僕たちのWILD BUNCH FEST. #ワイバン
あらすじ
彼らは全員、ロックフェスに一人でやってきた。音楽と偶然の出会いを通じ、それぞれの「再起」や「選択」を語るリアルで繊細な青春群像劇──。山口県で開催される音楽フェス「WILD BUNCH FEST. 2025」に参加した人たちの思い【仕事、失恋、確執、挫折、夢】をアーティストの演奏が包み込んでいく。同じ空間を共有した主人公たちは終演後にその思いを語る。これは、「ワイバン」に関わる人全員に捧げる応援歌である。
この作品はフィクションです。内容は実際のライブレポートではありません。
インタビュー内容
・名前と年齢、職業を教えて下さい。
・どこから来ましたか?
・誰ときましたか?
・最近起こった出来事を教えて下さい。
・推しのアーティストは。好きな曲は?
・フェスの感想を教えて下さい。
・会場で印象的なエピソードは?
・ここにまた来たいですか?
【1】ユウト(19歳、広島県、浪人生)

広島から来ました。大学受験、去年受からなくて……浪人してます。予備校に通って、いま夏期講習受けてます。ここに来たのは、完全に現実逃避です。親には「ちょっと気分転換に旅行してくる」って言って出てきました。ほんとはこんなことしてる場合じゃないんですけど。
フェスは初めてです。ワイルドバンチのことは前から知ってた。Arakezuriが出るって聞いて、チケット取りました。好きなんですよ。Spotifyでおすすめに流れてきて、そこから一気にハマって。そんなに音楽詳しいわけじゃないんですけど……なんかしんどい時にそばにいてくれてるような気がして。
今日のライブで「たいせつ」が始まったとき、なんかもう勝手に涙が出てきて…めっちゃ泣いてました。悲しいことがあったわけでもないのに。あんまり泣いてたので驚いたのか、隣にいたお兄さんに肩叩かれて、慰められた。恥ずかしかったな。多分勉強とか、いろいろ行き詰まっていたんだとおもう。
ちょっと救われた気がしました。Arakezuriにも、慰めてくれたあのお兄さんにも、会場の空気とか、太陽とか、人の数とか、全部、すべてに。みんな笑っていて、誰かが泣いていて、ステージに合わせて一斉に手を挙げる瞬間があって、同じリズムで揺れていて。ひとりじゃないって思わせてくれた。
暑かったけど、なんか、暖かさを感じました。ただの日差しじゃなくて、何かが包んでくれるような、安心するような。今の自分が許されてるような、そんな気がした。
帰ったらまた勉強です。切り替えたってほどでは無いし、受かるかどうかは分からないけど……今日のこと忘れずに、支えにして頑張ろうかなって。
将来、こんなイベントに関わったり、フェスのクルーとか、立つのも暑いのも平気なんで、やってみたい。でもまずはやっぱり、大学は行きたい。親にはもうこれ以上、迷惑かけたくないし。合格して、来年もここに来たいですね。
【2】ナオミ(28歳、福岡県、会社員)

28歳です。福岡から来ました。はい、一人です。ほんとは、二人で来るはずだったんですよ。彼と……別れたばかりで。チケットも、彼が取ってくれてて。なんか、捨てるのもったいない気がして。一人で来ちゃいました。
元彼が会場にいるんじゃないかな、ってちょっと思ったんです。新幹線の中とかドキドキしたけど。。まあ人多いし、会うわけないですね。フェスって待ち合わせするの難しいっていうし。
それになんかそういうドラマみたいな偶然って、嫌いなんです。ロマンチックって言う人もいるけど、いや、もういいかなって。
だって、会ったところで、何かが変わるわけじゃないし。気分転換に野外で音楽が聴きたくて来たのに、心のどこかで彼の姿を探してる自分がちょっとイヤだった。でも、それも少しずつ消えていきました。
演奏が始まって、周りの歓声に包まれて、知らない人たちと一緒に手を叩いてたら、「あ、私ちゃんと今を楽しんでる」って気づいたんです。ただ元気になりたかった。
彼と別れた日の夜、YouTubeでLaura day romanceをたまたまみて、その時に「透明」が流れてて……すっごい泣いたんです。自分が音に包まれたみたいで。
今日のライブもすっごく良かった。でも、泣くかなって思ってたけど、意外と泣けなかった。もう、泣くのはあの日で終わったかもしれないです。
フェスは初めてじゃないけど、一人できたのは初でした。はい、一人でもちゃんと楽しめました。周りにカップルとか友達同士がいても平気だった。音楽って、やっぱりすごいなって思いました。
そうそう、とても楽しそうに見てる女の子が近くにいた。顔がキラキラしてて、音に合わせて無邪気に跳ねたり、笑ったりしてて、その楽しさがこっちにも伝わってきて。なんだか、同じ気持ちなんじゃないかって思った。
曲が盛り上がるタイミングで、お互い目を見合わせて、笑ってハイタッチしちゃった。何も言わなかったけど、それだけで十分通じ合えた気がした。うれしかったな。言葉も名前も知らないけど、たしかに一緒にそこにいた。いいライブを、知らない人と体感できたんです。
今日だけは、あの瞬間だけは、世界がちょっと優しくなった気がした。孤独とか、悩みとか、全部忘れて、一緒に音楽の中にいられた。来てよかったって思えました。
それでも……なんだろう。一人は寂しい。そりゃあそうですよね。やっぱりまだ引きずってるんですかね。まあ今日で少しすっきりしました。また普通に笑えるようになれたらいいな。なんか、新しい恋とかも……ここならできそうな気がします。無邪気すぎるかな、ふふ。
【3】ソウタ(19歳、山口県、無職)

