【第一話】アサシン・スパイダー【漫画原作】
あらすじ
西暦20XX年。突如として世界中に出現した人を喰らう巨大クモ『アラクネ』の脅威に人類は恐怖していた。人類はアラクネに対抗するため国家組織『WASP』を結成。日々アラクネと戦いを繰り広げていた。
ある日、町の交番に勤務する新人警察官、芥川紡(あくたがわつむぐ)は、アラクネに襲われていたWASP研究員の女性、阿黒真宵(あぐろまよい)を助け、その際に瀕死の重傷を負ってしまう。紡の命を救うため、真宵は一か八か研究中の新手術を紡に対して行う。なんとか一命を取り留めた紡だったが、引き換えに『アゴダチグモ』の能力と肉体を得てしまう。『クモ人間』となった紡は、人類とアラクネの戦いに身を投じてゆく――。
補足:キャラクター設定
【主人公】芥川 紡(あくたがわ つむぐ)19歳
町の交番に勤務する新人警察官。幼い頃アラクネに両親を殺され、孤児院で幼少期を過ごした過去がある。
元々はWASP入隊希望だったが、戦闘の才能がなく試験に落ち、仕方なく警察官への道を選んだ。アラクネから人々を守りたい、という思いを抱いている。単純な性格だが、正義感は強い。
【ライバル】蜂矢 解(はちや かい) 19歳
WASPに所属する新人隊員。その戦闘能力は非常に高く、時期隊長候補と噂されている。
紡の幼馴染で、紡と同じくアラクネに両親を殺されており、孤児院で育った。アラクネに対しては強い憎しみを抱いており、『クモ人間』となった主人公と対立していく。常に冷静でつかみどころのない性格。
【ヒロイン1】雨宮 茜(あめみや あかね)19歳
紡の勤務する交番の管轄内にある電気屋で働いている、紡と解の幼馴染。紡と解とは孤児院で出会った。優しくしっかり者な性格。夢破れた紡のことを気にかけている。
【ヒロイン2】阿黒 真宵(あぐろ まよい)25歳
WASPに所属する研究者。アラクネに対抗できる『生体兵器』の研究をしており、紡に手術を行い『クモ人間』へと変えた張本人。基本的には常識人だが、自身の研究に強い自信と執着を持つ、マッドサイエンティストな一面も併せ持つ。
補足:みどころ
1 『クモ人間』になってしまった主人公の今後
主人公は手術によって『クモ人間』になってしまいます。人間ではなくなってしまった主人公の葛藤と、周囲のキャラクターとの関係性の変化が見どころになります。また、最終的に元に戻れるのか、どのような最期を迎えるのか、とハラハラできると思います。
2 「負け犬」から成り上がる主人公の爽快さ
主人公は過去にWASPの試験に落ち、望まない人生を歩んでいました。しかし、クモの力を使いこなせるようになったことによってWASP隊員となり、さらに物語が進むにつれて隊長へと昇格していきます。負け犬だった主人公が活躍を重ねて成り上がってゆく様子に爽快感を得られると思います。
3 登場する多種多様なクモの能力
物語の途中より、主人公以外にもクモの力を得たキャラクターが多数登場します。巣を作らず、脚力のみに頼って狩りをするアシダカグモや、糸を投げ縄のように振り回して獲物を捕らえるナゲナワグモなど、多種多様なクモの能力を持ったキャラクターの登場に、「次はどんなクモの能力を持ったキャラクターが出るのだろう」とワクワクできると思います。
4 主人公と幼馴染の関係の変化
主人公の幼馴染でありライバルである解は、アラクネに対する強い憎しみを抱いています。そんな解は、クモ人間となった主人公をアラクネとみなして殺そうとします。解と共に戦うことを夢見ていた主人公は、そんな解の行動にショックを受けます。二人は殺し合う運命なのか、それとも和解できる日は来るのか、ハラハラできると思います。
5 個性的なキャラクターたち
主人公は物語の途中から、アラクネと戦う組織『WASP』の隊員となります。そこで出会う先輩や同期はみな非常に癖の強い個性豊かなキャラクターたちになります。そんな癖の強いメンバーと主人公の絡みは見どころの一つになると思います。
6 敵の正体を探るミステリー要素
物語の途中、人を襲う巨大クモである『アラクネ』は、人為的に生み出された存在であったことが明らかになります。誰がなんのために生み出したのか? なぜ人を襲わせるのか? といった謎に迫るミステリー要素も物語の魅力になると思います。
本文 一話シナリオ
ナレーション『その生物は、人類よりも遙かに長い歴史を持つ』
