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好きなスタートアップの話をします Vol.2|NOT A HOTEL株式会社

はじめに

「自分の好きなスタートアップ」を紹介するシリーズの第2弾です。今回は、NOT A HOTEL株式会社について書きます。

このシリーズを立ち上げるきっかけになった問いは、前々回のnoteで書きました。

「日本が、日本らしく、負けない」ための核心にどう貢献できるか。これがいま自分の中にある問いです。

https://note.com/reoreo_note/n/ndd7eaab0e370?sub_rt=share_sb

前回のVol.1では、その問いへの一つの答えとして、株式会社TeaRoomを紹介させていただきました。「対立のない優しい世界を目指して」というミッションを、日本文化を通じて実装しにいっている会社です。

今回のNOT A HOTELは、また違う切り口で、この問いに事業として答えを出しにいっている会社だと私は感じています。

NOT A HOTELを最初に知ったのは、SNSやメディアで流れてくる、あの一連の写真からでした。海と一体化するインフィニティプール、円形の屋上庭園、木々に溶け込む別荘。「これ、映画のセットの話じゃなくて、日本にある実物なのか」——正直、最初はそう思いました。

そこから調べていくうちに、「これはただ綺麗な別荘を売っている会社じゃないな」と感じるようになりました。事業の設計、資金の集め方、建築家との関係、そして直近オープンした本社オフィスまで。そのすべての意匠が、一つの世界観を貫くように整えられている——その姿勢が、私がこの会社を好きな理由の中心です。



NOT A HOTELとは

まず基本情報から。

  • 設立:2020年4月1日(創業6年目)

  • 代表取締役 Co-CEO:濵渦 伸次(Chief Visionary)/ 江藤 大宗(Chief Strategy)

  • 本社:東京都中央区晴海

  • ミッション:「日本の価値を上げる」

  • コンセプト:「世界中にあなたの家を」

  • 累計調達額約332億円(エクイティ139億円+デット193億円、2026年2月時点)

  • 国内拠点:9拠点開業+40近いプロジェクトが水面下で進行中

  • 累計契約高:約650億円(2026年2月時点)

  • 営業利益:11億円(2025年3月期、前期比約4.4倍)

  • 宿泊満足度:99.2%

  • 主要投資家:ANRI、Minerva Growth Partners、株式会社セコイア、Hillhouse Investment Management/Rava Partners、SuMi TRUSTイノベーション2号ファンド(三井住友信託銀行CVC)ほか

事業を一言でいうと、「世界的な建築家がデザインしたハイエンド別荘を、共同所有できるプラットフォーム」です。年間10泊単位からの購入が可能で、購入すれば全拠点を相互に利用できる。使わない期間はホテルとして貸し出して収益化できる。売却も相続もできる。宿泊満足度99.2%という数字が示す通り、体験の質は業界水準を大きく超えるレベルで維持されています

「別荘×ホテル×コミュニティ×テクノロジー」を掛け算した、新しいライフスタイル提案がNOT A HOTELの本質だと言えます。

そしてこの会社の面白いところは、事業モデルの新しさだけではなく、"すべての意匠が世界観を貫く"設計思想だと私は理解しています。ここが、これから書いていく話の中心です。


代表・濵渦伸次さんについて

NOT A HOTELを語る上で、代表の濵渦伸次さんの経歴には触れておきたいと思います。

  • 1983年、宮崎県生まれ

  • 2004年、都城工業高等専門学校 電気工学科卒業(=高専卒)

  • 新卒でリコー入社 → 憧れていたデジタルカメラ「GR」の担当を希望していたが、研修を終えて配属先が発表された時点で辞表を提出(配属先がコピー機の担当だった)

  • 宮崎に戻り、21歳でカフェ・バーを起業半年で倒産(起業理由を聞かれて「モテたかったから」と答えた逸話が有名)

