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古事記も最初は怪しい本だった

「偽書」と聞くと、
嘘で塗り固めた本、
と反射的に思う。

インチキ。でっちあげ。
歴史のフリをした創作物。

まあ、そう思うのが普通やろな。

でもちょっと待ってほしい。

じゃあ「本物の歴史書」は、
最初から本物だったのか。

キリストの墓が青森にある、という話

竹内文書という文献がある。

天津教という宗教団体が
昭和初期に公開した古文書で、
その内容がすさまじい。

イエス・キリストは
十字架で死んでいない。
密かに日本に渡り、
青森県の戸来村で
天寿を全うした。

モーセも来た。
釈迦も来た。
世界中の聖人が、
なぜか日本を目指した。

荒唐無稽だと思うだろう。

実際、昭和の学術調査で
偽書と断定されている。

ただ、ひとつだけ
注意しておきたいことがある。

この文書を
「面白い」と思って
真剣に読んでいる人が、
今もたくさんいる。

笑い飛ばすのは簡単だ。
でも「なぜ人はこれを
読みたがるのか」という問いは、
笑い飛ばせない。

古事記は「格下」だった

古事記。
日本最古の歴史書。
名前だけは誰でも知っている。

でも中身を読んだことがある人は
ほとんどいない。

戦前は学校で教えていた。
天皇の起源を語る神話として、
小学校の教科書に載っていた。

戦後、GHQが神話教育を禁止した。
以来、古事記は教科書から消え、
「名前は知ってるけど
読んだことはない本」になった。

しかも古事記は、
成立した712年から
約1000年間、
ほとんど忘れられていた。

日本書紀があったからだ。

720年に成立した日本書紀は、
国家が編纂した正式な歴史書。
漢文で書かれ、
中国の正史と同じ体裁を持つ。

対して古事記は、
和文混じりの読みにくい本。
朝廷の公式記録ではなく、
民間の写本で
細々と伝えられた。

つまり古事記は長い間、
「正史になれなかった本」
だった。

1798年。
本居宣長が
『古事記伝』を完成させる。

44巻、執筆に35年。

宣長は古事記の中に、
日本書紀が切り捨てた
古い言葉と古い神話が
残っていることを示した。

ここで立場が逆転する。

古事記は
「忘れられた怪しい本」から
「日本文化の原典」に変わった。

本の中身は、
一文字も変わっていない。
変わったのは、
読む側の目だけだ。

「偽」とは何か

偽書の「偽」という字を
もう一度見てみる。

偽は「人」の「為(な)す」と書く。

人が作ったもの。

でも、正史だって
人が作ったものだ。

偽書と正史の違いは何か。

突き詰めると、
国家が認めたかどうか、
という一点に行き着く。

国家が「これは正しい」と
言えば正史になる。
「これは違う」と言えば
偽書になる。

古事記は、
国家が認めなかった時代には
誰も読まなかった。
一人の学者が認めた途端、
日本の宝になった。

東日流外三郡誌という文書は、
1970年代に発見されて
一時は貴重な史料と騒がれ、
その後の筆跡鑑定で
偽作と判定された。

正史から偽書へ。
偽書から正史へ。

その境界線は、
思ったより薄い。

本棚の境界線

本屋に行くと、
古事記は「古典」の棚にある。
竹内文書は
「スピリチュアル」の棚にある。

その棚分けを決めたのは、
本の中身ではない。

時代と、権力と、
たまたまの巡り合わせだ。

古事記だって、
本居宣長がいなければ
今も「古典」の棚には
並んでいなかったかもしれない。

最近、YouTubeで
こうした古史古伝を
真面目に扱うチャンネルが
人気を集めている。

竹内文書やホツマツタヱといった
「偽書」とされる文献を、
笑い飛ばすのではなく、
「なぜそう書かれたのか」
という角度で読み直す。

本物か偽物かではなく、
この文書が書かれた時代に
何が起きていたのか。
なぜ誰かがこれを
書く必要があったのか。

その問いの前では、
正史も偽書も関係ない。

今「偽書」の棚に並んでいる本の中にも、
300年後に誰かが再発見して
「これはすごい」と言い出す
一冊があるかもしれない。

それは誰にもわからん。
わからんから、面白い。

Q. 古史古伝にはどんな文書があるの?

A. 代表的なものに、竹内文書(武内宿禰の子孫が伝えたとされる口伝)、ホツマツタヱ(独自のヲシテ文字で書かれた叙事詩)、宮下文書(富士山麓の古代王朝を伝える文書)、九鬼文書、カタカムナなどがある。いずれも古事記・日本書紀より古い歴史を伝えるとされ、学界では偽書に分類されている。

Q. 偽書=嘘の本、ということ?

A. 必ずしもそうではない。「偽書」は学術用語で、成立時期や著者の主張に疑問がある文書のこと。内容の真偽とは別の話だ。古事記自体、編纂時期の正史である続日本紀に記録がなく、平安時代まで他の書物にも引用されていない。「正史」の足元も、意外と揺れている。

Q. 古事記と日本書紀、どう違うの?

A. 日本書紀は国家事業として漢文で編纂された「公式な歴史書」。古事記は和文混じりで、朝廷の公式記録ではなく民間の写本で伝わった。同じ神話でも描き方がかなり違い、古事記のほうが物語性が強く、日本書紀は政治的な記述が多い。

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