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#3『薄明』第一章バレンタインの夜③🔞

【読者様へのご案内】この第3話には、物語の展開上、心と身体が重なり合う官能的な描写が含まれます。苦手な方はご注意ください。

前回のお話はこちら



エレベーターに乗り案内されたのは、このホテルで最も夜景が美しく見えると謳われる、上階のエグゼクティブルームだった。

​重厚な扉が開くと、足首まで沈み込むような深い絨毯と、壁一面のガラス越しに広がる東京の夜景が目に飛び込んでくる。

部屋の中央に置かれたキングサイズのベッド。

​稜真が背後で静かにドアを閉める。

カチャリ

小さな金属音が鳴り、ついにこの部屋が2人だけの密室になった。

稜真が茉莉の肩を抱きよせる

「…今日はありがとう。とても楽しい1日だった」

「私も…」

そう答えると同時に稜真の唇が茉莉に触れた

​稜真の指先が、彼女の頬を包み込むように滑り、口づけは角度を変えて繰り返される

その熱に浮かされるように目を閉じると、彼が零した吐息が耳元を掠め、茉莉を抱きすくめる

​「……ずっと、こうしたかった…」

​その一言に、彼の切実な独占欲が滲んで胸が疼いた

再び重なり合う唇は、ワインの残り香と、互いを求める熱を帯びていた。

​稜真の手が茉莉の背中に回り、ゆっくりとファスナーを下ろしていく。

空気に触れた肌が微かに震えると、彼はそれを宥めるように、慈しむように、肩先に柔らかなキスを落とす

​「茉莉さん……、君は本当に、
綺麗だ…」

稜真が熱いため息とともに感嘆の言葉をこぼし、ドレスが床に滑り落ちると、刺繍の美しいシルクのランジェリーと母の形見であるオパールのネックレスだけが残る。

暗がりの窓の外から差し込む夜景の光を反射して、虹色の輝きが茉莉の鎖骨の間で儚く揺れた。

​稜真はそのオパールに祈るように唇を寄せる。

​「……君のお母様に、これから君を奪う許しを」

​その低い声は、茉莉の体内に直接、重く響いた

​彼の手がネックレスの留め具クラスプに触れ、ゆっくりと解かれる。

外されたネックレスが、サイドテーブルの上にそっと置かれた。

稜真は、あらわになった鎖骨に吸い付くような深いキスを落とす。

​「……っ、稜真、さん」

​柔らかな肌に、彼の熱い唇が押し当てられる。

白い肌に、花びらが散ったような紅い痕がじわりと浮かび上がった。

それは、彼が茉莉を一人の女として組み敷き、独占したという消えないしるし

​「……ああ。…なんて綺麗なんだ、茉莉さん」

​彼はその痕を愛おしそうに指先でなぞり、今度は首筋から肩口へと、這うような愛撫を繋げていく。

ドレスで守られていたはずの場所が、彼の唇に徐々に侵食されていく。

​稜真の瞳は、夜景の光を反射して、吸い込まれそうなほど優しく、どこまでも深い。

彼に触れられるたび、茉莉の内側にあった「完璧でいなければならない自分」が、熱いソースをかけられたあのショコラのように、ゆっくりと溶け崩れていくのがわかった。

窓の外で瞬く数百万の光は、まるで二人の交わりを祝福し、同時に世俗から切り離す結界のようだ

​キングサイズのベッドに沈み込んだ茉莉の肌は、月の光と夜景の残光を吸い込んで、真珠のような淡い輝きを放っている。

その上に重なる稜真の体温は驚くほど高く、それでいて彼らしい節度と慈しみを帯びていた。

稜真はいつもそうだ。

茉莉を壊れもののように、宝物のように抱く

​「……気持ちいい……?」

​稜真が確認するように囁き、茉莉の頬にかかる一房の髪を耳の後ろへと払った。

高潔で、常に正しくあろうとする彼が、今、理性を外して自分を求めている。
その事実が、茉莉の胸を甘く締め付けた。

​「はい……。」

茉莉が応えると、彼は喉の奥で小さく溢すように息を吐き、再び唇を重ねた。

今度の口づけは、先ほどまでの確認ではなく、互いの存在を溶かし合うような融合だった。

​彼の手が、ランジェリーの柔らかなレースを滑り、茉莉の曲線に沿って丁寧になぞっていく。指先が通った跡には、目に見えない火の筋が走るような熱が残った。

​「君を誰にも渡したくない。……このまま、僕の腕の中で、君を溶かしてしまいたい…」

​彼は茉莉の柔らかな胸元に顔を埋め、深く、深くその香りを吸い込む。

​稜真の手が最後の手掛かりを解き放つと、二人の間に遮るものは何一つなくなった。

​密着した肌と肌。

トク、トク、と重なり合う心拍の音。

​「……あっ……、稜真、さん……」

彼が茉莉の腰をゆっくりと引き寄せた瞬間、茉莉の背中が震えた

​彼が内に侵入してくる感覚は、あたたかな陽光が静かな海へと溶け込んでいくような、あまりにも自然で優しいものだった。

​無理にこじ開けるのではなく、互いの存在を確かめ合いながら、一歩ずつ心の奥底へと歩み寄るような。

その心地よさに身を委ねていると、彼と自分の境界線が、甘やかな痺れにしゅわしゅわと溶けていくのがわかる。

​「茉莉さん……、僕を見て……」

​視線が絡み合う。

優しく、どこまでも真摯な彼の瞳

それが潤んだ茉莉の視界を支配する。

稜真がゆっくりと腰を動かすたび、茉莉の思考は白くとろけていった。

​頭の芯がじんと痺れ、指先がシーツを強く掴む。

海のような快感の波が、寄せては返すたびに高さを増し、二人をより深い場所へと誘う。

​「愛している……。茉莉さん、君だけを……」

​稜真の掠れた声が耳元で弾ける。

彼は茉莉の手をとり、指を絡ませた。固く結ばれたその手は、嵐のような情熱の中でも、決して彼女を独りにはさせないという彼の誓いのようだった。

「…茉莉さん…、茉莉さん…愛してる、愛してる…! あぁっ……!」

​「……っ……、稜真……さん……っ!」

​二人は互いの名を呼び合い、一つの大きな鼓動となって夜の闇に溶けていく。

窓の外の東京は、相変わらず無機質な光を放ち続けていたが、この部屋の中だけは、永遠に続くような、温かく濃い空気に満ちていた


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