
戦争が終わって 世の中ではテレビ放送も始まったという時代に
その村には 電気がなかったのだ。
両親は町に出ていた事があるから、電気の灯りくらい知っていたが
彼女は生まれて以来、薄暗いランプの灯りしか知らずに育ち
そのまま、小学生になろうとしていた。
ところが、ちょうど、ゆきちゃんが来年は小学校に上がるという年になって
村は年明けから大騒ぎになっていた。
村人が、自分達で自家発電所を作ろうとしていたのだ。
川上の地区から順に それぞれの家に電気を引く電柱を建てている。
村を東西に流れる川に沿って
あちらに数軒 こちらに数軒と人家が点在しているから
人口1000人足らずという小さな村でも、なかなか大変な作業になる。
おまけに、工事をしているのは電力会社ではない。
木材の伐採という林業の合間をぬって、村人達が総出で働いている。
それに、一番大事なのはダムと発電所だ。
谷川を堰き止めてダムを作るのは、梅雨明けからと決まっていた。
一番元気な若衆達が「まかせとけ」と張り切っている。
発電所のコンクリート打ちと 発電機の据え付けは
もう少し年配のおっちゃん達の担当だ。
ゆきちゃんの父さんは、発電所チームである。
いったいなぜこんな事になったのか?
それは、戦争が終わって10年経っても
この山村に、まだ電気が来ないせいだった。
いい加減待ちくたびれた若い衆の1人が、正月の飲み会で
「いったい いつになったら、電気引いてもらえるんだ!」と叫んだ。
「そうだ そうだ 山奥だからとバカにして」
別にバカにしている訳ではなかろうが
こんな 猿と イノシシと うさぎしか いないような所に
電気工事をするのは 電力会社も気が進まなかったに違いない。

そこで、グイッと熱いのを呑み干した兄ちゃんが
「どや いっそ わしらで発電所 作ったろうやないか!」と言い出すと
「何やて そないな事 出来るんかい?」ぐっと膝を乗り出した奴がいた。
こうして、いつになく熱くなった若者達は
村の長老や 森林組合に勤める有力者
若い頃に街に出ていた出戻り衆などを訪ねて相談を重ねた。
ゆきちゃんの父さんは、その出戻り衆の1人である。
父さんは、小学校を出ると大工修行で街に出てそのまま兵隊にされてしまった。
戦争が終わって、ボロボロの我が家に帰った時には
すでに両親はなく、嫁入り前の妹やまだ小学生の弟が腹をすかせているという有様だった。
「おれは 長男やなかったらこんな所に帰って来んかった」とつぶやく。
そんな父さんも、街で身につけた電気の知識を武器に、村の自家発電計画に加わった。
そもそもこの話が持ち上がったのはおととしの正月。
すったもんだで 1年が過ぎ
去年は 本決まりになったこの一大プロジェクトの細かい計画作成に追われ
3年目に入った今年から やっと工事が始まったという次第である。
小さな 英語レッスン
発電所を造ろう
Let build a power plant
その村には 電気がなかったのだ
The village had no electricity.
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