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就労パスポートを書いてみた——何を書けばいいのか、実例で見せる


「就労パスポート」という書類を知っているだろうか。

障害のある人が就職活動をするとき、自分の特性・強み・必要な配慮事項を整理して企業に伝えるためのツールだ。

厚生労働省がフォーマットを無償で公開しているが、「何をどう書けばいいか分からない」と手が止まる人が多い。

僕も最初そうだった。実際に書いてみたプロセスを、項目ごとに正直に見せる。


就労パスポートとは(最低限の説明)

就労パスポートは、厚生労働省が提供する自己管理・自己開示のためのフォーマットだ。

履歴書や職務経歴書とは違い、「仕事の実績」ではなく

「自分がどういう人間か・どういう環境だと力を発揮できるか・逆に調子を崩しやすい条件は何か」

を整理することを目的としている。

企業に提出する義務はない。
まず自分のために書いて、必要に応じて面接や入社後の配慮調整の場で共有する使い方が一般的だ。

フォーマットは厚生労働省の障害者雇用ガイドラインページからダウンロードできる。

フォーマットの主な構成は以下の通りだ。
①職務経験、
②仕事上のアピールポイント、
③体調管理と希望する働き方(ストレッサー・ストレスサイン・対処法)、
④コミュニケーション面、
⑤作業遂行面。

入社後の自己チェック欄もあり、就職後も更新して使い続けることを前提とした設計になっている。


書きやすかった項目

「職務経験」と「アピールポイント」は、比較的書きやすかった。

職歴を時系列で整理するのは、これまでも履歴書や職務経歴書、スキルシートでやってきたことだ。

ITインフラエンジニアとしての経験、NPO職員としての経験、博物館・美術館でのインターン経験——複数の領域にまたがっているため最初は整理しにくかったが、リワークでの自己分析が土台になった。

アピールポイントの欄には、自分で評価したこと(分析能力・学習意欲・問題意識の高さ)と、職場や支援機関の人に言われたこと(「親身」「思慮深い」「特性を強みとして活かす視点」)を両方書いた。

自己評価と他者評価を並べると、「自分が思っている自分」と「周囲から見えている自分」のズレと一致が可視化されて、面白かった。

「過集中」の扱いには少し迷った。物事に深くのめり込める性質は、強みとして「得意なこと」の欄に書くべきか、コントロールが難しいという意味で「配慮事項」に書くべきか。結論としては両方に書いた。

「集中力を発揮できる環境を整えてもらえると強みになる」という形で、強みと配慮の二面性を正直に伝えた。


書きにくかった項目

一番難しかったのは「必要な配慮事項」だ。

「何を配慮してほしいか」を自分で言語化するのは、思った以上にハードルが高い。

配慮を求めることへの遠慮、「そんなことを言ったら採用されないのでは」という不安、そもそも「自分が何を困っているのか」が言葉になっていない

——これらが重なって、手が止まった。

リワークと就労移行支援で練習を積んでいなかったら、この欄は空白のままになっていたと思う。

プログラムの中でストレッサーを列挙し、対処法とセットにして言語化する作業を繰り返したことが、そのままここに活きた。

僕の場合、書いた配慮事項の例は次のようなものだ。
「耳から一度に大量の情報を処理することが苦手なので、タスクの指示は3つまでにしてもらえると助かる」
「昼休みは事務所の外に出て、頭と目を休める時間を確保したい」。
「残業は1日1時間まで、月20時間までにしていただけるとパフォーマンスを維持できる」

書いてみると「こういうことを伝えていいんだ」という感覚があった。

ストレスサインの欄も、書き出す前は「こんなこと書いていいのか」と思った。
「料理が作れなくなる」
「激しい音楽で自分を鼓舞したくなる」
「相談することをためらうようになる」
「ぐるぐる思考(一人反省会)が止まらない」


——これらは確かに自分のクライシスのサインだが、採用面接で見せるには重い内容ではないか、という迷いがあった。

だが就労パスポートは「採用のための書類」ではなく「入社後の配慮調整のための書類」だと理解してから、正直に書けるようになった。


書いてよかったこと

就労パスポートを持っていると、面接で「自己理解できている人」という印象を与えやすい。

障害者雇用の面接を受けているとこの「障害への自己理解」がことさら重要なポイントだと気づく。

「自分の強みと苦手と、必要な配慮を把握して、それを言語化できている」という事実は、採用担当者にとって安心材料になる。

「この人は入社後に問題が起きたとき、自分で対処しようとするか、適切に相談できるか」という判断をする際の根拠になるからだ。

入社後の配慮調整においても、就労パスポートは土台になる。

「面接の段階でこう伝えていましたが、実際に働いてみてこの点は問題なかった、この点は想定より負担が大きかった」という更新ができる。

書類としての役割は一度提出して終わりではなく、職場定着のための継続的なコミュニケーションツールとして機能する。


これから書く人へ

一人で書こうとしない方がいい。

就労移行支援やリワーク、なかぽつ(障害者就業・生活支援センター)、若者サポートセンターの支援員と一緒に書くと、質が大きく上がる。

「これは書いていいのか」「こういう配慮の求め方で伝わるか」という判断を一人でやるのは難しい。支援員はそのための専門家だ。

完璧に書こうとしなくてもいい。最初のバージョンは粗くて構わない。就労パスポートは更新していくものだ。

就職前に書いたもの、入社3ヶ月後に見直したもの、1年後に改訂したもの——それぞれが違う内容になっていい。

「完成版を作る」のではなく「今の自分を写す鏡として定期的に更新する」という使い方が正しい。

「完成させる」は認知の歪みだ。完成なんてものはない。作ることに価値がある。自分を理解することに価値がある。

そう捉えてほしい。

書くのが一番難しかった「配慮事項」の欄に、一番価値がある。

空白にしたくなる気持ちはわかる。でもそこを丁寧に埋めることが、自分が働きやすい環境を作るための第一歩だ。


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