#3|給湯室のチェックリスト③減点ばかりしてない?『幸せの相場』を勝手に語る
給湯室のチェックリスト
昼休みの給湯室。
今日も3人が、気になった話題を勝手に語り始める。
A子(24):SNSで見たら、とりあえず信じる。
B子(33):「わかる!」が口ぐせの愛され姉さん。
C子(43):経験豊富な頼れる先輩。でも推しの前では乙女。
(給湯室のドアがガラガラッと開く。換気扇の回る音と、ゴミ箱に何かを勢いよく投げ入れる音が響く)
B子:ねえ、ちょっと読んだ!? 『名前のないチェックリスト』第3話! 私もう、自分の部屋のクローゼット開けられたかと思って、ヒヤッとしたんだけど!
A子:あー、りおが午前1時半に部屋でハッと我に返るやつですね。電気つけっぱなしで寝落ちして、ソファには昨日着たワンピースが掛けっぱなし、机には数日前の雑誌が出しっぱなし。
B子:そうそう! 外ではちゃんとしてるのに、一歩部屋に入ったら完全に生活をサボってるあの感じ! 「わかる〜!」っていうか「私じゃん!」ってなって、持ってたマグカップ落としそうになったわ。
A子:でも、私はそこ、りおちゃんにちょっと厳しすぎじゃない? って思いました。誰にも迷惑かけてないんだから、部屋の中でくらいサボったってよくないですか? むしろ外で完璧に「若くて綺麗な女」をやってるんだから、それだけで十分加点対象ですよ。SNSのストーリーなら、その散らかった部屋すら「エモい日常」でバズりますから。
B子:違うのよ、A子! バズりは関係ないの。「男って自分を棚に上げて値踏みばっかり!」って憤るのに……その直後に自分の部屋の惨状を見て、「……どの口が言ってるんだろう、私」って気づいちゃうのよ。
A子:あー……男たちのシビアな品定めに怒りながら、自分も相手の年収とかタワマンとかを品定めしてたってやつ。
B子:そう! お互いに自分を棚に上げて、足元見てないっていう。あの鏡を突きつけられたような沈黙、マジでリアルすぎて、みぞおちに右ストレート食らった気分。
C子:(背後から無音で入ってきて、マイボトルに水を注ぎながら) ……相変わらず、みぞおちが忙しいわね、B子。
A子・B子:あ、C子さん。
A子:先輩はどう思いました? りお、そこから急に部屋の片付け始めて、急に「部屋片付けたら人生変わる」モード入ってましたよね。それであの相談所のパンフをゴミ箱にポイッですよ?
C子:(フッ、と鼻で笑う) 偉いわねえ、大谷翔平を引き合いに出すあたりが。でもね、いい? 部屋の乱れを整えたくらいで、自分の歪んだ価値観まで整ったと思ったら大間違いよ。
B子:えっ、でも、部屋の空気がゆっくり動き出して、翌朝の光がクリアに見えたって……。
C子:一時的な「丁寧な暮らしハイ」よ。
A子・B子:「丁寧な暮らしハイ」
C子:そんなの。手帳の隅に書き殴った「高収入・高学歴・タワマン」の5つの文字を見て『ひどく虚しい』なんて言ってるけど、じゃあその条件、本当に綺麗さっぱり捨てられるかって言ったら、そう簡単にはいかないのが人間よ。
ま、私はそこで一切の妥協をしなかったから、いまだに独身だけどね。
A子:出た、いつもの「妥協ゼロ独身」宣言。でも、じゃあどうすればいいんですか? パンフを捨てて部屋を片付けたのは、一歩前進じゃないですか?
C子:前進よ。でもね、本当に足元を見るべきなのは、部屋のゴミじゃなくて「自分の魂」よ。
B子:魂……ですか?
C子:(急に目がキラキラの100%乙女モードに切り替わり、声が2オクターブ上がる) いい!? 私の推しの「レン君」を見てごらんなさいよ!!!
A子:はい、第3話でもブレずに来ました(笑)。
C子:身長185cm、職業・魔界のプリンス、年収・国家予算レベル!!!ゴミも幸運も拾う男!!! なのに!!! 第4話でヒロインの泥団子が潰れた時、自分のシルクのマントが泥まみれになるのも構わずに一緒に丸め直したのよ。あの時のレン君、自分の部屋が散らかってるとか、相手が若いかどうかなんて、1ミリも気にしてないの!!!
B子:それは魔界のプリンスだからですよ!
C子:これよ!!! お互いのスペックを見合うんじゃなくて、一緒に泥にまみれる覚悟!!! これが私の!!! 呼吸ができる条件なのよォォォォン!!!(悶絶しながら給湯室のシンクに突っ伏す)
A子:先輩、シンクの水滴、さっき私がお湯こぼしたんで、マントじゃなくて服が濡れます!
B子:はぁ……。でも、りおが最後に、いつもより少しだけ背筋を伸ばして「……よし」って呟いたの、あれはなんかグッときたな。条件に振り回されて息苦しくなってた彼女が、ちょっとだけ自分の足で立ち上がった感じがして。
A子:確かに。手帳に書いたあの「5つの条件」、この先どうするんでしょうね。消しゴムで消すのか、それとも……。
C子:(ハッと我に返り、髪を整えながら冷徹なトーンに戻る) ……フン。どうせまた次の話で、別のモンスターが現れて背筋が曲がるわよ。さ、お茶入ったから戻るわよ。午後イチの会議、私も自分のサボりがバレないように、スマートに背筋伸ばすんだから。
B子:あ、C子さんずるい! 第4話の展開、もう読んだんですか!? 話しくださいよー!
(3人のバタバタした足音が廊下に消えていく)
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「丁寧な暮らしハイ」の経験ありますか?
私は味噌を手作りしてカビさせました。
でも、食べました(笑)。
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27歳・D子、41歳・E介、55歳・F美。
給湯室では語れない本音を語っています。
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