トランプが「ホルムズ封鎖」を宣言。—え、アメリカが封じるの? 一体何が起きているのか解説します
4月13日。
ニュースアプリの通知が来た。「米軍、ホルムズ海峡封鎖を宣言」。
原油価格が104ドルになった。
「ホルムズ海峡」という名前は知っていても、それが自分の生活とどうつながるのか、すぐ説明できる人は多くない。今日起きたことを、ちゃんと整理しておきたい。
モモ「店長、さっき常連さんが『ホルムズ海峡が封鎖されるってほんとですか』って聞いてきて。私もよくわかんなくて」
レイ「毎月電気代の話してくる人ね。今日はそっちが気になったのか」
モモ「なんか騒ぎになってるみたいで。どういうことなんですか?」
レイ「ざっくり言うと、今日から米軍がイランの港に出入りする船を封鎖するって宣言した、ってことよ」
モモ「え、海峡ごと?」
レイ「正確にはちょっと違うんだけど、まあそういうニュアンス。順番に整理するね」
2月末から続いていた「事実上の閉塞」
レイ「これ、今日が突然始まりじゃないのよ。今年の2月28日に米国とイスラエルがイランに攻撃を仕掛けてから、イラン側がホルムズ海峡周辺を圧迫してた。3月の上旬には、タンカーの通航量が前の週から90%以上減ったっていうデータが出てて」
モモ「90%以上……ほとんど止まってたじゃないですか」
レイ「実際そうなの。で、4月7日にパキスタンが間に入って、米国とイランが2週間の条件付き停戦に合意した。条件は『イランがホルムズ海峡を安全に再開させること』だった」
モモ「あ、じゃあいったん落ち着いたんだ」
レイ「そのはずだったんだけど、4月12日にイスラマバードで21時間かけた協議が決裂して。その直後にトランプが宣言を出した」
モモ「21時間! 徹夜じゃないですか」
レイ「で、トランプは『米海軍がホルムズ海峡に出入りする船を封鎖する』と言って、もう一個、イランに通航料を払った船は拿捕するとも付け加えた」
モモ「えっ、海でも通行料を取るんですか?」
レイ「まあそういうことよ」
モモ「それって……海賊じゃないですか」
レイ「……イランも同じこと言ってるわ」
モモ「ですよね!?」

幅54km。そこに世界の石油の4分の1が通る。
モモ「そもそもホルムズ海峡って、どのくらい重要なんですか?」
レイ「一番狭いところで幅が約54kmしかないのよ、あの海峡」
モモ「54kmって……川崎から新宿まで30kmくらいですよね。それよりちょっと広いくらい?」
レイ「まあそうね。で、そこに世界の海上石油取引の約25%が通ってる。1日に約2000万バレル」
モモ「25%か……なんか思ったより少ないですね」
レイ「少なくないわよ。世界の石油が全部で何億バレルと動いてて、その4分の1がここを通ってる、ってことよ」
モモ「あっ……4分の1か。さっきまで少なく感じてたのに急にやばく見えてきた」
レイ「そう、数字で聞くとスケールがわかりにくいんだけど、要するに『世界の石油の主要な出口が事実上1か所』ってこと。そこが詰まったらどこにも流れていかなくなる」
モモ「コンビニの出口が一個しかなくて、前の人がつっかえたら全員待ちになる感じですか」
レイ「……まあ、近いわ」
レイ「石油だけじゃなくて、LNG(液化天然ガス)も世界の取引の約2割がこの海峡を通ってる。カタールとかUAEが輸出するLNGがアジアに向かうルートなのよ。電気代にも直接つながってくる」
モモ「日本ってどのくらい頼ってるんですか」
レイ「原油輸入の中東依存度が約95%。先進国の中でも突出してる水準ね。そのかなりの部分がホルムズを通って来てる」
モモ「……95%。ほぼ全部じゃないですか」
レイ「そういうこと。ホルムズが止まると、まず影響を受けるのは日本みたいな国なの」
「封鎖」の実態——全部止まっているわけじゃない
レイ「今日の発表、ちゃんと読むとちょっと細かくて。トランプの言い方は『海峡を封鎖する』みたいなニュアンスだったけど、米中央軍の正式発表は『イランの港・沿岸に出入りする船を封鎖する』なのよ」
モモ「……違いがよくわかんないです」
レイ「イランの港に向かう船・イランから来る船を止める、ってことで、別にイランと関係のない船がホルムズを通るのは妨げないとも言ってる。建前上は」
モモ「あ、じゃあ完全に封鎖してるわけじゃないんだ」
レイ「そういうことになってる。でも現実には、海上保険が一気に跳ね上がって、保険がかけられなくて船が通るのを怖がったり、イランと取引のある会社の船が引っかかる可能性があったりで、事実上みんな通れなくなってる状態に近い」
モモ「ルールはあるけど機能してない感じですね」
レイ「……まあ、合ってるわね」
各国の反応はバラバラだった。英国のスターマー首相は「封鎖には加わらない。目的は海峡を閉じることではなく再開させること」と明言した。EUは航行の自由が最優先と表明。日本政府も今日、「外交解決が最重要」という立場を示した。

