芭蕉煎餅 かぶき屋 (小松屋本店のアイスドリアン) 秋田県横手市 和菓子なスクチャイ174 2025.12.01
和菓子なスクチャイ174 秋田県 > 横手市
※くまの身長は7.5cm。大きさの参考に。
芭蕉煎餅 かぶき屋 秋田県横手市

1.半額商品をみつけた
前々回の「あっぱれだんご」の続きの話になるが、おばちゃん(女将さんを親しみを込めての呼称)と熊の話などをしている時に、レジ脇に半額と書かれた煎餅菓子のようなお菓子が売っているのに目がつき、つい買ってしまったのだった。
袋に何枚か入っているもので定価が税込750円だったがそれが半額で2袋あったので2袋とも買って全部で税込750円だった。
深く考えずにほんの出来心で買ってしまったようなお菓子だが、結果的にそのお菓子が吾輩の大好物系のお菓子だったのだ。
そのようなお菓子が事前にあるなんてわかっているはずがなく、そもそも先に買った2種の団子「あっぱれだんご」も「花見だんご」も吾輩は事前知識はまったくなかったのだ。
事前知識がなかったからこそ地元ならではの美味しいお菓子を大発見した気分で、とても愉快だった。
それで今回「かぶき屋」での3種類目のお菓子も、吾輩にとって大いなる発見のお好みのお菓子だったことになる。
2.その名は「芭蕉煎餅」


ま、東北を旅していたらどこかしこで芭蕉(松尾芭蕉)の名前は目にするので珍しくはない。
しかしこの芭蕉はバナナの意味で、封を切ったとたんバナナの匂いが漂ったのだった。
最初何の匂いかわからなかったのだが、よく考えたら芭蕉=バナナとわかった。
しかし松尾芭蕉とは関係がないではないかと思っていると、実は松尾芭蕉は庭に植えた芭蕉を愛でていたらしくそこから自分の名を芭蕉としたと後で知った。
ちなみに日本の芭蕉は熱帯のような立派なバナナが実らないバナナ(芭蕉)で葉の鑑賞用に江戸時代の芭蕉の家の庭にあったらしい。
そこから自分の名前を芭蕉としたようで、言い換えれば松尾芭蕉は松尾バナナだ。
ともかく和菓子としてはバナナでいいのか? 日本のものか?
とも思ったが、松尾芭蕉のことを思うとバナナでも和菓子入れてもいいかもしれないという気になる。
しかし果物のバナナはあくまで亜熱帯〜熱帯産で日本では沖縄や南西諸島でない限り食用のバナナは実らないのでバナナの香りがする時点で熱帯ということになる。
3.小松屋本店の「アイスドリアン」
そういえば先の記事に書いたが、かぶき屋に来る前に市役所の観光案内の人に教えてもらった洋菓子店(小松屋本店)ではアイスドリアンを食べた。
なぜドリアンかというと、先代(二代目)の店主が戦争で南方に行っていた時にドリアンの美味さを知り、その食感を表現したくて作ったとのことだ。
そのことを(継げば)四代目の若者兄ちゃん(当人の孫)が話してくれた。
肝心なのは匂いを再現したものではないというところだ。
吾輩もタイではドリアンが大好きなので、小松屋のアイスドリアンにはその食感がドリアンという点は納得したことを(継げば)四代目の兄ちゃんにも告げた。
ただ、タイで食べられる本物のドリアンで作ったドリアンアイスとはやはり香りも味も異なることも申し伝えた。
吾輩の勝手な想像だが、どうも横手の人は南国に憧れがあるのではないか?
ま、たったふたつの例(芭蕉煎餅とアイスドリアン)からの推測ではあるが。
本来和菓子の情報ではないので以前の記事では割愛したが、無視するとちょっともったいない情報なのでここに番外編として写真を掲載することにする。
アイスドリアンの写真は以下だ。もちろんお店に断ってから撮影したもので、ソーシャルメディアでの公開も歓迎されている。







ちなみに後日(2026/01/25)に秋田駅近くにある「秋田県産品プラザ」の冷凍庫に「ドリアンアイス」が売られているのを発見した。
すぐに食べられない事情があったのでその場では買わなかったのだが、食べようと思えばここに来たら買って食べられるということがわかった。
横手の小松屋本店に行かなくても秋田駅近くでドリアンアイスが食べられるというのは結構朗報ではないだろうか?