  • カフェ倒産と並行して独学でホームページ制作の仕事も始め、その後、Webデザインの世界でキャリアを積む

  • 2007年、23歳でアパレルEC構築の株式会社アラタナを宮崎県で創業

  • 2014年、ZOZO創業者・前澤友作氏と出会う

  • 2015年、アラタナを株式会社ZOZO(当時スタートトゥデイ)にM&Aで売却

  • 以降、ZOZOテクノロジーズ取締役を兼任

  • 2020年3月、ZOZOを退社

  • 2020年4月1日、NOT A HOTEL株式会社を設立(コロナ禍のロックダウン真っ最中)

——大学を出て大手企業でキャリアを積み、順当にステップアップしていく、というタイプの経歴ではありません。高専卒、リコーを研修後に退社、地元でカフェ倒産、ECで独立してエグジット、そして次のチャレンジ。"失敗込みの実践"を積み重ねてきたタイプの起業家です。

ZOZO売却からNOT A HOTELまで

濵渦さんがNOT A HOTELを立ち上げた動機の一つは、前澤友作さんの宇宙チャレンジだったそうです。

「会社を売却したお金でのんびりホテルでもやろうと思っていたのですが、前澤さん(ZOZO創業者)の宇宙への大きいチャレンジを見たときに、自分の考えていたことは小さい、恥ずかしいなと思ったんです。もっと大きなチャレンジに変えていかないといけないなと」

https://note.com/notahotel_inc/n/n754c55ffed7d

そしてもう一つ、決定的だったのが、当時前澤さんから受けた助言だったといいます。

「起業するなら、かっこいいことじゃなくて好きなことをやったほうがいいよ」

https://www.wwdjapan.com/articles/1088940

観光産業は21世紀最大の産業になるとも言われている——そこに、「旅やホテルが大好きだった」という自身の情熱を重ねて、事業領域を決めたそうです。

"ポエムだけの事業計画書"

創業初期の逸話として有名なのが、"ポエムだけの事業計画書"です。

普通の起業家は、数字とスライドを整えたパワポの事業計画書を投資家に見せます。でも濵渦さんの事業計画書は、詩のような世界観の言葉だけで綴られていた。そこからANRIの佐俣アンリさんが投資を決めたと言われています。数字ではなく世界観で資金を集めた、というこのエピソードは、いまのNOT A HOTELの姿勢を象徴している気がします。


少しだけ、ホテル・別荘業界のこと

NOT A HOTELの事業を理解するには、既存のホテル・別荘業界の構造を少し知っておいたほうが解像度が上がると思うので、素人目線で整理してみます。

日本の別荘は「使われていない」

日本には全国に別荘やセカンドハウスが数十万戸あります。ただ、実際の稼働率は決して高くありません。所有者が年間で使うのは数週間ほどで、残りの期間はほぼ空いている。管理・維持のコストは所有者が負担し続ける必要がある——という構造でした。

一方で、日本の土地には、世界水準のリゾートとしての潜在価値があります。石垣、屋久島、瀬戸内、那須、軽井沢、ニセコ、ルスツ……ここに挙げた場所はどれも、海外の富裕層が「一度は訪れたい」と憧れるようなロケーションです。ただ、それを世界的な水準で富裕層向けに事業化してきた事業者は、これまで日本にはあまり多くありませんでした。

ホテル業界のテクノロジー導入

もう一つ、濵渦さんが繰り返し語っているのが、ホテル業界のIT化の遅れについてです。

「ホテルって、僕らがアラタナを創業したころのアパレル産業と似ているんですよ。10年前はアパレルのほとんどが自社ECサイトを持っておらず、業務フローもデジタル化されているとは言いがたかった。(中略)それに比べるとホテル業界って、アパレルに比べてテクノロジーが二週くらい遅れています。利益率は決して高くないのに、予約はほとんどが大手の予約サイト経由で、自社比率は2割以下。それに投資にも無駄が多く、例えば旅館の投資の半分は部屋ではなく共用部に使われていて、宿泊者よりも従業員の方が多い」

https://www.wwdjapan.com/articles/1088940

つまり、土地の潜在価値は世界水準なのに、その価値を最大化する事業モデルとテクノロジーが追いついていない——これが日本のホテル・別荘業界の構造的な状況だと言えます。