19歳です。防府っていう、わりと近くです。無職です。今日が初めてのワイルドバンチです。フェス自体、初めてです。電車とシャトルバスで来ました。
というか、外に出たのが久しぶりだったんです。高校卒業してから、就職したんだけど、すぐにやめちゃって、それからあんまり家を出てなくて。バイトもしてない。ずっと家にいます。部屋の中で動画みたり音楽聴いてる毎日で。引きこもりって言われてもおかしくない。このままだと本当にそうなりそうで。しんどかったけど、MY FIRST STORYがみたくて、来るのを決めました。
マイファスずっと聞いてます。ALONEが好きかな。
しんどいけど来ようと決めた理由は、…特にないけど、マイファスがでるのもあるし。何かを変えたかったのかな。親には何も言わずに出てきたんです。急に出かけるって言って驚いてた。
会場に着いたときは、正直もう帰りたかった。人が多すぎて、怖くて。なんか、足が動かなくて。音も声もぐしゃぐしゃに重なってて、自分の呼吸すらできなくなりそうだった。
もともと、たくさん人がいるのが好きじゃないんです。なんでこんなところに来たんだろうって思ってしまった。就職した工場も、人が多くて、みんなで大声で叫んでる気がして、初日でめまいがした。自分の居場所がない感じ。押し流されるような感覚がして、逃げ出した。
あの時と同じで、ここでもまた自分が透明になった気がして、僕が倒れても、誰にも見えてないんじゃないかって思った。
でも、今日は、立ち止まってたら、フェスのスタッフの人が、「大丈夫?」って声をかけてくれて。声が震えてたけど、「はい」って答えられた。親でさえほとんど口聞いてないし、人と話したの久しぶりだった。
トイレの場所がわからないっていったら、スタッフの人が教えてくれて。「ありがとう」って言えました。「一人?楽しんでね!」っていわれた。嬉しくて、なんか泣きそうになった。フェスのスタッフさんってみんなこんなに優しいんですか。普通ですか?
マイファスのステージはすごかったです。音が身体じゅうに突き刺さるっていうか、胸が苦しくなるくらいの迫力で。途中で周りのことも、暑さも、自分がどこにいるかも全部わからなくなって飲み込まれてました。気がついたら、両手を上げてた。大げさだけど初めて、「生きててよかったな」って思いました。
終わってから、汗だくでフラフラしてたら、またスタッフの人が声をかけてくれたんです。すごい偶然だけど、トイレを教えてくれたスタッフさんでした。「大丈夫?」って、同じ優しい声で声をかけてくれて、びっくりしたけど、なんだかほっとして。
そのとき「ありがとう。また来ます」って答えたんです。自然に言えたし、思ったんですよね。心から、また来たいって。自分でもびっくりした。今までの自分には想像できなかった感情でした。
こんな親切を何度も感じた日はなかった。誰かが気づいてくれるって、こんなにうれしいんだって思った。フェスって、音楽だけじゃなくて、人のあったかさにも包まれる場所なんだなって。来てみなきゃわからなかったです。
親切以上のことを、きっと両親にはしてもらってるんだと思う。帰ったら声かけてみます。来年もまた来ます。もっとちゃんとした自分で、また部屋をでて、今度は胸を張ってこの場所に戻ってきたいです。
伝わりにくくてすみません。うまくまとめてください。こんなふうに、自分が話せると思わなかった。ありがとうございます。
【4】アカネ(32歳、兵庫県、会社員)

32歳です。兵庫の三宮から来ました。普段は会社で事務の仕事をしています。毎日なんだかんだバタバタしてて、特にこれといって何かがあるわけでもないのに、気づいたらまた一週間経ってたみたいな、そういう日々です。
フェス好きです。サマソニとかは、友達と行ったことがあって。ワイバン初めてです。今回は一人で来ました。一人旅好きで。温泉とかいくんですけど。山口って、観光旅行としてもちょうど良いなって思って。
チケットはすぐ取りました。Omoinotake好きで、ずっと聴いてて。本当にやさしくてあったかくて、忙しい中でふっと立ち止まらせてくれるような音なんですよね。
新幹線で来て、駅の近くにホテルとって。この会場、バスですぐだし、アクセスいいですね。イベントとか楽しくて好きなんです。あと、美味しいものも。地元の屋台に並んで巡りました。
やっぱりライブは生で聴くと全然違いますね。自然に体が動いてました。
最近の出来事?うーん、実は、昔ちょっと劇団に入ってやってたことがあるんです。ミュージカルをね、ほんの少しだけ。踊ったり、歌ったり、人前に立ったり——その時のこと、今日、なんだかふいに思い出してしまって。ステージの音に合わせて揺れてる自分の足が、当時と重なって、なんだか不思議でした。
人に拍手をもらえるって、特別な感覚なんですよね。今の仕事では、誰かに何か感動を届けるとか、拍手で評価されるなんて、ほぼ無いから。
ふと、自分の時間をもう一度持ってみたくなった。帰ったら、昔一緒にやってた劇団の子に連絡してみようかなって思ってます。まだやってるみたいだし。見学でもいいから行ってみようかなって。その決意が出来事かな。
切り離す時間というか、非日常の空間って、やっぱり必要ですね。ここに来てあらためて思いました。日常だけだと、忘れちゃうものが多すぎる気がする。ミュージカルをしていたあの頃の自分の、何かを目指してた時のワクワクとか、ずっと忘れたくなかったはずなのに、気づいたら見えなくなってたから。
また来たいです、ワイルドバンチ。来年も絶対来ます。…写真? 撮ります? じゃあちょっとポーズ、決めますね。せっかくだから、思い出に残したいし。なんかテンション高くなっちゃって。途中から知らない人とたくさんハイタッチしてました笑。
【5】ケンジ(55歳、山口県、工場勤務)

55歳です。山口県内から来ました。工場勤務です。ワイルドバンチに来たのは今回が初めてです。ずっと来たかったんですけど、タイミングが合わなくて。でも、今年はどうしても来たかった。
RADWIMPSを観たかったのが来た理由の一つです。ドラマの主題歌もやってるし、映画の歌も好きで。
最近の出来事か。。。去年、健康診断受けまして。初期のガンが見つかって。先生も「すぐどうこうじゃない」って言ってたんですけど、やっぱりこの歳でちょっと、いろいろ考えるわけです。
そしたらいつのまにか妻に黙ってチケットを取ってました。わけわからないですよね。なんかやり残したことのないよう生きていたい、と思ったのかな。もちろん怒られましたよ、病院のこともあるし、いろんな迷惑かけてるしそもそも、「こんな暑いのに!」って。でも結局、車で送ってくれて。終わったらまた迎えに来てくれます。申し訳ない。
午後から会場に来て、ステージはRADだけ前の方でしっかり見ました。あとは座ってたり、遠くからちょっとずつ楽しんでた。暑すぎたし、正直1日は持たないなって思った。
でも、ステージの瞬間だけは、全然しんどくなかったです。なんだろう、身体が軽くなるっていうか。音が鳴った瞬間、暑さも疲れも全部どこかに飛んでいったみたいで。柄にもなく手なんか振ってしまって、自分でもちょっと驚きました。
隣にいた若い女の子に、二本持ってたペットボトル一本余ったからあげた。なんでだろう。ああいうの、今までの自分だったら絶対しなかった。キモいと思われたかな?言葉を交わしたわけじゃないけど、ありがとうございますって感じに笑ってくれた顔が、すごくまぶしくて、なんかうれしかったです。
フェスって、音楽を聴きにくる場所だけど、それだけじゃないんだなって思いました。誰かに何かをしてあげたくなるような気持ちになる。
RADの歌聴くと「人生って何?」とか「生きてたって何になるの?」って、そういう気持ちを、一度ちゃんと受け止めてくれる。あのステージの間だけは、自分の人生には意味があるよなって、思わせてくれた。無理してでも、ここに来てよかったなと思ってます。
最近、スマホのメモに、ちょこちょこ文字を打ってて。まあ、「遺言」っていうほどでもないけど、家族へのメモみたいなやつ。なんかうまくまとまらないし、書くたびに気持ちが変わる。でも、ちゃんと何かは残したい。
体調自体は、これまでもそんなに悪いと思ったことがなかったんです。多少の疲れとか、寝不足とか、まあみんなそんなもんだろうって、自分に言い聞かせてきた気がします。でも、あの日の診察で、「このままじゃ人生後悔するな」って思ってしまって。
病院の診察帰り、ひとりになったとき、急に怖くなったんです。なんで今までちゃんと自分や周りのことを見てこなかったんだろうって。
フェスに来たのも、その確認だったのかもしれない。「まだ、ちゃんと生きたいと思ってるか」って。音が鳴ったとき、体が反応したとき、少しだけ、ああ大丈夫かもって思えました。自分の中の「未来の希望」が、まだ消えてなかったことに気づけたんです。
もっとたくさんバンド観たかったですね。また来たいって思ってる。それもメモに残してる。「生きてる限り、ワイルドバンチ、ここに戻ってくる」って。ここをこれから生きる支えにします。
【6】アヤカ(18歳、福岡県、高校生)

