見出し画像

世界が、ついに八百万を理解した ── ポケモン30年の正体

ポケモンが2026年、発売30周年を迎えた。スマホアプリ「ポケポケ」は1年で世界9000万ダウンロード、売上1895億円。新作「Pokemon Legends Z-A」は2ヶ月で1230万本。そして累計IP収益22兆円で、ミッキーもキティも、ハリー・ポッターもスター・ウォーズも超えて、世界1位である。なぜ、ポケモンだけが突き抜けたのか。絵が可愛い、だけでは22兆円の説明にならない。

22兆円って、よくわからない桁や

22兆円は、
日本のGDPの4%くらい。

ミッキーがいて、
キティがあって、
マリオもいる。

それらを全部足しても、
ポケモンに届かない。

もっと深い何かがあるはず、
と思って調べていた。

1025匹、ひとつずつ違う顔

初代の151匹から始まって、
今は累計1025種。

ひとつずつ名前があり、
鳴き声があり、
性格があり、
得意技がある。

プロダクト・アピアランス研究
(モノの見た目の科学)によると、
人間の脳は、
5000もの顔を識別できるという。

ポケモンは、そのうちの1025匹を、
30年かけて脳に刻み込んできた。

普通の感覚からは、
多すぎる数です。

でも、日本人には
これを受け入れる下地があった。

神様が、八百万いる国

日本には、
八百万(やおよろず)の神がいる。

山にも川にも石にも、
神が宿る。
トイレにも神様がいる。
包丁にも神様がいる。

アニミズムと呼ばれる
世界観である。

ポケモンは、
ここに刺さっていた。

八百万を重ねると、
ポケモンはこう読める。

1025匹それぞれに名前があり、性格がある ── 八百万の神々。
捕まえるが、殺さない。育てれば育つ ── 神道の現世利益。
図鑑を埋める ── 神名録や御朱印を集めるのと同じ構造。
赤・緑、金・銀、ダイヤモンド・パール、ソード・シールド……新作のたびに、そこでしか出会えない神がいる ── 別の神社を巡らされる設計。
通信システムで交換する ── 他人の神を受け取り、自分の神を渡す、贈与の儀式。
ポケモンGOで、外を歩いて、その土地のポケモンに会う ── 聖地巡礼のゲーム化。

ポケモンは最初から、
日本の八百万を「動物っぽい形」に
パッケージしていた。

ただ、30年前の世界は、
それに気づいていなかった。

岡田斗司夫も、同じことを言っていた

岡田斗司夫が2019年に
『風の谷のナウシカ』を論じた動画で、
おおむねこう要約できることを
語っている。

大自然を神様と言い換えても、
意味は同じじゃないか。
一神教的な神様を、
アニミズムの世界観で
書き直しているだけではないか、と。

スティーヴン・キングを論じた回
(2015年)では、こう語っている。

キング作品には必ず善と悪が出てきて、
善が勝つときは必ず代償を要求する。
これはキリスト教的な世界観だ、と。
ただ、日本にはそれがない。
祟り神も祀る感覚がある国だから、
と。

ミッキーマウスには、
ミッキー1匹しかいない。

ピカチュウには、
1024匹の仲間がいる。

これ、一神教と多神教そのものや。

30年かけて、世界が慣れた

1996年に
ゲームボーイで初代が出たとき、
世界は「八百万」を知らなかった。

風景が変わったのは、
2016年のポケモンGOだと思う。

街を歩くと、
そこここからポケモンが現れる。

ニューヨークでも、
バルセロナでも、
ソウルでも、
同じように受け入れられた。

世界は、
「どこにでも何かが宿っている」
という見方を、
ゲームを通して学んでいた。

気づかないうちに、
アニミズムのリテラシーを
身につけていた。

今、世界は
「宗教」から
「スピリチュアル」
「ウェルビーイング」へと
関心を移している。

ポケモンが先に
動物の形でパッケージした八百万は、
その種だったのかもしれない。

輸出されたのは、OSだった

30年売れ続けた理由は、
キャラでも、
ゲームでも、
メディアミックスでもない
気がしている。

輸出されたのは、
世界観そのものだった。

日本のアニミズムというOSを、
動物の形にコンパイルして、
世界に30年インストールし続けた。

22兆円というのは、
数え方を変えると、
日本が輸出した
「神道の関税」と
読めるのかもしれない。

世界は、やっと、
八百万を理解した。

データで見る「ポケモン30年」

・累計IP収益: 約22兆円(VISUAL CAPITALIST調査・世界1位
・ゲーム累計出荷: 4.89億本、トレーディングカード累計: 750億枚
・株式会社ポケモン 2025年2月期: 売上4109億円・純利益703億円(9年で114倍成長
・ポケポケ1年間の世界累計収益: 約1895億円、日本シェア37%
・Pokemon Legends Z-A: 発売2ヶ月で12.3M本
・登場ポケモン総数: 1025種(ポケモン30周年公式サイト

よくある疑問

Q. ミッキーやキティも同じキャラ商売では?

A. 数が違う。ミッキーの「顔」は基本的にミッキー1体。ポケモンは1025通りの顔がある。一神教と多神教の構造差といえる。

Q. 日本人だから売れた、では海外での人気は説明できなくない?

A. むしろ逆で、海外の人が「新しい世界観」として受け取ったから30年売れ続けた。欧米の宗教観にない「八百万」が、ゲームという翻訳装置を通して伝わった。

Q. アニミズムでなくても説明できるのでは?

A. 一つの仮説として読んでほしい。ただ、ミッキーやハローキティが「1つのキャラ」で完結するのに対し、ポケモンが「多くの個体の総和」で成立している構造は、少なくとも一神教的ではない。

あわせて読みたい

聖書と古事記が、同じ脳から出てきた

古事記も最初は怪しい本だった

LINEの「既読」は、祈りから始まった

【文明論について考える#番外編】日本は「2050年」を生きているのか?

#ポケモン #ポケポケ #アニミズム #日本文化 #日常の気づき

いいなと思ったら応援しよう!

Romancecar|見方を変えるって、勇気がいるけど面白い 読んでいただき、ありがとうございます。 チップは任意ですが、いただけた場合は、静かにガッツポーズしています。