NOT A HOTELは、この「土地の潜在価値」と「業界のテクノロジー遅延」という2つの空白を、同時に埋めにいっている会社だと私は理解しています。

ちなみにNOT A HOTELのプロダクトでは、鍵の受け渡し、空調・照明の操作、ルームサービスやハウスキーピングの依頼まで、すべて専用アプリで完結する設計になっています。オーナーもゲストも、フロントを介さずに、スマホひとつで滞在の全てをコントロールできる。この体験の"滑らかさ"こそが、既存のホテル業界の運営構造では実装しにくかった部分であり、NOT A HOTELの強みの一つになっています。


事業構造の"綺麗さ"を、3つに分けて

NOT A HOTELの事業構造を、綺麗だと感じる理由を3つに分けて書きます。

1. CGパースだけで先に売り、リクープラインを超えてから建てる

これはNOT A HOTELの事業モデルで、一番大きな発明だと感じている部分です。

普通の別荘・ホテルビジネスは、まず物件を建ててから販売や運営を始めます。建設のリスクを事業者側が全て負う構造です。それゆえに、コロナ禍のような外部ショックが起きたときにダメージが大きい。

NOT A HOTELは違います。まだ物件が建っていない段階で、CGパースだけで販売を始める。そしてリクープライン(回収可能ライン)を超える売上が集まってから、実際の建設に着手する。

創業初期のエピソードとして、青島(宮崎)と那須(栃木)の2施設を、CGパースだけで先に販売開始したところ、初日に15億円分が売れたそうです。その後、2施設だけで約2ヶ月で40億円近くの売上を出しました。

(出典:PT MAGAZINE「人生という旅をおもしろくしたい 濱渦 伸次 Shinji Hamauzu」

これは、事業リスクの構造そのものを再設計した動きだと感じます。"売れる見込み"で建てるのではなく、"売れた"から建てる。事業リスクを大きく減らす、合理的な仕組みだと感じます。

2. 3段階の収益構造

NOT A HOTELの収益は、大きく3つのレイヤーで構成されています。

  • 販売収益(一戸あたり数千万円〜数十億円のイニシャル)

  • 管理費収益(オーナーからの年間約3%のストック収益)

  • ホテル運用収益(オーナーが使わない期間、宿泊者向けに提供)

この3層構造が、一つの物件から時間軸の異なる収益を生み出す設計になっています。

さらに、Web3領域でも独自の動きをしています。ここは少しだけ噛み砕いて書きます。

一つ目が、NOT A HOTEL メンバーシップNFT(2022年開始)。これは、数千万円〜数億円する別荘を買わなくても、125万円〜で"1泊単位の宿泊権"をNFTとして持てる仕組みです。保有すると47年間(建物の耐用年数と同じ期間)、毎年その特定の日にどこかのNOT A HOTELに宿泊できる権利がある。ラインナップは、毎年1泊のMEMBERSHIP S、2連泊のMEMBERSHIP Y、3連泊のMEMBERSHIP X。宿泊の3ヶ月前に、"宿泊券NFT"である「THE KEY」が届く仕組みです。累計販売額は約7.6億円で、2026年時点で公式販売は終了しています。

二つ目が、NOT A HOTEL DAO / NAC(2024年12月〜)。NAC(NOT A HOTEL COIN)という独自の暗号資産を発行し、その資金で施設や開発用の土地を購入・運用するプロジェクトです。NACを一定期間"預ける(レンディングする)"ことで、NAC自体は消費されずにNOT A HOTELの宿泊権が付与される、という設計。2024年12月にGMOコインでIEO(Initial Exchange Offering)を実施し、目標の20億円を満額調達しました。これは日本初のRWA(現実資産を裏付けとする)IEOとして国内最大規模だったと発表されています。