18歳で、高校3年です。福岡から来ました。今日は親友と来る予定だったんです。でも、くだらないことで喧嘩してしまって。ちょっとした、スマホのボリュームのレベルがどうとか、きっかけはそういうほんとに小さい話。でも、それまでにいろんなことが積み重なってたのかもしれません。なんか、合わなくなってきてたのかな。結局、「もういいよ」ってなって、それっきり連絡もしてなくて。
チケットはそれぞれ取ってたので、もしかしたら来てるのかもしれないけど、LINEもしてないし、どこにいるのかも分かりませんでした。行きの電車やバスで会うかもって思って、ちょっとキョロキョロしたりもしたけど、結局どこにもいなくて。まぁ、今はどっちでもいい。
Saucy Dogの曲、生で聴いてたら泣きそうになっちゃって。「現在を生きるのだ」を聴いた瞬間に、友達と一緒に過ごした放課後の帰り道とか、駅のベンチで話したこととか、全部浮かんできて。もう卒業なのに、思い出にしたかったのに、こんなに切ない気持ちで聴くことになるなんて、思ってませんでした。もっと楽しく聴きたかった。
演奏は本当にすごくて、心にしみました。サウシーの音って、心の奥をぐっと掴んでくるようなところがありますよね。そのときの気持ちを、今日SNSに少しだけ投稿したんです。そしたら、親友も来てるらしいって、共通の友達からLINEきて知って。ひょっとして、と思って「来てる?」って親友に送ったら、既読になった。何も返ってきてないけど、それでも少しだけホッとしました。
会場では結局会えなかったしずっとひとりでした。でもライブが始まった瞬間だけは、親友や来ている人たちとつながれてる気がした。
帰ったら、ちょっとだけ声をかけてみようかなって思ってます。学校で。きっと、あの子も同じような気持ちでいたんじゃないかな。わかんないけど。でも、今日のこの気持ちを、そのままにしたくなくて。だから、声をかけてみようと思ってます。
エピソード? ずっと一人だったから、、でもそうだなあ。同じ歳くらいの子がぼーっと立ってて、パンフ落としてたんで拾って上げた。あの子も一人っぽかった。結構、一人で来てる人多いんですね。
【7】ダイチ(24歳、島根県、フリーター)

24歳です。島根から来た。去年初めてワイバンに来て、今年で2回目。去年は地元の友達に誘われて来たんだけど、なんか、その時観たSiMがすごく刺さって。人生イチってくらい。あのときの衝撃が忘れられなかった。だから今年はバイト代ためて、ひとりで来た。早朝にバイクで走って、会場着いたの、たしか10時くらい。全然眠くなかった。アガりっぱなし。
普段は、コンビニで夜勤のバイトしてる。高校は途中でやめた。なんか合わなくて。親は離婚して、今、親父と二人で暮らしてて、家に時々、親父の彼女が来る。あんまり喋んないけど、飯作ってくれるのはありがたい。けどまあ、正直ちょっと鬱陶しいって思うこともある。早く一人暮らししたい、って気持ちは、ずっとある。でも金もないし。なかなか動けない。
今日のSiMのステージ、去年以上。やっぱやばかった。音もバチバチきてて、最初から最後までぶっ飛んでた。サークルとかすげえ盛り上がってて、前の方にいたら背中から人が降ってきて笑った。YouTubeで観たDeadpopのライブとまんま一緒。ほんとにこんな世界あるんだなって。
ここなら、誰にも怒られない。「今日は何してもおまえの好きにしていいんだぞ!」って言ってくれてるような。そんな場所ほかにない。
なんか、SiMをみてたら「もっと生きろ」って誰かに言われてる感じがした。過去のこといろいろ思い出して。やんちゃして怒られて、まじでだめな奴だったなーとか。別に捕まったとかはないけど、やばい空気は何度もなった。変なやつにあとをつけられて、家に乗り込まれたこともあるし。ろくなめにあってこなかった。
でも今日のフェスは、そんなやばいのもちょっと含めて「今からちゃんとやりゃいいんだよ」って言われたような気がした。
今は、別に大げさなことはしてない。ただちゃんと働いて、ミスして、怒られて、また働いて。普通に生きることを真面目にやりたい。夜勤だけど、土日が休みだから、こうしてフェスにも来れる。誰にも文句言われない。SiMの音の中で、モヤモヤがぶっ壊れる気持ちがした。フェスはやばい。
疲れ?全然ない。また来たいな、来年も。できれば2日とか3日、通しで参加してみたい。その時、もし彼女とかいたら一緒に来て、同じ曲で頭を振りたい。そんな楽しみ、ワイバンにくるまでは考えたこともなかった。
エピソード? そうだ、小学校の時の先輩に偶然会って、声かけられた。まじでびっくりした。ビクッとしたけど、「お前変わったな」って言われてさ。ちょっと丸くなったなみたいな。懐かしかったです。
あとは、、、なんか一人悲しそうな顔した女の人いたんで、どうしたの、元気出しなよ!て声かけた。年上だよなあ。ナンパとかじゃないですよ。俺みたいなのが言えることじゃないけど、ここに来る人はみんなハッピーでいてほしいから。
【8】リョウコ(47歳、鳥取県、主婦)

