「はい」の二文字が、こんなに難しい。
メモ帳を拾って、「はい」と渡す。
たったそれだけの場面が、こんなにも難しい。
小説を書く人は、やっぱりすごい。
マンガなら、一コマの沈黙で伝わる。
でも小説は、その沈黙を言葉で書かなければならない。
それが、思った以上に難しい。
とくこさんが小説を書くのに、このシーンの描写、書くならどうする?という記事を書いていて。それにただのはるさんとしーなさんが「わたしならこう書く」を書いていて。
ああ、勉強になるなあと思いました!
私も小説を書いてみたい。
でも、いざ書こうとすると、すぐに陳腐な言葉になってしまう。
気持ちはあるのに、うまく“場面”にならない。
その難しさを、こういうやりとりを見るたびに痛感します。
とくこさんの出してくださったシーンはこちら。
沙絵(主人公)の大事なメモ帳を、遠藤(いつも笑顔の男)が拾って渡す場面。遠藤は、このメモ帳、なんかあるなって思ってるけど何も言わない。
マンガなら、きっと“無言のコマ”で成立する。
でも小説は、その沈黙のあいだに流れた気持ちまで、言葉で拾わなければならない。
それが、難しい。
でも、だからこそ面白いのかもしれません。
少女漫画っぽい雰囲気で、私も書いてみました。
遠藤が拾い上げたメモ帳を見た瞬間、胸がどくんと鳴った。
それ、私の――。
「はい」
差し出されたメモ帳の向こうで、遠藤がいつものように笑う。
やさしくて、なんでもないみたいな顔。
……なのに、今日はその笑顔が少しだけこわい。
私はすぐに手を伸ばせなかった。
たったそれだけのことなのに、妙に時間が長く感じる。
なにか、言われるのかなと思った。
見た、とか。
それなに、って。
いつもの軽い調子で、さらっと踏み込まれるのかもしれないって。
でも、遠藤は何も言わなかった。
ただ、黙ったままメモ帳を差し出している。
その指先が近くて、うまく息ができない。
「……ありがと」
やっとそれだけ言って受け取ると、ほんの一瞬、指が触れそうになった。
それだけで、心臓がうるさくなる。
遠藤は何も言わない。
何も聞かない。
ただ、いつもの笑顔で私を見ている。
――なに、それ。
聞かないほうが、ずるい。
そう思ったのに、私のほうも何も言えなかった。
書いてみて思ったのは、
小説って、起きた出来事を書くというより、
その一瞬のあいだに揺れた気持ちを書くものなんだなということでした。
メモ帳を拾って渡す。
ただそれだけなのに、そこに視線があって、沈黙があって、ためらいがあって、心臓の音がある。
そういうものを言葉にできる人は、本当にすごい。
私はまだ、すぐに“それっぽい言葉”に寄ってしまうし、
あとから読むと「うーん、ちょっと照れるな……」と思ってしまうのですが、
それでも、こうして書いてみることでしか見えない難しさがあるのだと思いました。
読むのが好き。
書くのも好き。
でも、“小説を書く”は、その二つとはまた少し違う筋肉がいるのかもしれません。
だからこそ、勉強になるし、面白い。
そして、小説を書く人ってすごいなあと、あらためて思います。
とくこさん、大切な一場面をお借りしました!
こうして「書いてみたい」と思える場をくださって、感謝申し上げます!!
お読みいただき、ありがとうございます💖
喜木 拝

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