ナレーション『起源は約3億8千万年前。あらゆる環境に適応し、進化を遂げ、約45000種以上という非常に多様な生物群を形成することに成功した』
ナレーション『そして、彼等の年間捕食量は「地球上の全人類の体重より重い」とされる。つまり、もし彼等が一斉に人間を襲い始めたとしたのなら、一年足らずで全人類は食い尽くされるだろう』
ナレーション『なんのことを言っているかわかっただろうか? 答えは――』
ナレーション『蜘蛛だ』
・高層ビルの間に立つ体長30メートルほどの巨大なクモと、地上を逃げ惑う人々のカット。
〇現代・住宅街
・住宅街を自転車でパトロールしている新人警察官の主人公、芥川紡(19)。
・道で四人ほどの小学生がたむろしているのを見つける紡。
紡「なにしてんだ。早く帰りなさい」
小学生A「あ、お巡りのにーちゃん」
・木に巣を張っている小さなクモを指差す小学生A。
小学生A「見たことないクモがいたから『アラクネ』の仲間かもと思って」
紡「なに?」
・目を細めてクモを見る紡。
紡「ありゃただのオニグモだな。夜行性で夜にしか巣を張らないから見かけないだけで、アラクネじゃねぇよ」
・つまらなそうに肩を落とす小学生たち。
小学生A「なーんだ」
小学生B「お巡りのにーちゃん、詳しいんだね」
・どこか気まずそうに頬をかく紡。
紡「……まぁ、昔ちょっと調べてた時期があったからな」
・「バイバーイ」と手を振る小学生たち。再び自転車で走り出す紡。
紡のN『「アラクネ」と呼ばれる巨大なクモのバケモンが突如世界中に出現するようになったのは、俺が生まれる少し前の話だ』
紡のN『異常気象による突然変異。生物実験によるバイオハザード。宇宙人の攻撃。いくつもの仮説が唱えられたが、その答えは今も解明されていない』
・町内をパトロールしながら、困っている人を見つけては助けている紡。
紡のN『一つ確実なことがあったとすれば、アラクネは人類にとって「天敵」と呼ぶべき存在であるということだった』
紡のN『数えきれないほどの人間がアラクネの犠牲になった。ただ、人類は黙って食い尽くされるのを待っているほど大人しくもなかった』
・電気屋の前で自転車を止める紡。店の前に並べられたテレビに映る映像に目を向ける。
ニュースキャスター「速報です。昨夜S市に出現が確認された中型アラクネですが、『WASP』隊員によって無事討伐された模様です」
・映像には特殊なスーツに身を包んだ集団の姿が映る。手には特殊な銃や剣などの武器を持っている。
紡のN『――「WASP」。正式名称「World Arachne Security Police(世界アラクネ警備警察)」。アラクネの脅威に対抗するため結成された国際組織。その活躍によって、アラクネによる被害は大幅に減少した』
・映像の中で、集まった人々に声援を贈られているWASPの隊員たち。
紡のN『アラクネから命懸けで人々を守る「WASP」の隊員たちは、今や「ヒーロー」とも呼べる存在だ』
???「紡っ」
・背後から名前を呼ばれて振り返る紡。電気屋のエプロンをつけた幼馴染の女性、雨宮茜(19)が立っている。
紡「よぉ、茜」
茜「警察官が仕事サボってテレビ見てていいの?」
・くすくす笑いながら言う茜に、少しムッとする紡。
紡「サボってねーよ。アラクネの情報を仕入れるのも大切な仕事――」
・そのとき、テレビの映像に整った顔立ちの青年が映る。
茜「! 解!」
紡「!」
・それは二人の幼馴染で、現在WASPの隊員として働いている蜂矢解(19)だった。リポーターにインタビューを受けている解。
リポーター「WASP第8支部隊の蜂矢隊員にインタビューしてみたいと思います! 弱冠19歳という若さにして、その戦闘能力は部隊内でもトップクラス! 早くも次期隊長候補と言われているスーパールーキーです!」
・リポーターの質問に無表情で受け答えする解。
解「皆さんもご存知の通り、近年アラクネの出現頻度はますます増加傾向にあります。――ですが安心してください」
・真っ直ぐにカメラを見つめる解。
解「――アラクネは、必ず、俺が一匹残らず倒します」
茜「解……」
紡「………………」
・映像を見つめたまま何も言わない紡。紡の脳裏に昔の思い出が蘇る。
〇(回想)紡の故郷の町
・幼い頃の紡、解、茜(三人とも小学生くらい)の三人が、小高い丘の上から町を見下ろしている。町はアラクネの被害によって多くの建物が崩れ、至る所で炎が上がっている。