鳥取から来ました。47歳です。SUPER BEAVERのライブを観たのは、今回が初めて。車のCDでは何度も聴いていたけど、生の音を聴いたのは初めてでした。もう、すごかった。良すぎて、動けなかった。音が鳴ってるあいだ中、何もできなくって、ずっと立ち尽くしてました。
2年前に夫が脳内出血で倒れて、そのまま亡くなりました。健康のはずだった。30で職場結婚して、子どもはいなかったけれど、楽しい時期もたくさんありました。喧嘩もまあちょっとはあった。仕事の部署が違っていたから、平日は顔を合わせることも少なくて。だからこそ、夜帰ってきてから一緒に過ごす時間が大切だった。
夫が亡くなってからすべてが変わりました。一人は負担がないけれど、なんのために生きてるのかわからない。自分がどこかに行ってしまいそうなくらい、疲れていたと思います。正直に言うと、もう終わりたいと思ったこともありました。去年くらいまでは限界だった。
最近、ようやく少し、ゆっくり息ができるようになった気がします。大きい音を聴きたくなって、それで車でここまで来ました。
SUPER BEAVERのまっすぐな言葉が好きです。特に「アイラブユー」が好き。涙が、一気に出てきました。実は夫が亡くなった時、泣いた記憶がないんです。気を張っていたからだと思うけど、今はもう泣いていいんだって、やっと思えた。ずっと泣いてました。
ライブ中、泣きすぎて、一瞬、自分がどこにいるのかわからなくなるくらいになってしまって。気を失う直前みたいな。そしたら、若い男の子に「どうしたの?元気だしなよ!」って声かけられた。そこで我に帰った。御礼言って、2人で笑って。あの子にも感謝ですね。
音楽って、すごいですね。帰ったら、また色々聴いてみようと思います。夫が好きだった曲も、2人でドライブ中によくかけてたCDもきっとまだあるはず。捨てたいってずっと思っていたのに、できなかった。聞く気にもなれなかった。でも、今なら、少しずつ戻れるかもしれません。
生き直すって、簡単には言えないけれど、そうしてもいいのかなって。今日、少しだけ思いました。また来ます。ここに来れば、またあの子のように、誰かに背中を押してもらえる気がするから。
【9】ミナト(40歳、山口県、公務員)

山口の地元です。県の職員をしています。40歳、ずっと独身。まあ、縁がないってやつです。3年前、母が亡くなって、今は父と2人暮らし。父はずっと元気だけど、最近ちょっとおかしなことを言うようになって。ご飯食べたのに「腹減った」って何度も言ったり、酒の量も増えてきた。
福祉課に相談して、今はデイサービスに通ってもらってます。でも、家でご飯は自分で作れないし、風呂も一人では難しい。いろんなことが、こっちにのしかかってきてる感じです。職場に話してるけど、上司はあまり理解してくれてるのか怪しい。収入はなんとかなるけど、精神的にはしんどい。
デイと契約するとき、父と正面から話しました。最初はよくわからない感じだったし、嫌がってたけど、ちゃんと話したらわかってくれた。あんなふうに、父と向き合って話すなんて、生まれて初めてでした。
だけど正直言うと、父と二人で毎日一緒にいるのは、かなりきついです。こんなこと言っちゃいけないけど、「普通、母親より父親のほうが先じゃないのかよ」って、すみません。そういうの、言っちゃいけないですよね。今日は親戚が来てくれて、「ゆっくりしておいで」と言ってくれたので、少しだけ時間をもらってフェスに来てます。
TRACK15が好きです。意外とか、似合わないって言われること多いけど、、、新しいバンドや音楽をいつもチェックしてて、聴くのがわりと好きなんです。
「話したいこと」だったかな? たぶん恋愛の歌かも知れないんだけど。勝手に自分の今の状況に照らし合わせて。なんかこんな未来、予想してなかったよなあとか。泣いたりはしなかったけど。早く普通に笑える日常になりたいです。
音楽はただの娯楽だと思ってたけど、こんなふうに、場所と気持ち次第で、自分の奥にある感情を引き出してくれるものだったんだなって思った。「一人で抱えてなくてもいいかもしれない」って少し思えた。
そう言えばなぜか隣に若い子が座って、しばらく一緒に演奏を聞いてた。もし結婚して子供がいたら、この歳くらいなのかなと思った。なんか言いたそうだったなあ。話しかければよかったな。
また来たい、ここに。こういう日が、これからまたきっと必要になる気がする。
【10】ユリナ(43歳、愛媛県、自営業)

愛媛から来ました。43歳。車で四国を越えて、初めてフェスに参加しました。仕事は、去年、勢いで会社を起業しました。まだ1年も経ってないです。応援してくれるクライアントがいたので、仕事はなんとかなると思って。でも、正直、毎日不安で押し潰されそうです。
フェス中にも、取引先から電話が何度も鳴りました。トラブル対応で、離れた場所で小声でやり取りして、結局普段と何も変わらない。こういう時、ほんとに何してるんだろうって思うけど——でも、これは自分で選んだ人生だから。
WurtSのライブがすごく楽しかったです。「分かってないよ」が特に好き。仕事中、ちょっと疲れた時、商談失敗したりした時、愚痴りながら口ずさんでるんですよ。「分かってないよ、あいつ」って笑。
今日は、思いっきり跳ねました。若い子たちと混ざって、疲れましたけど、すごく良かったです。大きな音で聴くって、こういうことなんですね。体にズンと入ってくる音と、一緒に飛び跳ねる熱で、いろんなことがどうでもよくなる瞬間があって。
隣でダンスしてる女の子がいて、すごく可愛かった。思わず「うまいね」って声をかけちゃいました。なんでそんなこと言ったのか、自分でもよく分からない。その子、ダンスやってたけど一回やめて、でもまた始めるって言ってました。「頑張って」って自然に言えた。自分でも少し驚きました。
なんだろう、誰かが夢を追ってるっていう、その話が、自分の中の何かを思い出させてくれた気がしたんです。
私にも、夢があった。それが仕事にしてからは、がむしゃらにやってきて、それどころじゃなくなってた。あの子の「またやる」って言葉に、自分も何か夢を取り戻せるかもしれないって、思いました。
今は起業してずっと不安しかないけど、誰かの夢に触れると、自分の選んだ道もちゃんと意味があるような気がする。今日のこの時間も、ちゃんと「夢の一部」って言えると思いたい。
また会いたいな、あの子。もう一度、同じ場所で音楽を聴けたらいいなって。もしかしたら、それが今の自分に必要な夢かもしれない。たった一言の会話が、こんなに心に残るなんて、思ってなかったです。
【11】トモキ(35歳、山口県、飲食業)