これらは既存の不動産・ホテル業界ではあまり見られない資本の集め方であり、Web3の仕組みを"NOT A HOTELの体験にアクセスする新しい経路"として機能させている点が特徴的だと感じます。

そして、これだけリスクを取っている事業でありながら、直近では2024年3月期に純利益4億7,500万円、2025年3月期に純利益2億6,000万円と、連続黒字を維持しています。営業利益は前期比約4.4倍の11億円に伸長。規模拡大と利益創出を両立させている点は、注目すべき数字だと感じます。

3. 「日本の価値を上げる」ミッションの一貫性

NOT A HOTELは2025年6月、新ミッションとして「日本の価値を上げる」を掲げました。

これは抽象的な言葉ですが、事業判断のあらゆるレベルに貫かれているように見えます。

  • 土地の選定 → 世界的なリゾートとして通用するポテンシャルを持つ場所を選ぶ

  • 建築家の起用 → 世界的な建築家を招聘し、その場所にしかない建築をつくる

  • 運営設計 → テクノロジーで、無駄のない体験を提供する

  • コミュニティ → オーナー同士が繋がるコミュニティを設計する

一つひとつの決定が、「日本の土地・建築・体験・文化」を世界水準に引き上げる方向に揃っている。この一貫性が、私がNOT A HOTELを"綺麗な会社"だと感じる理由の中心です。


世界的な建築家たちが、なぜNOT A HOTELを選ぶのか

NOT A HOTELを語るうえで、絶対に外せないのが、建築家・クリエイターとの協業の話です。

ラインナップを並べると、こうなります。

  • ジャン・ヌーヴェル(ジャン・ヌーヴェル・アトリエ)——屋久島の神秘的自然を舞台にしたプロジェクト

  • BIG(Bjarke Ingels Group)——瀬戸内を望む1万坪の半島

  • Snøhetta(スノヘッタ)——ルスツリゾートのスキー場山頂

  • 藤本壮介——石垣島の海沿い、約3,000坪の広大な敷地

  • NIGO®——TOKYO(NOT A HOTEL TOKYO)

  • 片山正通(ワンダーウォール)——TOKYOのオーナーサロン

  • ほか、サポーズデザインオフィス(谷尻誠・吉田愛)、中村圭佑、元木大輔、大堀伸、小山薫堂、相澤陽介など

——世界の建築・デザインの第一線に立つプレイヤーが、次々とNOT A HOTELを選んでいます。

なぜ、彼らはNOT A HOTELを選ぶのか

面白いのは、これらの建築家・クリエイターは、日夜世界各地から依頼を受けている人たちだということです。その中には、日本のスタートアップよりずっと大きな予算・条件の案件も当然あるはずです。それにも関わらず、彼らはNOT A HOTELを"選んでいる"。

その理由の一端を、藤本壮介さんが語っている記事があります。

藤本壮介さんの言葉——「安心して大きなビジョンに乗れる相手」

藤本壮介さんは、2025年大阪・関西万博の会場デザインプロデューサーも務めた、日本を代表する建築家です。NOT A HOTELとは石垣島の「NOT A HOTEL ISHIGAKI EARTH」(2025年7月開業)でタッグを組みました。9,586m²の敷地に一棟だけの円形ヴィラで、1棟約42億円で販売されています。

藤本さんは、NOT A HOTELとの協業について、こう語っています。

「僕らが石垣のプロジェクトに関わる前から、すごいなと思っていたのは、NOT A HOTELのビジネスモデルでした。でも、そこで、建築家だけが『これをやりたい!』と言ってもダメで、そのサイトにとって最も価値があるものとは何か? これをNOT A HOTELと一緒に考えて、しっかりとつくっていかないといけない。僕らにとって安心なのは、濵渦さんたちが大きなビジョンをもっていて、さらに、プロジェクトごとに進化していて、ホテルづくりに特化したノウハウももっていること」

https://mag.tecture.jp/feature/20220927-sou-fujimoto-interview/

「大きなビジョンをもっていて、プロジェクトごとに進化していて、専門ノウハウももっている」——これは、建築家の側から見て、NOT A HOTELが"安心して大きなクリエイティブに挑める相手"だという評価だと私は理解しました。