紡「……全部壊れちまったな。孤児院も、学校も」
解「……うん」
・膝を抱えて座りこみ、ポロポロと涙を流している茜。そんな茜の背中を後ろから優しくさする解。その目にも涙が浮かんでいる。
・そんな二人の様子を見て、何かを決心したような顔の紡。
紡「……決めた」
・立ち上がる紡。
紡「俺、WASPに入る」
・町を見下ろしながらそう告げる紡。驚いたように紡を見る解と茜。
紡「WASPに入って、隊長になって、誰よりも強くなって、俺がお前らを守ってやるからよ」
・振り返ってニッと笑う紡。
紡「だから、もう泣くんじゃねぇ」
・そのとき、解が慌てたように立ち上がる。
解「ぼ、ぼくも!」
・解の鼻は赤くなっており、目にはまだ涙が浮かんでいる。
解「ぼくも……WASPに入る……よ。だ、誰よりも……強くなってみせる!!」
・驚いた表情で解を見る紡と茜。それから解に向かって笑いかけ、拳を突き出す紡。
紡「――じゃあ、勝負だな」
・ぼろぼろの町を背景に、拳を突き合わせる紡と解。
・(回想終わり)
〇元の町・電気屋の前
紡(解は約束を守った。俺は……)
〇紡がWASPの試験を受け、落ちるまでの一連の流れをカットごとダイジェストで見せる
・机に向かってクモの知識を勉強している紡。
・ジャージ姿で河川敷を走っている紡。
・試験会場でアラクネを模したロボットの攻撃で地面を転がっている紡。
・「不合格」と書かれた紙を握る手のアップ。
紡(俺には、解みたいな戦闘の才能は無かった。詰め込んだクモの知識だけじゃ、WASP隊員にはなれなかった……)
・暗い顔のまま無言でテレビを見つめている紡。
・ぱーん! と紡の背中を手のひらで叩く茜。びっくりして茜を見る紡。
茜「――警察官も、人々を守る立派な仕事、でしょ?」
・優しく紡に微笑みかける茜。
茜「頼りにしてるよ。紡」
紡「茜……」
〇住宅街(夕)
・夕暮れの中、住宅街を自転車を押して歩いている紡。「頼りにしてる」と言ってくれた茜の顔を思い出す。
紡(……WASPの入隊試験って、何歳まで受けられるんだっけ……)
・ふと、足を止める紡。
紡「ん?」
・15階建てのマンション二棟に挟まれた道路。その中央に車が停車していて、運転席側のフロントドアが開いている。
紡「……路上駐車か?」
・車に近づき運転席を見る紡。が、そこには誰もいない。
・そのとき、ポタタ、と紡の肩に何かの液体が垂れる。
紡「?」
・上を見上げる紡。
・15階の高さの位置に、巨大なクモの巣がある(マンションとマンションの間に張られている)。その中央には全長4メートルほど(小型車程度)のクモがおり、人間をグチャグチャと喰っている。落ちてきた液体はその人間の血液だった。
紡(――アラクネ!?)
・次の瞬間、アラクネが腹部の先から糸を出し、真下の紡の元へ落下するようにして襲ってくる。
・咄嗟に車の運転席へと逃げ込む紡。ドアを閉めると同時にアラクネの前脚が車を挟み込む。ミシミシと音を立てて歪む車体。
紡「うおッ……!?」
ナレーション『「クモの糸」は自然界に存在する素材の中で「最強」と言われる夢の素材である』
・アラクネはそのまま車を持ち上げ、巣から垂れ下がった糸一本を後脚で伝い巣へと車を引っ張り上げていく。
ナレーション『重さあたりの強靭性は鋼鉄の340倍、炭素繊維の15倍と言われ、これは防弾チョッキなどに使われる「ケブラー繊維」を超える。理論上、直径1センチの太さのクモの糸であれば、「飛行機を止めることさえ可能」なのだ』
・完全に巣へと引っ張り上げられてしまう車。
紡「ヤベェ……」
・フロントガラス越しにアラクネの複眼と目が合う。慌てて後部座席へと逃れようとする紡。そのとき、後部座席に隠れるようにして女性がいることに気がつく。
紡「なッ……!?」
女性「……」
紡(民間人!? まさか、運転手が襲われたのを見て隠れてたのか!?)
・車の正面から、アラクネが前脚でミシミシと車を締め付ける。凹んでいく車体。
・絶望的な表情を浮かべる紡。振り返ったところで、同じく絶望的な表情の女性と目が合う。
・その瞬間、紡の脳裏に「頼りにしてるよ」という茜の言葉がフラッシュバックする。
紡「――ッ!!」
・自分を落ち着かせるように、目を閉じる紡。
紡(――思い出せ!! あれだけ勉強したクモの知識だろ!!)
