#44『薄明』第9章:楽園①
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モルディブに着いた初日の夜は、波の音と星明かりに包まれたヴィラで、櫂は最後まで「男」を封印した。
過呼吸になるほど心身に負担がかかってしまった茉莉を、まずはとにかくゆっくりと休ませたかったからだ
まるで壊れ物を扱うようにベッドへ運び、ただその髪を撫でて、彼女が深く眠りにつくのを静かに見守り続けた。
翌朝。
眩しい太陽の光と波の音で目を覚ました茉莉は、隣で静かに自分を見守っていた櫂の穏やかな眼差しに気づく
「……おはよう…櫂…」
先日、3ヶ月ぶりに会った夜は、ほとんど飢餓状態であんなに激しく自分を求めてきた櫂。
ヴィラに着いた途端またすぐに抱かれるのかと思っていた茉莉は少しだけ拍子抜けしていた。
そして今はこんなふうにただ包み込むように自分を慈しんでくれる。
その落差に茉莉の心は少しだけ翻弄される
「……おはようございます。気分はいかがですか?顔色は悪くないようですね」
「ええ…驚くほど身体が軽いわ。ゆっくり休めたみたい。ありがとう」
茉莉がふわりと笑うと、櫂は心の底からホッとして彼女の頰を優しく撫でた。
「それは良かった…。
さあ、最高の朝食を用意させました。プールへ行きましょう」
「え?プール?」
テラスに出ると、そこには大きなハート型のトレイに載せられた色鮮やかなフルーツ、焼きたてのパン、卵料理、そして冷えたシャンパンが浮かんでいた。
「わあ……! フローティング・ブレックファストね! 素敵!」
子どものように目を輝かせる茉莉を、櫂は幸せそうに見つめた
「じゃあ水着がいいわよね。すぐ着替えてくる、待ってて」
茉莉は早速この日のために買ったばかりの水着に着替える。
背中が大きく開いた、繊細なレースがあしらわれた白い水着。
鏡の前で髪をアップにしていると、背後から櫂が近づき、その細い首筋にそっと唇を寄せた。
「……。想像通り、やはり似合います。
ただ、朝から見るにはその水着は刺激が強すぎますね。眩しくて目がつぶれそうだ」
「何を言ってるの…あなたが選んだんじゃない、もう。行きましょ」
そのまま茉莉はプールサイドに腰掛け、中に入ると「冷たい」と言いながらトレイの前に陣取ってはしゃぐ
茉莉を見つめる櫂の瞳は、穏やかさを装いながらも、その実、茉莉の水着姿に静かに興奮していた。
自分で選んだはずの水着だった。
けれど、実際に彼女がそれを纏い、太陽の光を浴びた姿は、想像を遥かに絶するまぶしい魅力に満ちている。
清潔な白のレース。
それが茉莉の透き通るような肌に乗ると、どちらが生地でどちらが素肌なのか、境界線が溶けて見えなくなるほどだ。
水に濡れたレースが肌にぴたりと吸い付き、彼女が動くたびに、繊細な刺繍の隙間から眩いばかりの柔らかな肌が露わになった。
特に櫂の視線を釘付けにしたのは、その背中のラインだ。
腰のすぐ上まで大きく、大胆に開いたバックスタイル。
そこには、自分以外の男には決して見せない、美しい背骨の曲線と、瑞々しい肌が晒されている。
茉莉が腕を動かすたび、肩甲骨の華奢な動きが、彼女の女としての脆さと、抱きしめたい衝動を同時に突きつけてくる。
そして水面から僅かに覗く、きゅっと引き締まった細いくびれから豊かに弧を描くヒップへのライン。
清楚なレースとは裏腹に、そのカッティングは驚くほど彼女の肢体の柔らかさを強調していた。
(……ご褒美すぎる…)
櫂はこの休暇を与えてくれた征嗣と何かしらの神様に心の中で手を合わせた。
ふと、茉莉が振り返り、濡れた髪をかき上げながらこちらに微笑みかける。
寄せて上げられたわけでもないのに、レースの縁から零れ落ちそうな、自然で、柔らかな胸の谷間。
そこに一粒、真珠のような水滴が滑り落ち、吸い込まれていくのを、櫂は呼吸を忘れて見つめていた。
「櫂? 入らないの?」
無垢で、純粋な問いかけ。
自分が今、どれほど淫らな視線で彼女を脱がせているか、彼女はこれっぽっちも気づいていない。
その無意識の誘惑こそが、今の櫂にとって最大の、そして最も抗いがたい一撃だった。
「……。ええ、今行きます」
櫂は立ち上がり、シャツを脱ぎ捨てる。
ゆっくりとプールの中を移動して茉莉に歩み寄ると、水中で生まれる抵抗が、かえって彼の雄としての重量感を際立たせていた。
「ふぅ……。どちらを先に食べようか、迷いますね」
「そうねぇ、果物も美味しそうだし、 クロワッサンも…このガスパチョも美味しそう、こんなにたくさんあって迷っちゃうわね」
茉莉がバリエーション豊かな朝食トレイを指差して微笑みかけたが、櫂の視線は一度もそこには向いていない。
「いえ…そうじゃなくて」
彼は茉莉のすぐ目の前で止まると、濡れた指先で彼女の鎖骨に溜まった水滴をなぞり、そのままレースの縁から覗く柔らかな膨らみへと滑らせた。
「……こちらのほうが美味しそうで。」
櫂の手が水中で茉莉の細い腰を引き寄せ、密着させる。
水着越しに伝わる、彼の逞しい太ももと、隠しようのない熱。
「…か、櫂……、……朝ごはんが……まだ…」
「……そうですね。では、こうしましょう」
櫂はトレイから一切れの完熟マンゴーを手に取ると、それを自分の唇に挟み、茉莉の唇へと近づけた。
「……分け合いましょうか。それとも、果実よりも先に、あなたのその甘い声を頂いても…?」
至近距離で見つめる櫂の瞳には、南国の太陽よりも熱い独占欲が渦巻いている。
茉莉が答えを出すより早く、櫂は唇に挟んだ黄金色のマンゴーを、彼女の唇へとそっと押し当てた。
「……っ、……ん……」
重なり合う唇。
とろけるような果実の甘さと、それ以上に熱い櫂の舌が、茉莉の口内を支配していく。
鼻腔をくすぐる果物の濃厚な香りと、水中で密着する体温。
マンゴーの果汁が二人の唇の端から溢れ、茉莉の白い鎖骨へと一筋、黄金のラインを描いて滑り落ちた。
「……美味しいですよ、茉莉。
……マンゴーも、……あなたも」
櫂は果汁が伝った彼女の肌を、慈しむように舌で辿っていく。
水中で彼の逞しい腕に抱き上げられ、茉莉の脚が自然と彼の腰に絡みついた。
「……朝ごはんは……食べないの?」
「ええ。朝ごはんはもう少しあとでゆっくり。
……今は、あなたで胸がいっぱいです。
……昨夜一晩、我慢した自分を、……今、心の底からよくやった、と褒めているところです」
櫂の声が、茉莉の首筋で心地よく響く。
揺れる水面。
ハート型のトレイが波に押されて遠ざかり、二人の世界にはただ、重なり合う吐息と潮騒だけが残された。
青い空に溶けるような、長い、長い口づけ。そしてとろけあう肌の重なり。
こうして、二人の楽園での五日間は、甘美な熱を帯びて幕を開けたのだった。
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注意書き(18禁の)してないけどこのくらいならセーフだよね?
