酒種あんぱん つるおか菓子処木村屋 山形鶴岡 和菓子なスクチャイ055 2025.07.29
和菓子なスクチャイ055 山形 > 鶴岡
※くまの身長は7.5cm。大きさの参考に。

酒種あんぱん つるおか菓子処木村屋 山形鶴岡
1.JR鶴岡駅構内に鶴岡木村屋直営店
鶴岡駅改札口前にある冷房が強烈に効いた待合所に隣合う形で鶴岡木村屋直営店がある。
外は強い日差しの猛暑なので出来れば外に出たくない日だった。(2025/07/29)
吾輩はここに木村屋の直営店があるなんて知らなかったので儲けもんの気分だった。
鉄道で鶴岡に来た場合、涼しい駅の中で各種の木村屋の商品が買えるのだ。
場合によっては列車の停車時間が少し長い場合、ちょっと改札口を抜け出して買い物するのもありだ。
吾輩、数か月前に自家用車で鶴岡に来ていたとき、鶴岡の木村屋のあんぱんやその他の生菓子をいろいろ見て買いたくて、木村屋本店に電話をかけて駐車場について訊いたことがあった。その場所が昔ながらの混み入った商店街のようで、電話で説明された駐車場の場所もちょっとややこしいのだった。
さらにその日は結局閉店時間に間に合わず、訪問を断念したのだった。
そんなことがあったので、今日鶴岡駅構内で不意に木村屋を発見して非常に喜んだわけだ。
駅によくありがちな、各種土産物を置いている総合的な店にいくつか木村屋の商品が置いてあるというのとは違い、ここでは置いているものすべてが「鶴岡木村屋」の商品なのだ。
その純潔さと血統書付きの感覚が頼もしく嬉しいのだった。
さすがに生菓子は置いてないようだったが、どの商品も美味しそうで評判が良いのですべてが美味しいに決まってますね。もう食べんでもわかります。(土井善晴氏の口調)(≧∇≦)
2.酒種あんぱん発見
吾輩はゆったりと空間を確保している快適な店内を一巡し、店舗片隅のワゴンに「あんぱん」が置いてあるのをふと発見した。

昔ながらの味のある長細い紙袋に小ぶりのあんぱんがいくつか入っているものだ。
もうその一袋しか残っていなかった。
他にも生菓子系もそのワゴンに置くのだろうが、ワゴンはそのあんぱんの一袋を取ると空っぽになった。
見るからに早めに確保しておかないと傍から来た他の客に一瞬にして取られてしまう恐れがある商品だった。
吾輩はともかくそのあんぱんを逃げられないように捕獲した。
あたかも昆虫採集をしている少年がでかいカブトムシを見つけたような心境だったのだ。
手に持ってみて、小ぶりのあんぱんが5個入っている様子が透けて見えているが、中の餡の存在を主張するかのようにずしりと重く感じたのだった。
これが噂の木村屋の酒種あんぱんだ。
5個入り1袋で税込518円だった。
3.数年ぶりの木村屋のあんぱん
実は吾輩、東京では何度も木村屋のあんぱんは食べていてその美味しさは重々承知なのだが、今回は暖簾分けした鶴岡の木村屋のあんぱんはいかに!?
・・・という好奇心から買うことにしたのだ。
そもそも木村屋のあんぱんを食べるのが久しぶりだ。
少なくとも前回食べたのは新型コロナ禍以前だから5年以上前になる。
そんな吾輩の目の前に木村屋のあんぱんが現れたら無条件に買って食べるに決まってるのだ。
4.列車の中で食べる