・一コマ過去回想 過去にWASP入隊試験を受けるため、必死にクモの勉強をしているカット。
・覚悟を決めたように、カッと目を見開く紡。アラクネへと向き直る。
紡(――体長は約4メートル。タイプとしては『小型』に分類される。巣を張ってることから徘徊性ではなく造網性!)
紡「――おいアンタ! トランクのドアから逃げろ! 巣の縦糸を伝ってマンションに渡れ!」
女性「……!」
紡「クモの巣ってのは横糸にしか粘着性がねぇんだ! だから縦糸を移動するクモ自身は自分の巣に引っ掛からねぇ!」
・円状のクモの巣を正面から見たカット(横糸と縦糸を別の色でハイライト)。
女性「待て、君はどうするつもりだ?」
・車のバックドアを開けた女性が振り返って紡に尋ねる。
・腰から拳銃を抜いてフロントガラス越しにアラクネへと突きつける紡。
紡「時間を稼ぐ! いいからさっさと行けえッ!!」
・拳銃を発砲する紡。ガラスを突き抜けた弾丸がアラクネの頭胸部に命中し穴を空ける。
アラクネ「ギシャァァアアアアアア!!!」
・悲鳴を上げ、俊敏な動きで車体の横へと回り込むアラクネ。
紡(――速い!!)
・巣の上を高速で移動するアラクネに狙いをつけられない紡。そのまま車体の横から運転席にタックルを仕掛けてくるアラクネ。大きく歪む車体。ブチブチッと音を立てて、糸から外れた車がひっくり返る。
・割れた窓から車外へ脱出しようとする紡。窓から上半身を出したところで、ひっくり返った車の上に乗ったアラクネがじっと紡を見ている。
紡「くっ……!」
・横たわったまま拳銃を構えて発砲する紡。が、弾丸は車体に命中する。角度的に車が邪魔になり、アラクネを狙えない。
・次の瞬間、ドスッ、という音と共にアラクネの鋭い前脚が紡の脇腹を貫く。
紡「が……はッ……!!!」
・目を見開き、苦しそうに呻き声を上げる紡。そのまま動かなくなってしまう。
・紡に興味を失い、背を向けるアラクネ。そこで、巣の縦糸を伝ってマンションの屋上へと辿り着いている女性に気がつく。
・狙いを女性へと変更するアラクネ。女性を襲いに行こうとしたそのとき。
紡「……待ちやがれ」
・背後から聞こえた声にアラクネが振り返る。
・車から這い出てきて、巣の上に立っている紡。その表情は険しく、顔は傷だらけ、刺された脇腹部分の制服は血で染まっている。
紡「……終われねーんだよ……」
・一コマ過去回想 幼い茜と解の泣いている顔のカット。
紡「こんなところで……」
・一コマ過去回想 幼い紡と解が「WASP隊員になる」と約束し拳を突き合わせているカット。
紡「――終われるかよォォォ!!」
・拳を握りしめ、正面からアラクネに殴りかかる紡。
ベチッ
・拳が頭胸部に命中するも、微動だにしないアラクネ。どう見ても全くダメージがない。
紡「……ちくしょう……」
・ふらつき、そのまま巣の上で仰向けに倒れる紡。脇腹からドク……ドク……と出血の音。
・再び紡への興味を失い、女性を襲うため紡に背を向けるアラクネ。
紡「やっぱ……ダメか……でもまぁ……時間稼ぎは……十分か……」
・そこでアラクネが、自分の前脚がわずかに濡れていることに気がつく。脚だけでなく、車周辺の糸がなぜか濡れている。
紡「2回目……は……オマエを狙って……撃ったんじゃねェ……」
・車に視線を向けるアラクネ。車のガソリンタンク部分に空いた銃痕から、ポタポタとガソリンが垂れ糸を伝って広がっている。
紡「ゲホッ! 知ってるか……デカブツ……」
・倒れたまま、拳銃の銃口をガソリンタンクに向ける紡。銃には一発だけ弾丸が残っている。
紡「クモの糸は……タンパク質……火には弱いらしいぜ」
アラクネ「!!」
・ガソリンタンクに向けて弾丸が発射される。ボォン! と爆発炎上する車。炎が巣の糸を焼き切り、15階の高さから落下していくアラクネと紡。
アラクネ「キシャアアアア!!!!」
・ドチュ! と嫌な音を立ててアスファルトの地面に叩きつけられるアラクネ。その上に落下し弾き飛ばされる紡。路上を転がり、そのまま動かなくなる。
・シン……と、静まりかえる路上。
・そこに、マンションの屋上から非常階段を使って女性が降りてくる。