プラザに売っていた。(2026/01/25)
4.芭蕉煎餅を食べた


そのバナナ香る芭蕉煎餅だが、子供の頃に駄菓子屋で買って食べた軽くてフワッとしたミルク煎餅のような煎餅で中の白あんを挟んでいるのだった。
匂いの元は白あんのようだった。
色が3種類あるようだが、おばちゃんの説明では煎餅の色が違うだけですべて同じ味とのことだ。
ともかく吾輩はこのサクッと軽い煎餅で中にバナナ風味の芳醇な白あんが挟まっている煎餅が大いに気に入った。
ありそうでなかなかない和菓子だと思った。
かぶき屋の3種のお菓子、「あっぱれだんご」「花見だんご」そして「芭蕉煎餅」と立て続けに食べたことになるが、その3種類全部が吾輩にとってヒット商品だった。
すべてうまいのだった。
そして、どれもがその辺にありそうなほど素朴なお菓子でありながら、よく考えるとなかなか手に入らない特別なお菓子だということにも気がついた。
そういうわけで、小松屋本店のアイスドリアンもかぶき屋の3種のお菓子(だんご2種と芭蕉煎餅)も相当貴重な存在なのだ。
この時点で吾輩は「横手、やるな!」と横手に畏敬の念を持つようになった。
時間の関係で今回訪問できなかった老舗が他にもあるので横手はまた来ないといけないという気持ちなのだ。
5.「芭蕉煎餅」について
「煎餅」という名前がついているが、一般的にイメージする硬いせんべいとは全く異なり、「生菓子(半生菓子)」に近い食感の和菓子だ。
直径5cmほどの円形で薄く焼いた餅粉(上南粉など)の生地で餡を挟んだサンドイッチ状のお菓子だ。
中に挟まれているのは「バナナの香りがする白あんの羊羹」だ。
白、ピンク、緑といった淡い色が美しく見た目にも非常に上品で、横手では贈答用の詰め合わせに必ずと言っていいほど入っている定番中の定番のお菓子とのことだ。
6.なぜ「バナナ」の香りか?
江戸時代から明治大正にかけて、観賞用の植物としての「芭蕉(ジャパニーズ・バナナ)」は日本でも広く知られていた。
俳聖松尾芭蕉がその名を冠したのも、庭に植えられた芭蕉の木を愛でていたからだ。
明治時代に台湾などから果物のバナナが輸入され始めた当初、その香りが非常に高貴で珍しかったため、和菓子にそのフレーバーを取り入れるのが当時のトレンドとなった。
その際、バナナを指す言葉として「芭蕉」が使われたのが名前の由来とのことだ。
「芭蕉煎餅」は、かぶき屋だけでなく、横手市内のいくつかの老舗菓子店(木村屋や今泉菓子舗など)でも作られている横手市を代表する郷土銘菓である。
明治から大正にかけて当時の職人たちが「ハイカラな味」としてバナナの香りを和菓子に融合させたものが、そのまま地域の伝統として定着した。
現在ではかぶき屋のような老舗がその製法と味を守り続けているのだ。
7.独特の食感を楽しむ
周りの生地は口に入れるとしっとり、あるいはホロっと崩れるような食感で、中のねっとりとしたバナナ風味の羊羹と絶妙にマッチしている。
バナナの香りはふんわりと優しく決して強すぎないためお茶の味を邪魔しない。
他の生菓子(団子など)に比べると1週間から10日ほど日持ちするため、横手土産として非常に重宝されているとのことだ。
「かぶき屋」の店舗では前回紹介した「あっぱれだんご」のような庶民的なおやつと、この「芭蕉煎餅」のような贈答用の銘菓が同じショウケースに並んでいる。
このことは地元の人々が日常のおやつから冠婚葬祭まであらゆる場面で「かぶき屋」を頼りにしている歴史の証でもあるのだ。
(おわり)