さて、列車に乗ってからお腹がグーとなり、家で食べるつもりだったあんぱんの袋につい手が伸びた。
この記事用に手抜かりなく写真を撮っておけば、あとはいつ食べてもいいじゃないか、というもんだ。
うまい!
昔ながらの素朴な中に酒麹だと思われる旨そうな香気が鼻腔をくすぐる。
鶴岡木村屋のあんぱんも最高だった。
5.木村屋の歴史
1869年(明治2年)に東京芝日陰町(現在の新橋あたり)に日本最古のパン屋「木村屋總本店」が開業し、その5年後の1874年(明治7年)に銀座4丁目に店舗が出来、そこで創業者の木村安兵衛らが日本で初めてあんぱんを発明した。
日本で初めて、ということは、自ずと世界で初めて、地球上で初めて、ということになり、果ては宇宙で初めて、ということになるだろう。
6.日本固有の黄麹菌による発酵
あんぱんは、西洋の発酵パンと和のあんこが融合して生まれた和洋折衷のお菓子に見えるかもしれないが、日本初の木村屋のあんぱんは日本米と麹菌から作った清酒醪(もろみ)を種菌にする、つまり酒を醸造する工程でできた酒種(さかだね)を種菌として用いた日本独自のパン生地であった。
日本産の米と麹菌から作った清酒醪(もろみ)をパン生地の種菌としたという時点ですでに西洋のパンとは異なっている。
ここで小麦粉が日本産であるならパン生地のすべてが日本産になる。
日本の麹菌は分類上「黄麹菌」とよばれ、学名アスペルギルス・オリゼーという日本固有の菌だ。
黄麹菌は古くから味噌・醤油・酒・酢の醸造など日本の発酵食品文化と密接に関わっている。
そして、その黄麹菌がいるのは地球上では日本だけ(沖縄を除く)なのだ。
ちなみに沖縄の麹菌は黒麹菌という別の種類で、泡盛を醸造するのに使われている。
中国や韓国などでも麹菌で酒を造る地域はあるが、それぞれの土地でそれぞれの種類の麹菌がいて、使用する原料の違いにもよって出来る酒など発酵食品の風味が異なる。
繰り返すが、日本酒醸造に使う黄麹菌は沖縄を除く日本にしかいないので、あんぱんの生地を膨らませるのに使う清酒醪(もろみ)が黄麹菌と日本米からできている時点で純日本産となる。
小麦粉を練って発酵させて生地を膨らませるという技術は確かに西洋から来たのだろうが、使う原材料は日本固有の黄麹菌と米で出来た清酒醪(もろみ)なのだ。
清酒醪のことを「酒種(さかだね)」といい、酒種を発酵させて膨らませたパンだから「酒種パン」と言う。
あんぱんにすると「酒種あんぱん」だ。
焼く時点で沸点の低いアルコール分は飛んでしまうが、生地に酒の香りが残り、それがフワっと香る。
その香りが日本のパンの独特の香りということになる。
酒種による発酵については以前書いた「米沢の甘酒まんぢゅう」と「群馬の焼きまんじゅう」も参考にしてほしい。
そういうわけで、酒種あんぱんは最初は西洋に技法を学んだものの日本の資源で工夫を凝らして生み出した純日本製のお菓子と言えるのだ。
パンと言うと洋風に聞こえるが、特に「酒種あんぱん」は発酵の仕組みといい中に収まっているあんこといい、誰に遠慮することもなく純日本産と言い切っていい食品だ。
7.明治時代のあんぱんブームと暖簾分け
当時のあんぱんは瞬く間にヒット商品になり明治末期には日本全国で1日に数十万個も売れた。
以降、大正時代にかけて銀座木村屋は全国にパン文化を広めるために多くの職人に暖簾分けを行った。
現在も全国各地に「木村屋」や「キムラヤ」という屋号を掲げるパン屋やお菓子屋が散在し(以下の10章を参照)、今回紹介している鶴岡木村屋も同様で、1887年(明治20年)に暖簾分けされ、山形県内で初めて創業したパン屋となった。
8.現在の鶴岡木村屋の店舗
鶴岡木村屋については、現在は鶴岡市内に本店と鶴岡駅店を含む8店舗、酒田市に4店舗、宮城県仙台に2店舗、そしてなんと東京の新宿タカシマヤと銀座の山形県アンテナショップの2店舗がある。あとは神奈川県に1店舗、横浜タカシマヤだ。
ちょっと待った。東京に鶴岡木村屋の商品があるの!?
と吾輩は驚いた。
しかし、東京で鶴岡木村屋のあんぱんを売っているかどうかはわからない。
あんぱん以外の商品の可能性が高い。
あんぱんについては銀座に本家本元があるのでね。
でももし東京で鶴岡木村屋のあんぱんが銀座木村屋總本店に向こうを張って出品していたとしたらそれはそれで面白いではないか。
あたかもジャイアント馬場のリングとジャンボ鶴田のリングが隣合わせで同時に興行するようなものだ。しかもあくまでライバルではなく師弟関係なのだ。
別のたとえでは立川志の輔師匠と弟子の立川晴の輔が同時に隣り合わせの場所で別々に独演会を行うと言ってもいい。
どちらも味があるのでどちらにも見聴きに行きたいというのが人情だろう。
(なんちゅうたとえかと自分でも思うが、ま、プロレスファンか落語ファンの場合ね)(≧∇≦)
ここでプロレス興行も落語の高座も興行している時間が同じで空間が違うのでひとりの人が同時に両方を見たり聴いたりは出来ない。
が、あんぱんなら同時期に2種類手に入れられるのだ!
それをあとでゆっくりと食べ比べればいい!
ここが肝心なのだ。そこの奥さんよ!
東京でもし鶴岡木村屋のあんぱんが売っていると想像すれば、なんだか嬉しいではないか!
もしかすると、弟子が師匠を追い抜いているかもしれない。
出藍の誉だ。
9.暖簾分け木村屋のあんぱんを食べ比べてみたい
吾輩、今回列車の中で鶴岡木村屋のあんぱんをむさぼり喰い、その実に美味しくも懐かしい昔ながらの酒種あんぱんの風味を久しぶりに味わった。
そこで、師匠の銀座木村屋總本店のあんぱんと弟子の鶴岡木村屋のあんぱんを食べ比べてみたい!
・・・という野望がアントニオ猪木の闘魂のように吾輩の胸の内でメラメラと燃え上がって来るのであった。
案外、ジャンボ鶴田のファイトや立川晴の輔の高座の方が、師匠よりも見応え聴き応えがあるかもしれないではないか。
こればっかりは実際に見聞きして食べ比べてみないとわからないではないか。
弟子は師匠のDNAを引き継いでいて基本には忠実に違いないが、どこかでそっと個性を出して勝負を仕掛けている可能性だってあるかもしれないではないか?
そこに吾輩、ロマンを感じてしまうのだ。
よし、今度木村屋のあんぱん食べ比べを是非実行してみよう、と心に決めた。
ただしいつどこでどうすればそれが実現出来るのかは今はわからない。
計画せねばね。(≧∇≦)
10.銀座木村屋總本店の全国の暖簾分け店
ちなみに明治〜大正期に總本店から暖簾分けされて全国に散らばり現在も存在する木村屋をさっと調べたところ、以下のとおりになった。参考まで。
(もしかすると抜けている店舗があるかもしれないが、その場合はご容赦のほど)
<本家本元>
銀座木村屋總本店
<以下暖簾分け店舗・北から>
北海道札幌市:札幌キムラヤ
山形県鶴岡市:つるおか菓子処 木村屋
東京都港区:田村町木村屋
東京都中央区:築地木村家
千葉県佐倉市:蔵六餅本舗 木村屋
福井県鯖江市:ヨーロッパンキムラヤ
岡山県岡山市:岡山木村屋
(おわり)
