#4薄明スピンオフ『九条稜真の恋』
こちらの物語は、先日完結した長編恋愛小説『薄明』の番外編(スピンオフ)ですが本編をお読みになっていない方でも単体でお楽しみいただける内容になっていますので、本編未読の方もぜひ気軽にお読みください。
前回のお話はこちら
薄明スピンオフ:九条稜真の恋 第4話
「じゃ…じゃあ、行きましょうか。ここから10分ほど歩くんだけど」
スマートに彼女をエスコートしようと、嬉しさのあまり少しだけ弾んだ声で足を踏み出した、まさにその時だった。
「あれーっ!九条さん!!」
背後から響き渡った聞き覚えのある快活な声に、稜真はビクッッッと
漫画のように肩を強張らせた。
この声は…
(…か…っ、加納……!!)
──その声の主は、自分の会社『レガリア』で右腕を務めるビジネスパートナーの加納麗奈だった。
一気に血の気が引く。
なっ…なんでこんなところで……!
何でよりによって一番うるさくて鋭いヤツに見つかってしまうんだ!!!!
パニックになりかける頭で、稜真は必死に自分に言い聞かせた。
(いや待て落ち着け今の彼女は夜の世界の女性じゃない既に足を洗ったただの一般女性だそれに自分だって独身で特定の相手もいないやましいこと隠すことなど何一つないっ…!)
稜真が0.5秒でそう結論付けた後
「……っ……、、、加納……」
オドオドと、からくり人形のようにぎこちなく振り返ると、そこにはお洒落をした私服姿の麗奈と、
…見知らぬ若い男が立っていた。
……いや…、どこかで見たことがあるような……?
「うわぁ!!九条さんもデートですか?奇遇ですねえ〜!
あっ、えっと、こちら……高木さん。西園寺グループの……」
西園寺グループ?
紹介され、ふとその男の顔を見ると、そう言われれば確かに茉莉のチャリティーパーティで見かけたような気がする。
「た、高木です。九条社長のお噂は、麗奈さんや弊社の黒崎からもよく伺っておりますっ」
まだ若いが仕事の出来そうな好感度の高い青年がハキハキと挨拶した後、ぺこりと頭を下げる。
加納の恋人なのだろうか、と訝しんでいると、麗奈が稜真のそばに歩み寄り、こそっと耳打ちをした。
「実はあのパーティで一目惚れされちゃったみたいで……。
歳下だからどーかなって思ってたんですけど、ずーっとアプローチされ続けてたから、根負けしてちょっとデートしてみたんですよっ。
……んで?」
麗奈の好奇心に満ちた視線が、稜真の背後に静かに佇むエリカへと移る。
ニヤニヤと楽しそうな顔で、麗奈が覗き込んだ。
「そちらの、めちゃくちゃ美しい方は?」
「か……彼女は……」
何と説明したものか。
友人……でもないし、ましてや恋人でもない。知り合いと言うのもおかしな距離感。
さっきナンパして──
いや心象が悪すぎる。
咄嗟に言葉が出てこず、しどろもどろになる稜真。
しかし、彼が必死に言葉を紡ぎ出そうとした、その時だった。
「……っえ?」
ふいに、麗奈の動きがピタリと止まった。
ポカンと口を開けたまま、瞬きすら忘れたように固まっている。
「…加納……?」
その異様な様子に稜真が声をかけようとした瞬間、麗奈が夕暮れの街に響き渡るような悲鳴に近い声を上げた。
「えええええええ〜〜〜〜〜っっ!!!!!!あ……あなた……もしかしてっ………、」
エリカが不思議そうに振り返る。
稜真は白目になっていた。
(し……知り合い?知り合いなのか?!!嘘だろ!?)
しかし、次に麗奈の口から飛び出したのは、稜真が予想だにしない言葉だった。
「ひ……人違いだったらすみません。もしかして、もしかして……コンシェルジュ会社『リュクスゲート』の、藤江理華社長……ではないですか?」
(……しゃちょう?)
あまりに突拍子もない単語に、稜真は目が点になり、思考が瞬時にフリーズした。
しゃちょう…社長? 誰が? 彼女が?
『エリカ』ではなく『ふじえ りか』?
コンシェルジュ会社? 一体、何の話をしているんだ?
全く状況が呑み込めず、ただただ横に立つ彼女を凝視していると、エリカはほんの少しだけ驚いたように目を丸くした。
しかし、すぐに女性としての気品と大人の余裕に満ちた、極上の微笑みを咲かせ目を細め答える。
「……はい。藤江です」
つづく
次回は明日21時頃更新予定です
社長????
本編薄明の物語を1話から読んでみたい方はこちら
あらすじもございます!
エリカが出てくるのは18章「仮そめの愛」です。よろしければぜひ😌
今日、大きな地震がありましたね
皆さん大丈夫でしょうか…
これ以上被害が広がらないのことを祈っています