osageいいですね。「マイダイアリー」聴きながら、昔のことをずっと思い出してました。今は35です。地元です。
自分も昔バンドをやってました。東京にいた頃です。ベースを担当して、プロを目指して。夢ってやつですね。
でも、結局うまくいきませんでした。理由はいろいろあったけど、結局は人間関係でした。音楽性の違いなんて言ってたけど、本当は、ただ、合わなかったんだと思います。
ボーカルは最初からソロ志向で、曲もアレンジもほとんど自分で決めたがってた。こっちはもっと一緒に作りたかったけど、それもうまく伝えられないままで。ケンカ別れ。ありがちですけど、でも本気でやってたから、解散が決まった後のダメージは大きかった。
帰ってきたのは3年くらい前です。山口に戻ってきて、実家の定食屋を手伝ってます。長くやるつもりなかったけど、今もまだやっています。料理はしないけど、親父も歳なんで、簡単なのは手伝って。ほとんど自分が店長です。働きながら、ずっと「このままでいいのか?」と思いながら、何もしてきてない。
でも今日、osageのステージを見て、耳じゃなくて、心で音が鳴った気がしました。なんだろう、ちゃんと響いてきたんです。曲のタイプとかは違うんだけど、ああ、こういうバンドいいよな、やりたかったなって。
自分たちもフェスに出たかったなあ。もう遅いって分かってる。でも、また何か始めてもいいかもしれない。そんな気持ちが、ふっと浮かびました。
会場に来て、トイレの場所わからなくて少し迷ってたんです。そしたら、声をかけてくれた子がいて。彼も地元らしくて、親切に教えてくれました。なんとなく話が弾んで、気づけば自分のこと、けっこう喋ってて。東京でのことも、バンドのことも。「それって、すごい経験ですね」って言われて。そういえばそんなふうに言われたの、初めてだったかもしれない。
たぶん、自分にとっては「終わったこと」だったんです。でも、話してみたら、どこかまだ終わってなかった。ずっと、曲が続いてるんだと思います。今もどこかで、自分のやりたい音楽が。
もう一度、音楽とちゃんと向き合えるかは分からない。でも、今日ここにきて、少しだけ前を向いてみたくなりました。もちろん故郷で定食屋も悪くない。けど、それだけじゃない人生もある気がして。
【12】リク(18歳、山口県、高校生)

自転車で来た。家からフェス会場まで20キロくらい。たいした距離じゃないです。天気も良かったから、ちょっとしたサイクリング。
別にフェスにこだわってたわけじゃない。どっちかというと、行き先が欲しかったんだと思う。なんとなく理由が欲しくて、最近好きになった好きな「ねぐせ。」も出るって知って。
受験生です。東京の大学を目指してる。成績的には、まあ大丈夫だと思う。焦るほどじゃないし、自分でもある程度はわかってる。でも最近、家の空気が重い。息が詰まるっていうか、静かすぎて逆にざわつく感じ。
親が思ったより神経質で、ちょっと夜更かしすると「勉強は?」って言われるし、ご飯の時にスマホを触るだけで溜め息つかれる。注意されるっていうより、「またか…」っていうあの目。言葉より、沈黙のほうが痛いときがある。
そんなふうに見られると、どんどんしゃべらなくなる。何を言っても否定される気がするし、余計なこと言ってまた空気を悪くするくらいなら、黙ってた方がマシだと思ってしまう。今、家族とほとんど会話してない。おはようとか、ただいまとか、そういう最低限の言葉しか交わしてない気がする。会話しようとしても、どこかぎこちなくて、すぐに終わる。
両親もお互いなんかギクシャクしてて、会話がかみ合ってない。怒鳴りあったりとかじゃないけど、食卓にピリピリした空気が流れる。
会話があっても、必要なことだけ。笑い声なんてもう、いつから聞いてないかわからない。まるで、透明な壁が家の中にいくつも立ってるみたい。誰も怒ってないのに、みんな不機嫌で、みんな疲れてる。
だから、東京に行きたい。出たい。逃げたい。知らない場所で、知らない人たちの中で、自分をまっさらなところから始めたい。今のこの空気から距離を置いて、自分の呼吸を取り戻したい。もしかしたら、それだけがモチベーションになってる気もする。夢とか希望とか、前向きな理由じゃないかもしれないけど、「ここから離れたい」っていう気持ちが、今の自分を支えてる。それでも、今はそれで十分な気がする。生きてくための、ささやかで、でも切実な理由として。
ねぐせ。のライブを聴いて、うまく言えないけど、なんか気持ちが溶けていった。言葉がストレートに届いてきて、自分でも驚いた。音楽って、こんなふうに入ってくることあるんだなって思った。
正直、大学行って何がしたいのかはまだ分からない。でも、分からないって言うことが悪いことじゃないんだって思う。いつかちゃんと伝えてみたい。親や先生に、やりたいことっていうか、自分はこう思ってるって。
今日のこの感覚は忘れたくない。東京に行っても、帰省の時にはまたこのフェスにこようかなって思った。親のために帰るとか無いけど、理由がある帰省ってちょっといいかなって。
そういえば、疲れて休もうと思ってたら、となりに父親と同い年くらいの人が1人で座ってて、きもちよさそうだったから、隣に座ってしばらく一緒に演奏見てた。話とか別にしなかったけど。ちょっと驚いてたな。父と来れたらどんな気持ちだろうな、って思って。
【13】アユム(17歳、山口県、高校生)

