一部公開|『緩和ケアにやりがいなんて、あるんですか?』(金原出版) 断章「暗く見えるけど、実際は色がないだけ」
2026年6月12日の記事に続き、
『緩和ケアにやりがいなんて、あるんですか?』(金原出版)
の一部を公開いたします。
今回は、
断章「暗く見えるけど、実際は色がないだけ」です。
学生時代——
私は一時、深い闇の中にいました。
毎日が不安で、絶望の底に沈んでいました。
出口がないように思っていました。
そんなある夜、ひとつの出来事がありました。
それは、ただの気分や思考ではありませんでした。
闇や絶望が想念ではなく、身体で直に感じられるものとして確かにそこにありました。
けれど、闇や絶望だけではない、何ものかもあったのかもしれません。
怖くもあり、不思議でもある体験でした。
今回公開するのは、その夜の一瞬を捉えた断章です。
振り返ってみると、それは私の医師としての来し方、いや、人生そのものの原点と言える出来事でした。
抽象的な文章です。
ただ、説明しようとすると、損なわれてしまうものがある気もして…
難しい、ですね。
ひとまずここに、置いておきます。

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【断章】 暗く見えるけど、実際は色がないだけ
あの日。
あの瞬間。
あの場所で見たもの。
わたしの足を、両足をつかんでいたもの。
つかんで強く揺さぶっていたもの。
自分の恐怖心。
それもあったのかもしれない。
いや、恐怖心は、
自分の外側にあった。
自分の内側には感じなかった。
気づくとわたしは、
下とつながっていた。
明らかに存在した何か。
床下から、
いや地底から、
突如現れた黒いもの。
現れたのではない。
もともとつながっていたのかもしれない。
気づかなかっただけ、
見えなかっただけかもしれない。
そう、それは足音を立てて、
徐々に迫ってきたのではない。
すでにそこにいた。
両足をしっかりと握っていた。
すさまじい力で。
それを知らなかった。
気づいていなかっただけ。
(つづく)
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『緩和ケアにやりがいなんて、あるんですか?』(金原出版)
2026年6月24日発売予定です。
ご興味をお持ちいただけましたら嬉しいです。


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