【通貨の価値・後編】外野がざわついても、「仙道がいるチーム」はそう簡単に負けない──外為の“美人投票”が本気で効く前の、供給力の話
0|前回のつづき:美人投票をスラムダンクで考える
前回の note
前回は、
東湖さんの長文コメントをきっかけに、
1階=通貨制度・供給力
2階=国内購買力
3階=為替レート
という3つのレイヤーで「通貨の価値」を見てみる、
という話を書きました。
今回は、その「続き」です。
とくにコメントの中で印象に残ったのが、
3階=
「外為市場では、通貨が“美人投票”的な
アセットとして扱われる」
という部分でした。
この「美人投票」というイメージを、
マンガ『スラムダンク』の世界に一度持ち込んで、
3階=
「外野の人気投票(美人投票)が、
本気で効きはじめるのはどんなときか?」
を、1階=供給力レイヤーの土台が
どうなっているか、という視点から
見直してみる回です。
補足:今回の記事の前提
なお、今回の話は、1階部分が、
① 自国通貨で国債を発行できること
② 変動相場制であること
③ モノやサービスを国内で生み出す
「供給力」があること
という「3つの条件」を満たしている国を
前提にしています。
1|「それでも仙道なら…」って、美人投票のこと?
「美人投票としての評価ゲーム」って、
感覚的にはこういうことだと思います。
「それでも仙道なら…」
「仙道ならきっと、なんとかしてくれる」
という“気分”に、
みんながお金を乗せてくる状態。
スラムダンクをあまり知らない方向けに
一行だけ説明すると、
仙道彰=陵南高校バスケ部のエース
どんな劣勢でも、「いや、仙道いるし…」と
期待されてしまう人
です。
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観客や解説が、コートの仙道を見ながら
「今日の仙道、ヤバいな」
「これ終盤でひっくり返すやつでしょ」
と勝手に盛り上がって、
「仙道のチーム、勝つ方にベットしとこ」
と賭けを始める。
これが、コメントにあった
外為市場でのお金の売り買い
期待と不安がごちゃまぜになった“美人投票”
のスポーツ版イメージかなと思います。
で、ここからが私の
「でもそのまえに前提があるよね?」
というポイントで、
チームがほんとうに強ければ、
観客がどれだけガヤガヤ言おうが、
どこにどれだけベットしようが、
コート上の「勝ち負け」そのものには
ほとんど影響しない
んですよね。
仙道がちゃんと機能していて、
点を取る能力があって、
魚住も福田も池上も
それなりに良いコンディションなら、
解説がネガティブでも
オッズが不利でも
試合は淡々と“実力どおり”に進みます。
通貨の世界で言えば、
そもそも自分のチームが
しっかりしているあいだは、
外野がどれだけざわついても、
人気投票のノイズだけで
本質はそう簡単にはひっくり返らない
という感覚があります。
じゃあ、その人気投票が
試合の流れを本気で変え始めるのは
どんなときか。
そこで出てくるのが、
「供給力」というキーワードです。
2|陵南メンバー=供給力チーム、が痩せてくるとき
さっきまでの話をまとめると、
「それでも仙道なら…」と思える
=「このチームなら、まだ点を取りに行ける」
と信じられる=ざっくり言えば「供給力がある」状態
です。
ここでいう供給力は、
この国が、モノやサービスを
ちゃんと作って、回し続ける力
くらいの意味で使っています。

ただ当然ですが、
仙道ひとりがどれだけすごくても、
試合には勝てません。
ちゃんと魚住も福田も池上もいるからこそ、
「仙道なら、なんとかしてくれる」
が、現実味を持つわけですよね。
そこで、陵南メンバーを
こんなふうに「供給力チーム」に
見立ててみます。
仙道(国の主役=「国民一人ひとり」)
→ 国民一人ひとりの働く力・工夫する力魚住(ゴール下でどっしり)
→ インフラ、エネルギー自給力、食料自給力など「国の根幹」福田(流れを変えるスコアラー)
→ 新産業・研究開発・技術投資など「将来の伸びしろ」池上(地味だけど効くディフェンス)
→ 安全保障・防衛、運輸・交通、治安といった「守る力」
……本当は、ボール運びとゲームメイクを
支える越野みたいな存在
(金融システムや行政のオペレーション)も
いるんですが、細かくなりすぎるので
今日はざっくりここまでにしておきます。
チームの総合力があってこそ、はじめて
「このチームなら、まだ勝てるかも」
と思える。ここが痩せてくるときに、
さっきの「仙道人気投票」が
急に効いてくる——そんなイメージです。
今の日本を、ちょっとブラックにたとえると、
魚住=4ファウル気味
(エネルギー・食料・インフラがギリギリ)福田=ほぼ無期限謹慎
(将来への投資が削られて、新産業が育たない)池上=フル出場でヘロヘロ
(安全保障・物流・現場が疲弊気味)仙道=残業と実質賃金カットで
パフォーマンス落ちてきている
みたいな状態になりつつあるようにも
見えます。

こうなってくると、さっきの
「仙道人気投票」がじわじわと本気で
効いてきます。
チームが強いとき:
外野のざわめきは、ほぼノイズ
チームがボロボロのとき:
外野のざわめきが不安を増幅し、
試合展開そのものを揺らし始める
通貨で言えば、
1階部分:
エネルギー・食料・インフラ・安全保障、
そして国民の暮らしという供給力の土台が
痩せてきたときこそ、
3階部分:
外為市場・評価ゲームに
本気で振り回される条件が整ってしまう。
という感じです。
だから私は、「美人投票」論を
“前提が崩れたあとの話” として受け取りました。
さっきの1階部分の「3つの条件」で言えば、
今回は、そのうちの
③=供給力が「痩せてきてしまったケース」
を、「仙道が本気で機能しなくなった
陵南チーム」という例えで話しています。
3|市場の信認より、先に太らせたいもの
最後に、ニュースや解説でよく聞く
「通貨の信認」という言葉を、
ラフに一行だけ定義しておきます。
ここでの「通貨の信認」は、
「この国の通貨なら、
そう簡単には紙くずにならないだろう」と
内外からそれなりに信用されている状態
くらいの意味で使っています。
市場の評価やレート・格付けを、
まったく無視していいとは思っていません。
「スコアボード側のレイヤー」は、
たしかに現実に存在する場面もあります。
ただ、そのうえで
私が土台としていちばん見たいのは、
仙道がちゃんとコートに立てているか
魚住・福田・池上ふくめ、
チーム全体で自力で点を取りに行けるか
つまり、
自国の供給力がどれだけ健全に
保たれているか
という点です。
だから私は、財政の話になるときも、
「市場に怒られないように」より先に、
仙道と陵南メンバーを大切に育てる積極財政
(国民もエネルギーも食料もインフラも)を
ちゃんとやってほしい
と思う側にいます。
外為市場・評価ゲームというスコアボードを
否定したいわけではなくて、
その数字がどれだけ当てになるのかも、
結局はコートの中で走る
「仙道たちのコンディション(=供給力)
次第じゃない?」
という感覚で見ている、というだけです。
通貨や財政が本当にピンチなのかどうかを
考えるとき、
私はいきなり「信認ガー」と叫ぶ前に、
「それでも仙道なら、なんとかしてくれる」と
まだ言えるチームなのか?
と一度問い直してみたい。
その問いを一回はさんでから見ると、
「通貨の信認」という言葉の中身が、
少しだけ具体的に見えてくる気がしています。
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