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「国の借金」はどこまで大丈夫?──“限界”の正体はインフレだった|やさしい“お金の話”12

◆第12回|「借金が多い=ヤバい?」はほんとうか

「日本は破綻しない」という話を聞いて、「なるほど、そういう仕組みなのか」と思った方もいるかもしれません。

でも――

「いくらでも借りて大丈夫なんて、さすがに信じられない」
「限界はあるんじゃないの?」

そんな“もやもや”が、どこかに残っているのではないでしょうか。

それは、とても自然な感覚です。私たちはずっと、「借金は返すもの」「借金が増えるのはよくない」と教わってきました。

だから、「政府がどれだけ借りても平気」と聞くと、どこかでブレーキがかかる。

でも、実はここに、ある大事な前提の違いがあります。


借金の「金額」ではなく、「反応」で見る

私たちの感覚では、借金が多いこと自体が“悪いこと”のように思えます。
でも、政府の借金は、「それによって社会がどう変化するか」で評価すべきなのです。

たとえば――

政府が国債(=借金)を発行して、社会にお金を出したとします。

 👩「お金に余裕があるから、ちょっといいもの買っちゃおう」
 ↓
 👨「あれ?どんどん売れる!ちょっと値上げしてもいいかも」
 ↓
 👩「値上がりしてる?もっと高くなる前に買っておこう」
 ↓
 👨「うわっ、在庫が足りない!生産が追いつかない!」
 ↓
 👩「高いけど、今のうちに買っておかないと」

――こんなふうに、モノの値段が次々に上がっていくと、経済全体が“加熱”している状態になります。

この「加熱のサイン」こそが、インフレ(インフレーション)です。


インフレとは?──“価格がふくらむ”ということ

インフレーション(インフレ)とは、モノやサービスの価格が、全体的に持続的にふくらんでいく(=上がっていく)現象のことです。

たとえば、昨日まで100円だったパンが、今日は110円。
服も家賃も電気代も、いろんなものの値段が少しずつ上がっていく。
これがインフレです。

※「インフレーション」という言葉はもともと「ふくらむ」という意味で、ここでは“価格がふくらむ”という意味で使っています。


インフレ率とは?──経済の体温計

では、その“ふくらみ具合”をどう測るのか?
それが、インフレ率という数字です。


💡 インフレ率とは?
去年と比べて、物価がどれくらい上がったか?をパーセントで示す数字のことです。

たとえば――

去年まで100円だったパンが、今年は110円になったとします。
このときのインフレ率は「+10%」。

逆に、90円になっていたら「−10%」、つまりデフレ(デフレーション)(=値下がり)という状態です。


コロナ給付金のときは?

2020年、政府が全国民に10万円の給付金を配ったことがありました。
お金はたくさん出回ったのに、インフレ率はどうだったかというと――

ほぼゼロ、またはマイナス(=デフレ)でした。

つまりそのときは、経済が冷えきっていたということ。
お金を出しても、値段が上がるほどの需要(=買いたい人の多さ)がなかったんですね。


じゃあ、どれくらいが「ちょうどいい」?

多くの国や中央銀行は、インフレ率2%前後を「ちょうどいい目安」としています。
日本銀行も、黒田元総裁の時代から「2%の物価安定目標」を掲げてきました。

これは、

  • 景気が加熱しすぎず、冷えすぎず

  • デフレを避け、ゆるやかに成長する

という状態を目指すためです。


ただし、「見方」はひとつじゃありません

インフレ率が2%、というのはよく使われる基準ですが、
その意味合いやとらえ方は、立場によって少しずつ違います。

  • 一般的な経済学では、「年2%くらいがちょうどいい」とされます。これは、景気が安定し、企業も投資しやすくなると考えられているからです。

  • 日本銀行では、「2%の物価安定目標」を政策の目標として掲げてきました。これは長く続いたデフレを脱却するための目標でもあります。

  • MMT(現代貨幣理論)という考え方では、「インフレ率という数字だけで判断するのではなく、社会の状況や供給の余力など、もっと幅広い“反応”を見て調整していくべきだ」とされます。


MMTってなに?

MMTは「Modern Monetary Theory」の略で、日本語では「現代貨幣理論」と訳されます。
近年、注目されている新しい経済理論のひとつです。

このシリーズでは詳しく扱いませんが、
「ふーん、そういう考え方もあるんだな」くらいで十分です。


では、今の日本はどうなのか?

ここが少しややこしいところです。

ふつうなら、インフレが進んでいる=経済が加熱しているサイン。
でも、今の日本や世界で起きているインフレは、ちょっと違う理由でも起きています。


今は「コストプッシュ・インフレ」である

たとえば、

  • 輸入している小麦や原油の価格が上がった

  • 電気代やガス代が高くなった

  • 海外からの部品や材料が届きにくくなった

こんなふうに、モノを作ったり、運んだりするのにかかる費用が増えたことで、商品そのものの値段も上がってしまう――
これが「コストプッシュ・インフレ」と呼ばれる現象です。

つまり、「みんながたくさん買いたがっているから値段が上がる」のではなく、
「作るほう・届けるほうのコストが高くなったから、やむなく値上がってしまう」というタイプのインフレです。


次回からは、「インフレの原因」をもっと詳しく見ていきます

インフレには、大きく2つのタイプがあります。

  1. ディマンドプル・インフレ(需要主導型)

  2. コストプッシュ・インフレ(供給コスト型)

次回はこのうち、まず「ディマンドプル・インフレ」から。
みんなが“買いたがる(=需要)”ことで起こるインフレって、どういう仕組みなんでしょうか?
次回もやさしく解説していきます。


📚 このシリーズでは、「お金の仕組み」をできるだけわかりやすく伝えています。
最初から読みたい方は、マガジンの一覧からどうぞ。


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