BIGとの瀬戸内プロジェクト——世界のトップ建築家が日本の風景と向き合う

デンマークの建築家グループBIG(Bjarke Ingels Group)は、ニューヨークの「Two World Trade Center」、コペンハーゲンのゴミ処理場(屋上がスキー場)「CopenHill」など、世界の建築ランドスケープを塗り替えてきたスタジオです。

そのBIGが、瀬戸内の1万坪の半島でNOT A HOTELのプロジェクトに取り組んでいます。世界のトップ建築家が、日本の自然と向き合って、その土地にしかない建築を作る——これは、日本の建築文化にとっても大きな意味を持つ動きだと感じます。


NIGO®のTOKYO——ストリートカルチャーが空間になる

NIGO®は、ストリートブランド「A BATHING APE®」「HUMAN MADE」の創設者で、現在はKENZOのアーティスティックディレクターも務めるデザイナーです。

NOT A HOTEL TOKYOでは、NIGO®がプロデュースする「THE NIGO HOUSE」があり、後述するオフィス内にも「THE NIGO LOUNGE」というオーナー限定のプライベートラウンジが併設されています。ストリートカルチャーの文脈が、ラグジュアリーな別荘・空間として結晶化される——ここも、NOT A HOTELならではの掛け算だと感じます。


NOT A HOTEL ARCHITECTS——社内の建築組織

そして、これらの世界的建築家との協業を支えているのが、NOT A HOTEL ARCHITECTSという社内の建築組織の存在です。

2025年10月時点で50名弱のメンバーが在籍し、事業開発、プロジェクトマネージャー、デザイナー、建築エンジニアリング、Life Cycle Manager(開業後の運営)、CGパースクリエイター、ブランドディレクターと、7領域に分かれています。

設計者の内訳を見ると、社外の建築家:インハウス=3:7の比率。つまり、プロジェクトの半数以上はNOT A HOTEL ARCHITECTS単独で設計しているということです。

濵渦さんはメンバーに、こう言っているそうです。

「私たちは世界で一番、建築家とクリエイターをリスペクトする会社であろうと思うんです」

https://designing.jp/not-a-hotel-architects

世界のトップ建築家との協業を成立させるためには、社内側にも同じ言語で対話できる建築組織が必要——そう考えると、この社内建築組織の厚みそのものが、外部の第一線を惹きつける磁力になっているのが分かります。


NOT A HOTEL OFFICE——世界観を体現するもう一つのプロダクト

ここは私が個人的に一番語りたかった章です。

2025年7月、NOT A HOTELは東京都中央区晴海に本社オフィス「NOT A HOTEL OFFICE」をオープンしました。それまで創業以来、リモート主体で明確な本社を持たずに走ってきた会社が、初めて"顔"となる場所を持ったタイミングでもあります。

このオフィスが、素晴らしいんです。


倉庫を"生かす"リノベーション

物件は1967年築の倉庫。それをNOT A HOTEL ARCHITECTSがコンバージョン設計しました。天井高7m、延床面積1,161m²という、都心では稀有なスケールの空間。倉庫だった時代の鉄骨フレームやコンクリートの質感、露出したRC柱をそのまま活かし、光や植栽、家具で"余白"を作っています。

