88日目:竜胆(りんどう)はなぜ「竜の胆」と書くのか?苦い根の正体と、源氏の家紋に秘められた植物全体を愛でる日本人の感性
竜胆。
花に詳しくない人でも、名前くらいは聞いたことがある花ではないでしょうか。
青紫色の花を咲かせる、日本の秋を代表する植物です。
「竜の胆」と書いて、何故「りんどう」と読むのですが、なぜこのような呼びになったかご存知ですか?
何故この可愛らしい花に、竜の内臓のような物騒な名前が付いているのでしょうか。
【現状】秋の山に咲く「一人で立つ」花:竜胆の植物学的プロファイル

竜胆は、リンドウ科リンドウ属の多年草です。
本州、四国、九州の山野や草原、山道の脇などに生え、秋になると青紫色の、上を向いた釣り鐘のような形の花を咲かせます。
ただし、いつでも大きく花を開くわけではありません。
晴れた日の昼間には開き、曇りの日や夕方になると閉じるという、日が差している間だけ空に向かって口を開く性質があるそうです。
花を咲かせる時期は、主に夏の終わりから秋で、春の桜のように一斉に咲いて景色を埋め尽くすというより、秋の野山で一本ずつ、静かに花を咲かせる植物です。
【由来】熊より強いなら「竜」。根の味と日本の自然との向き合いからつけられた名前

そんな可憐で静かな美しい花が、なぜ竜の名を冠しているのか。
竜胆という名前は、花ではなく根に由来するそうです。
竜胆の根や根茎は、古くから生薬として使われてきたそうですが、この根がとにかく苦いらしく。。。
苦い生薬としては、熊の胆嚢を乾燥させた「熊胆」もあるそうですが、竜胆の根は劣らないほど苦いそうです。
熊よりも上なら竜。
そんな発想から、「竜の胆」という意味で竜胆と名付けられたといわれているそうです。
主題からズレるので軽く触れるだけにしますが、現実に熊より強いものは居ないと捉えられているのが、当時の日本の文化を垣間見えるようで面白いですね。
元々は「りゅうたん」と呼ばれていたものが、日本で訛って「りんどう」になったようです。
綺麗な青紫色の花が由来とは思っていませんでしたが、まさか味とは思いませんでした。
【実用】植物は生活用品だった。生薬としての竜胆が利用された「日本人の生活」

現在では観賞用の花という印象が強い竜胆ですが、昔の人は薬草として使っていたそうです。
薬として使われるのは、主に根と根茎。
生薬としての竜胆は非常に苦く、苦味健胃薬の原料として利用されてきました。また、漢方では竜胆瀉肝湯などに配合されているようですね。
苦いものが胃に良い、という話は今でも聞きます。
山菜や薬草もそうですが、昔の人は植物を見つけると、どんな使い方が出来るのか考えるのは世界中でみられて、どのように使うかは文化の特色が出るようです。
食べられるのか。
毒なのか。
薬になるのか。
染料になるのか。
道具として使えるのか。
昔の人にとって植物は、食料であり、薬であり、衣服であり、生活用品でした。
竜胆も、綺麗だから残された花というより、薬として利用される形で、日本の生活の中に取り込まれていったのかもしれません。
【文化】なぜ源氏は竜胆を選んだのか?「勝利」と「寄り添う」花言葉

竜胆は、日本の文様や家紋にも使われています。
代表的なのが、笹竜胆と呼ばれる紋です。
笹竜胆と聞くと、笹と竜胆を組み合わせた紋のように思えますが、竜胆の葉が笹の葉に似ていることから呼ばれる名前で、基本的には竜胆単体を紋にしたものです。
竜胆紋は、源氏の代表的な紋の一つとして使われていたそうです。
ただし、源氏なら誰でも竜胆紋を使ったわけではなく、特に村上源氏や宇多源氏と関係の深い紋だったとされます。
後世の物語や芸能の影響によって、源頼朝や源氏全体を象徴する紋という印象が広まった面もあるようです。
ここで面白いのは、家紋に描かれているのが花だけではなく、花と一緒に何枚もの葉が描かれます。
実際の竜胆を知らずに紋だけを見ると、花よりも葉の方が目立っているように感じるものもあります。
現代では、植物を象徴するものとして花だけを取り出すことが多いですよね。
でも家紋では葉や茎、実、穂まで含めた全体を図案にしていることが多いのは、咲いている瞬間だけではなく、その植物全体を見ていたのでしょうか。
そんな家紋に使われる竜胆ですが、何故竜胆が源氏と結び付いたのでしょうか。
軽く調べた範囲でははっきりしたことは分かりませんが、その姿から花言葉に「正義」や「勝利」や「誠実」と言ったものが当てられます。
西洋の花言葉では「貴方の悲しみに寄り添う」とあります。
そんなところから、武士の象徴として竜胆が選ばれた、なんて流れがあったのかもしれません。
【結び】価値は見る人の数だけある。見えない部分(根)に目を向ける生き方

竜胆という名前は、綺麗な花から付けられた名前ではなく、地面の下に隠れた苦い根に付けられた名前です。
一方で人々は、その花と葉を文様にして、衣服や家紋に使いました。
薬として見れば、価値があるのは根。
文様として見れば、価値があるのは花と葉。
観賞するなら、価値があるのは色や姿。
同じ植物でも、見る人や目的によって、価値のある部分が変わります。
これってなんでも同じだと思っていて、先日の記事にあったような、使えるお金の増やし方も人によって価値のある方法は違うと思います。
お金の使い方も、どんな使い方に価値があるかは人それぞれ。
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※画像はイメージです
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