山口の高校生です。成績は、まあまあ上の方。全国模試とかでも悪くない。でも、そんなの自分で選んだわけじゃない。勉強が楽しいって思ったことは、あまりない。やるとママが喜ぶから、ただそれだけの話。
今日のフェスは、ママが連れてきてくれた。ママがキタニタツヤを「かっこいい人でしょ」って言ってて。特に何をみたいとか、他にいなかったから。でもステージが始まってすぐ、空気が変わった。音が体に刺さってきて、歌詞が胸に引っかかって、それからは何も考えられなくなった。気づいたら、涙が出てた。同時に、怒ってたんだって、その時やっとわかった。
何に?誰に?って考える前に、怒りがずっとあったことに、自分で驚いた。たぶん積もっていた。ずっと、見ないふりをしてた。
何をするにもママが決める。スマホの契約も、部活も、習い事も。進路の相談も「こういうのが合ってると思うよ」って、ママの目線で言われる。反論すると、「あなたのためにやってるのよ」って返ってくる。それ以上、何も言えなくなる。確かに、悪気はないんだろうと思う。心配してるんだろうし、僕のことを考えてるんだろう。でも、それがずっと、苦しい。
クラスの友達に「依存じゃね?」って笑われたことがある。その時は「楽だし、いいんだよ」って返したけど、ほんとは悔しかった。情けなかった。自分の口から出たその言葉が、誰かの言い訳みたいに聞こえて、余計に自分がちっぽけに感じた。ママの顔が浮かんで、何も言えなかった。
言えない、っていうより、言わないようにしてる自分がいる。たぶんママにはまた「ありがとう」って言うんだろうなって思う。でも心の奥では、叫びたい気持ちがある。ちゃんと僕の気持ちもあるんだって。選びたいことがあるんだって。
キタニさんの歌の中には怒りがあった。そして、その怒りは誰かを傷つけるためじゃなくて、自分を守るためのもののような気がする。ライブが終わっても、その感じが消えなかった。僕も怒ってもいいんだって。そう思えた。
帰り道、ママが車で迎えに来てくれた。「どうだった?」って聞かれて、「うん、よかった」って答えた。でもその後、「……なんか、でも、ちょっと疲れた」って言ってみた。ママは少しだけ黙って、「そう。たまには疲れるよね」って言った。
もしかしたら、ママも分かってるのかもしれない。いろいろと無理させてるって。でも、今日、少しだけ話せてよかった。ずっと前に「なんでも言っていいのよ」って言われた時は、信用できなかった。でも、今日のライブで、自分の中に少しずつ何かができ始めた。
僕はいい子をやってきた。でも、それだけじゃない自分も、いていいと思った。こんな自分が好きか嫌いかは分からない。でも、親だって、嫌だと思えば全部従わなくていい。自分の気持ちは、自分で選んでいい。そんなことを、少しずつ言えるようになりたい。
今日は、ちゃんと音が刺さってきた日だった。
あの、、、こんな話でもいいんですか?
エピソード?うーん、いや、別に。ああ、そういえばチラシ落として拾ってくれた女の子がいて、お礼言ったくらい。うん、ちょっと可愛い子だったなあ。
【14】ミズキ(16歳、山口県、高校生)

下関から来ました。母に連れてきてもらった。
フェスに来たって言っても、正直、自分の意志で来たかって言われたら微妙だ。クリープハイプが出るって知って、母さんが「行ってみる?」って言ってきた。母は昔からクリープハイプが好きだった。家でよく流れてた。でも、あの頃は聞くのが嫌いだった。
小さい頃の記憶って、急に襲ってくる。父に怒鳴られて、何度か叩かれた。母は庇ってくれたけど、今思えば、母もずっと我慢してたんだと思う。離婚して、やっと楽になったと思ってたけど、そうじゃなかった。母は働き詰めで疲れて、たまにおかしくなって、泣いたり怒ったり、情緒がグラグラするのを見てると、なんとも言えない気持ちになる。
今日、初めて生でクリープハイプを観た。音が鳴った瞬間に、昔のことが一気に押し寄せてきた。嫌いだったはずの曲が、今日はなぜかまっすぐ胸に刺さってきて、涙が止まらなかった。今まで誰にも言えなかった気持ちが、自分の中で溢れてきて、叫ぶように歌詞を口ずさんでいた。周りの音なんて聞こえなくて、ただあの歌と、自分の中の過去がぶつかり合ってた。
曲が終わって、ステージが暗くなった時、自分がひとりで立ってることを実感した。母さんは一人で駐車場にいる。たぶん、疲れてて、本当は来る気力もなかったんだと思う。
クリープハイプの嫌いだった歌が、今日僕の味方になった。あの頃の自分が、ようやく浮かばれるような気がした。いま、母と親族の家に身を寄せながら、自分なりに働く準備をしている。高校を出たら、すぐ就職しようと思ってる。お母さんを助けなきゃ。
家族のこと、母のこと、自分のこと、整理なんてついてないけど、それでも、今日のこの感情は、自分のものだ。誰にも踏み込まれたくなかった場所に、音楽がやってきて、少しだけ息ができた。
クリープハイプ、こんなに良い歌を歌ってたんだな。気づけてよかった。自分の人生、もう少しだけ信じてみようと思う。
エピソードかあ。いっぱい自撮りしてる女性の人がいたんで、じいっとみてたら、見返された。ネットでみたことある人のような。。インフルエンサーさんかな?
【15】エミ(38歳、福岡県、会社員)

福岡で会社員です。たぶん、見た目のせいだと思う。昔から「若いね」と言われる。でもそれって褒め言葉じゃなくて、「女」って馬鹿にされてる。年齢より下に見えるって、軽く見られる。
管理職になれと言われた時も、「適任」とか言われたけど、たぶん違う。女だから、話が通じやすそうとか、和ませ役とか、そういうのが欲しかっただけだと思う。男女平等って何?って聞いたら、「だから君が必要なんだよ」と返される。意味が分からなかった。
仕事はずっとちゃんとやってきた。管理職でもちゃんとやりたいからいろんなことたくさん引き受けて、色々発言してたら、そのうちうっとうしいって声が耳に直接聞こえるし、下の後輩たちにも無視されるようになった。会議で目も合わせてくれない。社長だけが苦笑いしてる。何が面白いんだか。
正直、もう限界だった。身体も心もきつくて、朝がくるのがしんどかった。でも、どうしても観たかったからフェスは来た。
サバシスターのライブ。兄が昔ハイスタ聞いてて、その横で育った。良いって噂をきいてたので、見たかった。女の子のバンドなのに懐かしかった。「兄の聞いてた音にちょっと似てる」って思った。
ふらついてたのかな。となりにいたおじさんが、余ったスポーツドリンクをくれた。見知らぬ人に、男性に、優しくされたの、何年ぶりだったろう。あの年くらいのおじさんに、会社でいつもひどいこと言われてた。ちゃんとお礼いいたかったな。
サバシスターが「覚悟をきめろ」って。ああ、これは自分の中にずっとあった言葉だ、って思った。言いたかったのに、呑み込んで、笑って、やり過ごしてきた言葉たち。あのステージの上で、私の代わりに歌ってくれた。勝手にそんなこと思った。
辞表のことを考えてた。いつも持って歩いてる。来週出そうと思う。きっと驚かれるし、たぶん引き止められる。でも、もういい。音楽がそれを教えてくれた。私の覚悟はそれ。
音楽で行動を決めることって本当にあるんだ。来年、ちがう自分でまた来たいです。いっぱいしゃべってすみません。サバシスター、ありがとう。ほんと、ありがとう。
【16】ユウスケ(21歳、山口県、大学生)