NOT A HOTELが別荘プロジェクトで大切にしている「建築を通じて、その"場"の本来の魅力を引き出す」という思想は、このオフィスにも完全に貫かれています。


ラウンジ、ワークスペース、キッチン——一つの空間に全てが溶け合う

  • ワークスペース:36名分のフリーアドレスデスクと、4つの個室ワークポット

  • ラウンジ:奥行き40mの大空間に、全長15mのビッグテーブル

  • ミーティングスペース:10種類の名作椅子とキッチンを併設

  • THE NIGO LOUNGE:NOT A HOTEL TOKYOオーナー限定のプライベートラウンジ

そして中央には、ジャン・プルーヴェが1944年に設計した約6m四方の家「プルーヴェハウス」が設置されています。プルーヴェハウスは、家そのものがミッドセンチュリー期のアート作品として評価される名品で、それをオフィス内にガラス越しに"展示"のように配置しています。

15mのビッグテーブルの両側には、Cassinaと故ヴァージル・アブロー(Louis Vuitton メンズ・アーティスティック・ディレクターを務めた著名デザイナー)がコラボしたスツール「Modular Imagination」が並びます。単なるオフィス家具ではなく、名作を集めた展示空間としても機能する設計です。


"オフィス"の常識を超えていく

濵渦さんは、このオフィスについてこう語っています。

「オフィスにあるプルーヴェハウスも豪華ではないけれど、僕にとってはすごく贅沢なものなんです。本を読んだり、自然の中で過ごしたり、人それぞれに大切な時間の過ごし方があって、そんな風に過ごせる場所を提供したい」

https://www.cassina-ixc.jp/magazine/notahotel2_ishigaki.html

"贅沢"の定義そのものを、時間や体験の質で捉え直している——そういう思想が、このオフィスからも伝わってきます。

オフィスもまた、NOT A HOTELの世界観を体現する空間になっている。ここで働くメンバーが、日々自社の世界観の中に身を置きながら、次のプロダクトを設計していく——この一貫性が、私がこの会社を好きな理由の中心の一つです。


協業ネットワークの広がり

NOT A HOTELを追っていて興味深いのは、事業のスコープが**「別荘を作る」だけで完結していない**ことです。オーナー体験や事業領域を広げるための、他社との協業や新しい試みが、直近でも次々と公表されています。

主なものを並べると、こういう動きがあります。

  • 三菱地所との提携:有楽町駅前で期間限定の体験型プロジェクト「JAPA VALLEY」を始動

  • 令和トラベル(NEWT)との提携:VIP向けトラベルコンシェルジュがNOT A HOTELオーナーの海外ホテル予約をサポート

  • AirXとの提携:全長12.6m、最大6名搭乗可能な空間による、空の移動体験

  • 新ホテルブランド「HERITAGE」「vertex」の展開:既存の別荘プロダクトとは別軸の展開

  • NOT A HOTEL CONSULTING の新設(2026年1月):元・隈研吾建築事務所やUDS、森ビル出身の黒田哲二さんを代表に迎え、全国各地の土地や建物のポテンシャルを引き出すコンサルティング事業を始動

(出典:STARTUP DB「NOT A HOTEL」NOT A HOTEL 公式note「NOT A HOTEL CONSULTINGを創業」豆腐ハードボイルド「NOT A HOTELは順調なのか?」

これらを眺めていると、NOT A HOTELの事業は、「別荘を売って終わり」ではなく、"オーナーの人生の時間の質"を、色々な角度から支えていくプラットフォームへと広がりつつあるように感じます。

そして規模の面でも動きは加速しています。2026年2月時点でオーナー数は1,100名を突破し、累計契約高は約650億円に達しています。既に開業した9拠点に加えて、水面下で動いているプロジェクトは40近くにのぼります。5年で約1,000億円規模の投資を全国に投じる方針も公表されていて、この会社はまだ拡張フェーズの入り口にいる、という印象です。

シリーズCラウンドでは、Minerva Growth Partners、株式会社セコイア、Hillhouse Investment Management/Rava Partners、SuMi TRUSTイノベーション2号ファンドといった多様な出資者が引受先に名を連ねており、単一の投資家層に偏らない資本構成になっているのも印象的です。