・道路に降りてきた女性は、動かなくなったアラクネを見て周囲を見渡す。アラクネから数メートル離れたところに紡が倒れているのを発見する。
・紡に駆け寄り、手首に触れて脈を測ると、トクン……トクン……と音がする。
女性「!! アラクネの体がクッションになったのか……! まだ息がある!」
・次の瞬間、死んだと思っていたボロボロのアラクネが女性の背後から襲ってくる。
アラクネ「クァアァァアアアアアァア!!!」
女性「!!」
・女性がアラクネに喰われそうになった瞬間、無数の発砲音と同時に、体中を穴だらけにするアラクネ。
・ドチャ、と地面に倒れ伏し、今度こそ絶命するアラクネ。女性は驚いたような表情。
???「標的鎮圧完了!」
・声と共に、特殊スーツに身を包み、武器を手にしたWASPの部隊十数人が現れる。
隊員A「油断するな! まだ周囲にいるかもしれない!」
隊員B「タンカだ! 怪我人がいるぞ!」
・女性に話しかけるWASPの隊員。
隊員A「大丈夫ですか? どこか怪我は?」
・倒れたまま動かない紡の元にも別の隊員が駆けつける。
隊員B「……こっちは手遅れだ。内臓を激しく損傷してる」
女性「彼を私の研究室に運べ。まだ助けられるかもしれない」
隊員B「え?」
・振り返って女性の顔を見た隊員Bが驚いたような表情を浮かべる。
隊員B「ど、ドクター阿黒!! なぜあなたがここに!?」
ナレーション『WASP研究チーム バイオテクノロジー部門最高責任者 阿黒真宵(25)』
真宵「研究所へ戻るところをアラクネに襲われた。彼がいなければ――私は死んでいた」
○WASPの研究施設・内部
・担架に乗せられたまま、廊下を運ばれていく瀕死の紡。
・場面は手術室へ。手術台に寝かされる意識の無い紡。その周りを白衣の医師たちが忙しなく動き回っている。指揮をとっているのは白衣を着てマスクをつけた真宵。
真宵「状態は!?」
医師A「ダメです! どんどん脈が落ちていきます!」
真宵「くっ……!」
医師B「ドクター阿黒。ここまでです」
・医師が諦めの言葉を口にする中、なにかを覚悟したような表情の真宵。
真宵「――『SM(スパイダーモデル)- No.3』の準備をしろ。これより『スパイバー手術』に移行する」
・ザワッ、とどよめく手術室。
医師A「ドクター阿黒! 無茶です! No.3には誰も適合できません! 確実に死にます!!」
真宵「このまま何もしなければどっちにせよ彼は死ぬ。アラクネに殺されるか、私に殺されるかだ」
・静止する医師の声を無視して、運ばれてきた薬品を紡の腕に注射しようとする真宵。
・その腕をガシッと医師Bが掴む。鋭い目つきで見返す真宵。
真宵「……どうせ失敗するなら、やるだけ無駄だと。君もそう言うのか?」
・真宵の目をまっすぐ見つめ返す医師B。
医師B「違います。ドクター阿黒。本当に問題なのは、万が一成功した場合です」
医師B「彼はもしかしたら――死ぬよりも過酷な運命を迎えるかもしれない!!」
・わずかに躊躇うような仕草を見せる真宵。その顔を汗が伝う。
真宵「………………!!」
・覚悟を固めたように医師Bの目を見返す真宵。そして大声で告げる。
真宵「――No.3、準備! 全ての責任は私が負う!!」
・諦めたように目を閉じる医師B。紡の腕に注射針が刺される。
・紡の体内で、極小の糸状物質が損傷した血管や臓器を形造り、修復していくカット。
ーー 時間経過 ーー
・まだ手術は続いている。手術台の上で目を閉じたままの紡。
・そのとき、紡の頭の中に声が響く。
謎の声(――。――せ)
紡(……? 誰だ?)
謎の声(――せ! ――ろせ!!)
紡(誰だ。何を言っている?)
謎の声(――ころせ!! 殺せ!!)
紡(殺せ? 誰を?)
紡(――ああ。そうか。そうだった)
謎の声(殺せ! クモを殺せ!!)
紡(そうだ。俺は、殺さなくちゃ――)
紡&謎の声(一匹残らず――クモを、殺せ!!)
・ドクン! という心音と共に両目を見開く紡。そのうち右目だけが、まるでクモの複眼のように黒く染まっている。
続く
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