#2|給湯室のチェックリスト②高望みしてる?『幸せの相場』を勝手に語る
給湯室のチェックリスト
昼休みの給湯室。
今日も3人が、気になった話題を勝手に語り始める。
A子(24):SNSで見たら、とりあえず信じる。
B子(33):「わかる!」が口ぐせの愛され姉さん。
C子(43):経験豊富な頼れる先輩。でも推しの前では乙女。
(給湯室のドアがガラガラッと開く。マイボトルに氷がカランと落ちる音)
B子:ねえちょっと読んだ!? 『名前のないチェックリスト』第2話!
A子:読みました読みました! 結婚式の二次会で「たくや」とまさかの再会! ほら見てください! たくや、プロフィール盛ってなかった! ガチの優良物件ですよ!
B子:そこじゃないわよ! 再会した瞬間のたくやの態度見た!? 新郎の同期だからって、りおのこと「サークルの、友達の友達、かな」って爽やかにスルー! マッチングアプリで会ってたこと、全力で無かったことにしてんの!
A子:いや、それは大人のマナーですよ。職場の同期がいる前で「あ、この子アプリで一回会ってボツにした子」なんて言えるわけないじゃないですか。たくやはそこもスマートに配慮したんです!
B子:配慮っていうか、体裁(ていさい)でしょ! あゆみちゃんが「ハイスペだ!」って速攻食いついてたけど、あゆみちゃん逃げてー! って心の中で叫んだわ。で、その後にさぁ、りおとあゆみちゃんが帰り道に寄った「占い」。あれ、最高にエグくなかった?
A子:あー、年齢外してくるやつ(笑)。
B子:そう! 占い師が「ううむ、30!」とか言って、あゆみちゃんが「当たってる」って喜ぶんだけど、本当は二人とも34歳なの(笑)。もう、あの「あ、もう(良い出会いの年齢)過ぎてますけど」っていう、りおの心の引き際ね! わかりすぎて胃がキリキリしたわ!
C子:(背後から無言で、冷蔵庫のドアを強めに閉める)
A子・B子:ひっ。
C子:……相変わらず視点が浅いわね、二人とも。
B子:あ、C子さん。……また、何か見えてます?
C子:いい? 2話の本質はそこじゃないわ。あの占い師が最後にドヤ顔で差し出してきたもの、何だった?
A子:えっと……大手結婚相談所のパンフレット、ですよね?
C子:そう。5000円払って、手相の代わりに現実の「結婚相談所のパンフ」を握らされる。この資本主義の縮図のような暴力! そしてね、りおが夜、ワンルームでそのパンフを開いた時の、あのリアルな数字よ。
B子:あ……書いてありましたね。『30代男性の平均年収:494万円』って。
C子:それよ! 1話で「年収1000万のたくや」を見て、2話であゆみが「高収入、高学歴、タワマン!」って叫んだ直後に、現実の『494万円』を突きつけられる。この落差!
A子:あれ、完全に「幸せの相場」に脳をバグらされてますよね。SNSのインフルエンサーとか見てると、年収1000万がスタートラインみたいに錯覚しちゃいますもん。
C子:そうなのよ。世間が勝手に決めた「幸せの相場」に自分の価値観を乗っけちゃうから、みんな迷子になるの。人柄とか相性なんていう、数字にならない一番大事なものが見えなくなる。
人はね、「現実」を見てるんじゃないの。「比較」を見て苦しくなるのよ。
……まあ、私はその相場に一切乗らなかったから、いまだに独身だけどね。
B子:……C子さん、そのセリフ、2話の後に聞くといつもより切れ味が鋭いです……。
C子:でもね、人間だもの。数字にすがりたくなる気持ちもわかるわ。条件を全部手放すなんて、そう簡単にできることじゃない。でもね……。
A子:でも?
C子:私の推しの「レン君」を見てごらんなさいよ!!!身長185cm、職業・魔界のプリンス、年収・国家予算レベル!!! 魔界経済を一人で回してる男!?だけどね、彼が第4話でヒロインの泥団子を一緒に丸め直したとき、魔界の経済効果は「プライスレス」になったのよ!!!
A子:国家予算がプライスレスに(笑)。
C子:これよ!!! 数字で測れない付加価値!!! これが私の!!! 呼吸ができる条件なのよォォォォン!!!(悶絶しながら給湯室の電子レンジに額を押しつける)
B子:先輩! レンジのボタン連打しないでください! お弁当温まっちゃいます!
A子:でも確かに、りおが手帳の『MEMO』欄に条件を書き殴ったあと、深夜のトラックの音が遠くで響くラスト……あれ、めちゃくちゃ続きが気になります。ここからどうやって自分の「本当のチェックリスト」を見つけていくのか。
B子:ね。あゆみちゃんがたくやとどうなるのかも気になるし、相談所のパンフがどう絡んでくるのか……。これ、第3話読みに行こ。
C子:(ハッと我に返り、服のシワを伸ばしながら冷徹なトーンに戻る) ……コホン。いいわ、読んだらまたここで答え合わせよ。
(C子、マイボトルを持ってスタスタと風のように去っていく)
A子:……C子さん、自分の相場は完全にレン君に全ツッパしてますね。
B子:間違いないね(笑)。……さ、私たちもデスク戻ろ。とりあえず今日の「定時退社」っていう譲れない条件、死守しなきゃ。
(二人はコーヒーを手に、足早に給湯室を後にする)
☕ よかったらコメントで教えてください。
占いって信じますか? 当たったことありますか?
私は結婚相談所のパンフレットを渡されたことがあります。
実話です(笑)。
☕ 次の給湯室はこちら
→ 給湯室のチェックリスト③
→給湯室のチェックリスト全収録マガジン
📖 この会話の元になった物語
→『名前のないチェックリスト』第2話
📚 全話まとめて読む
→ 『名前のないチェックリスト』全10話マガジン
🚬非常階段の反応はこちら
27歳・D子、41歳・E介、55歳・F美が
給湯室の会話に毒を吐いてます。
🔜♯1.5|非常階段からのチェックリスト
📚 非常階段シリーズまとめ
→非常階段からチェックリスト全収録マガジン