「日本の価値を上げる」というミッション

NOT A HOTELのミッションは「日本の価値を上げる」です。

この言葉の意味を、事業の動きから解釈してみます。

  • 日本の土地——世界水準のロケーションを、世界水準のプロダクトに引き上げる

  • 日本の建築・デザイン——第一線のクリエイターに、世界に誇れる仕事の場を提供する

  • 日本の体験——テクノロジーと運営で、既存業界の常識を超えた宿泊体験を作る

  • 日本の文化・ライフスタイル——ラグジュアリーの定義を、時間の使い方として再解釈する

これらが、事業のあらゆるレベルで貫かれています。日本の土地を、日本の建築家が設計し、日本の運営技術で提供する——このシンプルな構造が、実は日本の複数の産業を巻き込みながら、「日本の総合力」を発信していく装置になっているように感じます。


シリーズの問いへの、自分なりの答え

シリーズの起点となった問いは、こうでした。

「日本が、日本らしく、負けない」ための核心にどう貢献できるか。

改めて、NOT A HOTELの事業を眺めてみます。

  • 日本の土地・自然という、まだ発揮しきれていない資産を、世界水準のプロダクトに変換している

  • 日本の建築・デザインの才能を、世界的なプロジェクトの中で発揮できる場を作っている

  • 観光・不動産・ライフスタイルという、日本が本来強みを持てる領域で、事業として世界と戦えるプレイヤーになろうとしている

前回取り上げたTeaRoomは、「対立のない優しい世界を目指して」というミッションを、日本文化を通じて実装しにいっている会社でした。NOT A HOTELは、「日本の価値を上げる」というミッションを、土地と建築を通じて実装しにいっている会社。ミッションも領域も違いますが、**「日本にしかない資源を、日本の中でしっかり事業化していく」**というテーマの下では共通しています。

異なる領域で、異なる方法で、それでも通底しているテーマは同じです。日本にしかない資源を、日本の中でしっかりと事業化していく——そういう会社が、日本にはもっと増えてほしいと私は思っています。

そして、NOT A HOTELが素晴らしいのは、これを「補助金頼み」でも「保護主義」でもなく、シリーズCで機関投資家からも評価され、営業利益も出しながら、事業として綺麗にスケールさせているという点だと感じます。


おわりに——世界観を貫くということ

NOT A HOTELを追いかけていて感じるのは、「一つの会社が、これほどまでに全ての意匠に世界観を貫けるのか」という驚きです。

土地の選定、建築家の起用、CGパースの作り込み、オーナーコミュニティ、アプリのUX、そして本社オフィス——その全てに、同じ世界観が流れている。ラグジュアリーとは何か、日本の価値とは何か、暮らしとは何か、という濵渦さんたちが問い続けてきたテーマが、あらゆる決定の中に反映されている。

私は、綺麗な空間が好きです。開放感のあるオフィス、風景と一体化する建築、名作家具が佇む場所。そういう場所に身を置くと、自分の思考も少しだけ広がる感覚があります。NOT A HOTELは、そうした空間を、事業として、そして継続可能な形で作り続けている稀有な会社だと感じます。


日本には、まだ発揮しきれていない魅力がたくさんあります。土地、建築、文化、体験、ライフスタイル。それらを、世界の第一線と組みながら、事業として引き出していく——そういう会社が、これから10社、20社と生まれてきたときに、日本という国の"見え方"は静かに変わっていくのだと思います。

NOT A HOTELは、その一つの答えを、静かに、そして確実に、実装している会社です。

次回以降も、また別の切り口で「日本が日本らしく、次の時代に進むために大切だと感じる会社」を書いていきたいと思います。

読んでいただき、ありがとうございました。


参考記事・引用元

本記事は、以下の公開されている記事・資料をもとに構成しています。

NOT A HOTEL 公式サイト・note

代表・濵渦伸次氏に関するインタビュー・記事

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📝 前回のnote:

🔗 NOT A HOTEL:


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