#1|給湯室のチェックリスト①アイロン男子は優良物件?『条件と呼吸』を勝手に語る
給湯室のチェックリスト
昼休みの給湯室。
今日も3人が、気になった話題を勝手に語り始める。
A子(24):SNSで見たら、とりあえず信じる。
B子(33):「わかる!」が口ぐせの愛され姉さん。
C子(43):経験豊富な頼れる先輩。でも推しの前では乙女。
(給湯室。A子がコーヒーを淹れていると、B子が血相を変えて駆け込んでくる)
B子:ねえA子! ちょっと待って、noteの『名前のないチェックリスト』第1話読んだ!? 私もう、たくや無理! 絶対無理!
A子:え? 先輩、私たくや好きですよ?
B子:えぇ!? 嘘でしょ!? 水浸しになった文庫本をスルーして、自分のジャケットの袖口いそいそと叩いてた男よ!?
A子:だって、ハンカチにピシッとアイロンかけてる男性ですよ? 自立してて生活力高そうじゃないですか! 令和の結婚相手としてはむしろ優良物件です!
B子:いやいや、自分の服しか見えてないじゃん! 減点されないように生きてるプロの品定めマンだよ!?
(そこへ、C子がマイボトルを持ってスッと無音で入ってくる)
C子:……騒がしいわね。いい? あんたたち。アイロンが上手い男と、人の気持ちが分かる男は別物よ。
B子:ほらーーー!
A子:だって「年収、身長、タワマン」ですよ
C子:いい? 20代のうちは「年収、身長、タワマン」って『加点チェックリスト』で男を見るのよ。でも30代を過ぎると、それが『減点チェックリスト』に変わる。
「服の袖を気にした、マイナス10点」
「店員への態度が悪い、マイナス50点」
「本が濡れてるのにスルー、一発レッドカード」。
そうやってお互いに心の減点スタンプラリーをやってるうちは、一生ワンルームのベッドでごわごわの文庫本抱えて天井の木目を数えることになるわよ。
B子:うっ……! 胸に刺さりすぎて、みぞおちが、みぞおちが痛いです、C子さん……!
C子:ただね、B子。たくやが悪いわけでもないのよ。あれは「減点されないこと」が正解だと教え込まれて育った、現代の悲しきモンスターなの。傷つかないように、汚れないように、スマートに。でもね……。
A子:でも! でもですよ! じゃあどうすればいいんですか!? 条件を全部捨てて、野生の心で恋をしろって言うんですか!? 私はまだ、お城の舞踏会でガラスの靴を叩き割る覚悟はできてません!条件が良くて清潔感もあるなら、ちょっとくらい冷たくされても、こっちが合わせて加点していけばよくないですか?
C子:甘いわね、A子。そうやって無理して他人のパズルに自分をハメ込もうとするから、胸の奥に薄い膜が張ったみたいに息苦しくなるのよ。
・・・まあ、私はそこで妥協しなかったから独身だけどね。
B子:うっ、重みが違う……。じゃあ、りおさんはどうすればよかったんですか?
C子:あんたたち、条件って、年収とか身長だけだと思ってるでしょ。
B子:えっ、……違うんですか?
(C子、急に懐からアクリルスタンドを取り出し、目が完全にキラキラした乙女に切り替わる。声のトーンが3オクターブ上がる)
C子:いい!? 私の推しの「レン君」を見てごらんなさいよ!? 身長185cm、職業・魔界のプリンス、年収・国家予算レベル! マントにしわ一つない男!!!なのに! 第4話でヒロインの泥団子が潰れた時、自分のシルクのマントが泥まみれになるのも構わずに、一緒に泥団子を丸め直したのよぉぉぉぉ!!! これよ! これが私の! 呼吸ができる条件なのよォォォォン!!!(悶絶)
A子:C子さん! 急に2次元の推し出してきて情緒がバグってます! 魔界のプリンスはマッチングアプリに登録してません!!
B子:っていうか、現実世界に泥団子丸め直してくれるハイスペなんて生息してないんですよ……! だからみんなアプリで苦悩してるんですってば。
C子:(ハッと我に返り、髪を耳にかけながら元の冷徹なトーンに戻る) ……コホン。とにかく。りおさんがこの後、条件を捨てるのか、それとも新しい何かに気づくのか……。
A子:うわあ、どうなるんだろ……。第2話のタイトル「幸せの相場ーハイスペックとの結婚が幸せ?ー」ですよ? 絶対相場が荒れるじゃないですか。
B子:株価みたいに言わないの。でも、気になる……。早く次を読みたい……。
C子:じゃあ、この先読ん読んだら、もう一回来なさい。
(C子、マイボトルを手にスッ……と風のように去っていく)
A子:……C子さん、やっぱり最後はレン君の生配信にドロンしましたね。
B子:ね。……さ、仕事戻ろ。私たちのチェックリスト、とりあえず「定時退社」にチェック入れましょ。
(二人はコーヒーを手に、足取り重く、でもどこかソワソワしながら給湯室を後にする)
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私は極力、アイロンがいらない服を選びます(笑)
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27歳・D子、41歳・E介、55歳・F美。
給湯室から盗み聞きした世界に毒を吐いてます。
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