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日本人だけが、緑を青と呼ぶ

青信号、青リンゴ、青葉、青虫。どれも、よく見れば緑色をしている。だけど誰もそれを「変だ」とは思わない。海外の人にこの話をすると、「なんで緑なのに青と呼ぶの」と必ず聞かれる。これがちょっと不思議で、調べていったら、千年くらい前の日本語の癖が今も残っているらしい、という話に行き着いた。

古代日本には、色の言葉が4つしかなかった

日本語の色名で、
「い」をつけて形容詞になるものを並べてみる。

・赤い
・青い
・白い
・黒い

この4つだけだ。
「黄色い」「茶色い」は途中から作られた語で、
「緑い」「紫い」は存在しない。

つまり古代の日本語では、
色の世界が「赤」「青」「白」「黒」の4区分しかなかった、
ということになる。

そしてその「青」は、
今でいう青と緑をひとまとめにした、
かなり広い範囲の色を指していた。

「緑」と「青」が分かれたのは、平安時代ごろ

日本語において、
もともと「みずみずしさ」を意味する言葉だった「みどり」が、
色を指す独立した名前として定着し始めたのは、
平安時代ごろと言われている。

それ以前は、
「あを」が現在の緑色まで含めた広い範囲を指していた。

ただ「緑」という言葉が生まれても、
昔から青と呼ばれていたものは、
そのまま青として呼び続けられた。

青リンゴ、青葉、青虫、青菜、青信号。
これらは全部、
1100年より前から呼ばれてきた言葉の名残だ。

「変な使い方」ではなくて、
「古い使い方が残っている」だけだった。

信号機は、最初は法律で「緑信号」だった

信号機の色も、面白い経緯をたどっている。

1930年(昭和5年)に日本で最初の信号機が導入されたとき、
法令上は「緑色信号」と書かれていた。
英語の green light の直訳だ。

ところが現場の人も新聞も、
誰も「緑信号」とは言わなかった。
みんな自然に「青信号」と呼んだ。

なぜなら、
日本語の「青」は元々その範囲をカバーする言葉だったから。

そして1947年、
道路交通取締法が改正されて、
法令の表記も「青信号」に変わった。

法律のほうが、
日本語の感覚に合わせて折れた、ということになる。

言語が違うと、見える色も変わるらしい

ロシア語には、青を表す言葉が2つある。

・siniy (シニー) = 暗い青
・goluboy (ゴルボイ) = 明るい青

これは英語のような light blue / dark blue ではなくて、
完全に別の色名として存在している。

マサチューセッツ工科大学が2007年に行った実験で、
ロシア語話者と英語話者に、
青のグラデーションを見せて区別の速さを測ったところ、
ロシア語話者のほうが、
青の中間色を識別する反応が早かった。

つまり、
言葉が分かれている色は、
識別のスピードにも差が出る。

ここから飛躍させすぎることはできないけれど、
日本語の「青」が長く広い範囲を指してきたことが、
私たちが青と緑の境界を、
ゆるく扱う感覚と、
どこかで繋がっているかもしれない。

データで見る「色の言葉」

・古代日本語の基本色名: 赤・青・白・黒の4色
・「緑」が色名として独立した時期: 平安時代ごろ
・信号機の法令変更: 1930年「緑色信号」→1947年「青信号」
・ロシア語の青: siniy(暗い青) / goluboy(明るい青)の2語
・形容詞化できる色名(い形容詞): 赤い・青い・白い・黒い の4色のみ

言葉が、世界の切り方を決めている

物理的な光の波長は、
どの国の人にとっても同じはずだ。

それなのに、
ロシア人は青を2色に切る。
日本人は青と緑を1色にまとめる。
英語話者は青を1色として扱う。

これは「正しい色の数」がないことを意味する。
言葉が、
世界をどう切り分けるか、
そのナイフの形を決めている。

青信号を見て「青だ」と感じる感覚は、
たぶん千年以上の時間をかけて、
日本語が作ってきたものだ。

「これは緑だろう」と思った瞬間に、
1947年に法律が折れた歴史と、
1100年に分かれた言葉と、
どこかで繋がっている。

身近な信号機を、
そういう目で眺めると、
ちょっと景色が違って見える。

Q. 海外の信号機も「青」と呼ぶ国はある?

A. ほとんどの国は green(緑)・vert(緑)・verde(緑)など、緑系の言葉で呼んでいます。
日本語の「青信号」は、世界的にはかなり珍しい呼び方です。
韓国語でも口語で「パラン信号(青信号)」と呼ぶことがあり、
これを近代日本語の影響とする説もあれば、
韓国語にも古くから青(푸르다)が緑の領域を指す用法があった名残だとする説もあり、
由来には複数の解釈があります。

Q. なぜ信号機の青は、本当の青色じゃないの?

A. 視認性の問題で、純粋な青より緑寄りの色のほうが遠くからも見やすいためです。
ただし2000年代以降は、LED信号機の普及で従来より青みの強い色も出てきました。
法令上は「青色」ですが、JIS規格では青と緑の中間にあたる色が指定されています。

Q. 子どもに「これは緑」と教えると、混乱する?

A. 混乱しません。
子どもは状況に応じて「青信号」「緑色」を自然に使い分けます。
言葉のラベルが複数あっても、人間の認知は柔軟に対応します。
むしろ「同じ色なのに呼び方が違う」を経験することで、
言語と現実の関係を考えるきっかけになります。

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#青信号 #日本語 #色 #言語 #日常観察

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