山口の大学生です。今日は暇つぶしのつもりでした。音楽が特別好きなわけでもないし、そもそも名前を知ってるバンドも少なかった。チケットは普通に取れたし、アパートから歩いて帰れるくらい近い。そんな感じのイベント。
正直、音楽って自分にとってはBGM。ネットで流れてきても「ふーん」って思うくらい。でも今日、生でシンガーズハイを聞いたとき、なんか頭が真っ白になった。
気づいたら前のほうに流されてた。人の波の中で押されて、目の前にステージがあって、でかい声が飛び込んできて、体がびりびり震えた。あんな声、聞いたことない。なんか、すごかった。音がでかいとかじゃなくて、「すごい」って思った。で、気づいたら笑ってた。
今まで、あんまり笑うことがなかった。笑うっていうか、ちゃんと表情を動かすこと。楽しくないわけじゃない。大学もまあまあ、バイトもまあまあ、友達もいて、将来は市役所とかで安定した生活。夢とかそういうの、特にない。でも——
あの瞬間、自分の中に火が灯ったって言ったら、ちょっと恥ずかしいけど。確かに「何か」があった。うまく言葉にできない。でも、シンガーズハイのあの声と、熱と、空気を浴びてる間、自分にも何かできるんじゃないかって、一瞬だけ思った。小さい夢でも、何か持ってたほうが人生って面白いんだろうなって。
帰り道、音がまだ耳に残ってて、なんか少しだけ違う世界を歩いてる気がした。変わるとか、大げさなことじゃなくて、ちょっとだけ、なにかを信じてみたくなった。来年も、また来ようかなって思った。次は予習してこようかな。ちゃんと聴きたくなった。音楽は悪くない。
エピソード、、そう、会場で迷ってた人にマップで教えてあげて、少し話をしたな。1人ですか?僕もですって。東京でバンドやってたらしい。アツい人だったな。フェスはなんかそういうの、普通に話せる空間かもしれないですね。
【17】アカリ(☆歳、東京都、インフルエンサー)

「かりんか」って名前でインスタとかTikTokやってます。ダンス動画とか流行りの曲とかで投稿して。フォロワー最近10万人を超えた。知ってます?ありがとう。今日も色々自撮りしてました。楽しいですよ。自分より自分を知ってる人が世界のどこかにたくさんいる。
でも、楽しいけど、正直、最近はよくわからない。かわいいって言われるのはうれしいけど、変なDM多いし、ちょっと怖い目にもあった。
ナナヲアカリさんの「明日の私に幸あれ」って曲が大好きです。聞いてるとほんとうに楽しくて、救われる。フェスに出るって聞いてすぐにチケットとりました。東京から飛行機で来ました、ひとりで。同じ機内に、名前はわからないけど、別のバンドメンバーみたいな人もいたような気がする。ここ、空港から近いんですね。
ネットのことは、友達にも、現実の知り合いには誰も教えてない。実は本名「あかり」なんですよ。これ載せないでくださいね。
ライブ中、「ハッピーになりたい」と「リセットセット」が流れてきて、なんか、もうだめだった。歌声が、自分の心をがりがり綺麗に気持ちよく削ってきて、何かがはがれていく感じでした。自分の仮面って、ほんとにあるんだと思った。
病みとか言いたくないけど、でも時々、全部投げ出したくなるくらいSNSは疲れる。ストーリーにちょっと弱音を吐いたら、DMでひどいこと言われた。案件の相談もあるから続けたいけど、正直辞めたい。本当の自分の言葉を置く場所がほしい。
ブログ立ち上げてます。こっちは本当の自分です。写真も加工もいらない。踊らなくてもいい。歌が下手でも、しゃべるのが苦手でも、文字は自分でいられる気がする。
いつか——インスタを見てくれてた誰かが、このブログにたどり着いて、「あ、これもあの子かも」って思ってくれるのかな。
そういえば今日、自撮りたくさんしてたら、男の子にじいっとみられてた。気づいてたのかな? 話、してみたかった。あ、やっぱり名前載せてもいいです。写真もどうぞ。
【18】サクラ(24歳、広島県、フリーター)

24歳です。広島から来ました。ファミレスでバイトしてます。
最近あったこと。。好きだった人に告白してふられました。友達の友達みたいな人でした。
そんなに特別すごくかっこいい人と言うわけでもなかった。よくいるタイプで、運動ができて、明るくて、誰にでも優しい人。だけど、私にはその「誰にでも」が魅力的だった。実はあまり恋愛もしたことがなくて、誰かに気にかけてもらったり、好かれたりするってことも正直記憶にない。
最初はただ同じ曲が好きってだけで、LINEを交換しました。みんなで一緒にカラオケに行って、彼が歌うマカロニえんぴつを聴いたとき、私も好きって言って、それがなんかうれしくて、ちょっとだけ勘違いしてたのかもしれません。
生まれて初めて告白しました。言いました。「好きです」って。そしたら、「ごめん、別に好きな子がいる」って。
そんなあっさりとはっきり言われるって思ってなかった。ショックって、ああいうことなんですね。
マカロニえんぴつのライブ、フェスで1度は見てみたかった。できれば、友達とか彼とかと一緒に行きたかった。でも言えないまま失恋してしまった。ほんとは来るつもりなかったんです。一人で来るのは勇気がいりました。
ライブの中で流れた曲が、心にまっすぐ届きました。自分のことを歌ってるような気がして、泣きそうになりました。ああ、ちゃんと告白してよかったなって。これはなんていうか、自分が成長するための通過点だったんだって、やっと思えるようになりました。まだ少し残っているけど、もう引きずらないです。すごく楽しかったし、これからの自分を、少しだけ好きになれそうです。
すみません、フェスのことですよね?そんなインタビューじゃないんですよね?
そうだ、一人で来てた子と、物販のブースで意気投合して仲良くなったんですよ。LINE交換して。その人、彼と別れたっていってたな。同じ広島なんで、ご飯の約束しました。
【19】シホ(21歳、広島県、大学生)

広島からきました。21歳の大学生です。今日彼と一緒に来る予定だったんです。でも、直前に別れちゃって…別れた後に、彼の写真とかプレゼントとか、整理して捨ててしまった。でも、お財布の中にワイバンのチケットは残ってた。迷ったけど、それで一人できました。
彼は大学のサークルの先輩で、かっこよくて好きだったけど、都合よく連絡してきたり、来なかったりって感じで。今考えるとあんまりいい付き合い方じゃなかった。浮気っぽいこともされたし、話さないことも増えたんで、自然消滅みたいな感じです。
マルシィのライブを見たくて、ずっと行きたいって思ってたんです。元々寂しがり屋なので、一人で来るのは結構心細かったんですけど、でも、周りが楽しそうで、寂しくなかった。一人でいるのも悪くないって気がした。
「これからだよ」ってマルシィがささやいてくれた気が勝手にしてて、心の中でぐるぐる考えてました。歌がなんだか癒してくれて、ひとりの私も受け入れてくれたような気がしました。
フェスが終わっても、まだもう少しここにいたかったなあって思った。誰かに会えるんじゃないか、私のことを知ってる人とか、何か出会いがあるんじゃないかとか。
そうだ、マルシィの物販ブースに並んでたら話しかけてくれた女の子がいて、その子も1人できてて、仲良くなっちゃった。友達ができたんです。フェスより嬉しかったかも。今度ご飯に行こうって約束しました。
ワイバンの前に彼とは別れたけど、ワイバンで新しい友達ができた。出会いをくれたマルシィと、この場所に感謝です。
【20】ハルキ(28歳、福岡県、会社員)