備蓄があっても、値段は上がる
モモ「日本って石油の備蓄とかしてますよね? すぐには困らないんじゃないですか?」
レイ「備蓄は今、官民合計で約8カ月分ある。政府も3月から国家備蓄の原油を放出してるから、『急に石油が来なくなって工場が止まる』みたいな最悪の事態はすぐには起きにくい」
モモ「よかった。じゃあひとまず大丈夫ですね」
レイ「物が来ても、値段は上がるのよ」
モモ「……えっ。来てるのに高くなるんですか?」
レイ「来てはいるから高い、って言い方が正しいかな。市場では原油が今104ドルになってて。これがガソリンにも電気代にも物流費にも全部乗ってくる」
モモ「それ詰んでる話じゃないですか」
レイ「しかも石油が高くなると、プラスチック原料のナフサも高くなる。ラップとか容器とか、食品の包装材まで連鎖する。肥料も石油由来だから農業コストにも出てくるし、海上保険が上がると輸入食品の値段にも乗ってくる」
モモ「野菜まで?」
レイ「時間差があるから今すぐじゃないんだけど、3〜6か月後には食品コーナーにも出てくることが多い。4月1日から始まった値上げラッシュの上にさらに重なる格好ね」
4月1日からの値上げラッシュの背景はこちらの記事で整理した。ナフサ不足とサプライチェーンへの影響はこちらの記事でも詳しくまとめている。
モモ「3月も上がって、4月も上がって、次また上がって……」
レイ「それぞれ原因は違うんだけど、結果として家計への圧力が続いてる、ってことよ」

「守る側」から「封じる側」へ——今回が過去と違う理由
レイ「ホルムズの危機って、過去にも何度かあって。2012年、2019年、代表的な事例があるんだけど、あのときはどれも『イランが脅した』『タンカーを1隻拿捕した』レベルだったの」
モモ「今回は違うんですか」
レイ「今回は米国が自分から封鎖に踏み込んだ。これは『海峡を守る』のとは全然違う。敵の港を封じる、って話で」
モモ「……アメリカが動いた方が安全なんじゃないですか?」
レイ「どっちが正しいかは置いといて、構図の話で。これまでの危機は『イランがやばいことをしないように多国籍で守る』だった。今回は『アメリカが強制的に封じる』になった。同盟国がついていかないのもそこよ」
モモ「なんか……守るためのルールを守る側が動かしてる感じがして、そこが怖いです」
レイ「こういう局面で何が正しいかは専門家でも割れてる。ある人は『圧力が交渉を動かす』と言うし、別の人は『需給がタイトな今やる短期圧力は悪手で、世界全体に痛みが広がる』と言う。どちらの見方も根拠はある」
モモ「結局どうなるんですか」
レイ「停戦期限が4月22日で、そこに向けて何らかの動きがあるかどうか。今の段階で断言できることはないわ」
モモ「それ一番怖い答えですよね」
レイ「事実だからしょうがないわ」

💬 知ってると一目置かれる一言
レイ「ホルムズの話になったとき、使えるフレーズがある。『チョークポイント』」
モモ「チョークポイント?」
レイ「海峡・運河・水道みたいな、地図上でそこが詰まると世界全体の物の流れが止まる地点のことよ。チョークは『詰まらせる』って意味。ホルムズはそのひとつで、スエズ運河とかマラッカ海峡もそう」
モモ「マラッカって東南アジアの?」
レイ「そう。日本の輸出入に使う船も通るルートね。こういう地点が機能しなくなると、どこかの一国の問題じゃなくて世界全体の物の流れが詰まる。今のホルムズがまさにそれ」
モモ「あ〜〜……ゲームで補給線を断つみたいな話だ」
レイ「そういうこと。会議でホルムズの話になったとき、『チョークポイント』って言えると、ちゃんと理解してる人に見えるわよ」
モモ「使います! ……誰に話せばいいかな」
レイ「常連さんに話してあげればいいわ」
モモ「あの方なら絶対食いついてくれそう」
モモ「読んでくれてありがとうございます! 今日ニュースで聞いた言葉がちょっと整理できたなら嬉しいです。スキ❤️ を押してもらえると次の記事を書く力になります。フォローしてもらえると新しい記事もお届けできます。また次回〜!」