福岡から来ました。28歳です。ワイルドバンチ、正直、特に思い出とか、特別な感情はなかったんです。というか、なんでも良かったんですよね。
実は父が最近、50歳で、今年急に亡くなったんです。いろいろばたばたして、やっと落ち着いた。それからほとんど衝動でここにきた。気分を変えたかったんですけど、あんまりうまくいかなかったかな。音は大きいし、激しいやつもいっぱいあって、発散したいなって思ってたんですけど、なんだか疲れてて。ほとんど座って、遠くから見る感じでした。
本当は、大勢で来たらもっと楽しかったんだろうな、って思いましたけど。彼女がいるんですけど、今日来ることは、伝えてません。なんで?うーん、連絡も来ないし、そんなに言いたくなくて。まだ気持ちは落ちてるんでしょうね。死んだ人が与える影響って、やっぱり大きい。いろんなことを考えました。
レトロリロンのステージが良かった。聴いているうちに、昔の小さい頃を思い出してて、そのことを代わりに歌ってくれてるような気がして。そして自分の隣に父がでてきたような気がして、涙が出てました。父との思い出って、特に厳しくもなく、優しい親父でしたけど、死ぬ直前はなんだか寂しそうで。もっといろいろ話してあげればよかったなって、今思うんです。急すぎて、じっくり話す時間もなかった。それが一番悔しいですね。
すみません、こんなことをフェスのインタビューで話すのも変ですけど、これが最近起こったことだから、どうしても言いたくなった。フェスに来て、いろんな感情がでてきたんです。正直、音楽で感情を動かされたのって、初めてかもしれません。帰ったら、父に感謝や思いを伝えたいなって思っています。
エピソードかあ。演奏中に感極まってすごい泣いてる子がいたんで、肩ポンポンってしたな。変な意味なかったんだけど、なんか、気持ちわかるぞっていうか、お互い頑張ろうなって意味で。
【21】アイリ(22歳、福岡県、フリーター)

アイリです。福岡からです。22歳。今はカラオケ屋でバイトしてます。専門学校で、ダンスを学んでました。でも卒業してから、仕事にするの難しかった。オーディションもいくつか受けたけど、現実は甘くなかったです。気づいたらダンスからも離れてて、「夢だったんだ」って自分に言い訳してました。踊らなくても別に生きていける。普段バイト中、お店のBGM流れても、リズムとるようなことはない。自分にはもう何もないって思ってた。
でも今日、Teleのパフォーマンスを前の方でみてて、「ブルーシフト」が流れたら、なんていうか、自然に体が動いたんです。足が勝手にステップを踏んでて、びっくりしました。「踊り足りない」って言われた、あのリズム。あんなことあるんですね。「私まだ踊り足りないんだな」って、気づきました。心の奥の方が熱くなって、泣きそうだった。Teleの音、体が自然と反応しちゃう。すごいと思う。個人的フェスの大発見です。スキになりました。
実は、スクールでおしえてる友だちがいて、この間、「手伝わないか」っていってくれたんです、ストリートパフォーマンスもやってるからって誘ってくれて。ちょっと迷ってたんです。ブランクあるから、正直怖いです。でも、踊ってる時が一番好きな自分は、ずっと変わってなかったんだなって。今日あらためて思いました。考えてみます。
今日、来てよかったです。フェスって、ただ音楽を聴くだけの場所じゃないんですね。忘れてた自分を、思い出させてくれる。Teleの音が、また走り出していいんだよって言ってくれた気がして。帰ったら動きます。
そういえば、踊ってたら、すっごく褒めてくれたお姉さんがいた。びっくりしたけど、嬉しかったなあ。いろいろ話しちゃった。LINE交換すればよかった。ここで喋ってたら、私のことかも、って気づいてくれますかね。
あとがき
WILD BUNCH FEST.は初回の2013年に行ってから、2019年、2022年、2023年、2024年と行き、2025年で6回目になります。この作品は、2025年8月23日のアーティストラインナップをベースに、フェスを見に行く前に、二ヶ月かけて書きました。
WILD BUNCH FEST.は、会場の雰囲気がとても好きです。毎回、曜日で選んでチケットを買うので、お目当てのアーティストを見に行く訳ではなく、むしろ知らないバンドやニューカマーがたくさんいたほうが嬉しいし出会いがあって、新鮮です。ここはある意味「夏休みの帰省先」になっている。
この話を書こうとしたきっかけはこうです。
「フェスにくる人たちには、それぞれ普段の暮らしや思いがある。そのストーリーを、1人ずつ集めたら面白いと思いました。僕のように、一人で来るなんてよほど変わっててフェスが好きな人だと思ってますが、それでもきっと理由はあるはずです。この会場に来る理由がある。僕にもある。そして、出演するアーティストの楽曲にも一つ一つに全て意味があり、彼らはフェスで【勝負曲】を出します。それは、いろんなひとのいろいろな事情に、必ず響くはず。」
この作品は、出演アーティストのプレイリストを作って、再生しながら書きました。フェスに行く前に投稿したので、実際に、当日がどういった天候で、アーティストがどんなセットリストで、どんなパフォーマンスするかはわからない。でもそのアーティストが演奏するときに、僕の書いた空想のキャラクターたちは、きっと僕と同じ景色を見ると想像して、楽しみながら書くことができました。書きながら、彼らは途中から、勝手に喋りだしているような感覚になりました。
それぞれに、人物のモデルやアーティストさんとの関連性はまったくありません。でも「あっこれ、私のことかも、僕のことかも」って思ってくれると嬉しいです。そしてぜひアーティストさんの曲やライブを好きになってください。僕も今回の作品を通じて、すべてのアーティストが大好きになりました。当日、できるだけ観たいと思います。
最後に、この作品はWILD BUNCH FEST. 2025の全出演アーティスト、フェス開催者や関係者の方々、そしてもちろん集まった人たち、すべての「ワイバン」が好きな人達に捧げます。
Edited by REI / with support from ChatGPT and Notion AI, Image generated with Canva






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