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【第1話】「知らない」は罪になる。看護師の私が、経営と診療報酬を学び始めた日

はじめに


この記事は
「看護師から医療コンサル転職への挑戦」シリーズ
の第1話です。

シリーズ全体では、私が看護師として勤務していたクリニックで受けた一つの指摘から始まり、看護師長になり、医療コンサルを目指して一般企業を8社受け、結果として「現場から経営を変える」道に辿り着いた、そんな話を書いています。
第1話は、すべての始まりだったある指摘の話です。

看護師の仕事、嫌いじゃない


看護師の仕事、嫌いじゃない。

患者さんと向き合う時間は意味があるし、同僚との連帯感もある。
専門性のある仕事だという誇りもある。

でも、ふとした瞬間に思うことはありませんか。

「このまま看護師として、定年まで働き続けるのかな」

「もう少し違う世界も、見てみたい気がする」

「でも、看護師の経験って、外で通用するんだろうか」

私もそうでした。

そして、その「もやもや」が動き始めるきっかけは、看護師として勤務していたあるクリニックで、外部の人から受けた一つの指摘でした。


自費診療と保険診療のこと

そのクリニックでは、保険診療と自費診療の両方を扱っていました。

自費診療で取り扱っていた美容注射やダイエット注射はかなり儲けていて、インセンティブを含めて月収60万円以上になることがありました。

私はそのクリニックで、ある日、外部の人にこう指摘されました。

「自費の点滴を打ちにきた患者さんに、保険の初診料を取っていますよね。本来、自費と保険は明確に分けないといけないんです」

——え、と思いました。

正直に書きます。
私はそのとき、その指摘の意味がよくわからなかったんです。

看護師としての業務はちゃんとやっていました。

患者さんに対しても丁寧に対応していたつもりでした。でも、自分が働いているクリニックで起きている「お金の扱い」については、何も知らなかったし、考えたこともなかった。

その指摘を受けたとき、私は心の奥で、二つのことを思いました。

一つは、

「私、自分が働いている場所のことを、何もわかっていなかった」

ということ。

そしてもう一つは、もっと怖いことでした。

「自分の職場が、やってはいけない方法で儲けている可能性がある」

——これが、本当に怖かったんです。

私は看護師として、患者さんのために真面目に働いているつもりでした。でも、もしかしたら、自分が日常的に関わっていた業務の中で、知らないうちに不正請求に加担していたかもしれない。

患者さんに「初診料です」と説明していたあの瞬間。 カルテに記録を書いていたあの瞬間。 スタッフ間で「自費の点滴の人来ますね」と話していたあの瞬間。

そのすべてが、本来あってはいけない運用の一部だったかもしれない。

これは、看護師としての倫理観を、根底から揺さぶる出来事でした。

何かが変わった瞬間

その指摘は、私にとってかなり大きな出来事でした。

看護師として何年も働いてきて、それなりに自信もあった。
でも、自分が日常的に関わっていた業務の裏側にある制度や仕組みについて、私はほとんど何も知らなかった。

そして、知らないということが、誰かを傷つける側に立つ可能性があったことに、初めて気づきました。

「これは、ちゃんと学ばないとダメだ」

恐怖と責任感が混じった気持ちで、私は診療報酬や医療事務の本を読み始めました。最初は意味のわからない用語ばかりでしたが、少しずつ理解できるようになっていきました。

そして、診療報酬を学ぶうちに、私は気づきました。

看護師の世界には、見えていない景色がたくさんある

患者さんと向き合う時間は確かに尊い。でも、その背景には経営があり、制度があり、お金の流れがある。それを知らずに「いい看護」だけを語っていた自分が、急に視野が狭く見えました。

そして、もう一つの気づき。

「知らない」ことは、ときに罪になる。

私たち医療従事者は、制度の上で働いています。患者さんからお金をいただき、保険から請求し、そのお金で給料をもらっている。
その仕組みを理解せずに働くことは、本来あってはならないことなんです。

看護師長になって見えた、まったく別の景色

診療報酬を学ぶうちに、私はクリニックで看護師長を任されることになりました。

正直、最初は「看護師としてのスキルをもっと磨きたい」という気持ちのほうが強くて、管理職になることに前向きだったわけではありません。でも、診療報酬を学んだことで「経営に近い場所で働く意味」が少しずつ見えていたタイミングでもありました。

師長になって2〜3ヶ月もすると、それまで看護師として現場にいた頃には見えていなかった景色が、目の前に広がりました。

「経営」という、学校では誰も教えてくれなかったもの

師長として最初に驚いたのは、お金の流れでした。

看護師として現場にいた頃、私は「この処置にいくらの収益が出ているか」「自分の人件費がどう計算されているか」を、ほとんど意識したことがありませんでした。目の前の患者さんに集中していたからです。

師長になって初めて、

  • 1日の患者数と売上の関係

  • 診療報酬の点数が、現場の動きにどう影響しているか

  • 看護師1人あたりの人件費と、その人が稼ぐ収益のバランス

  • 在庫の管理が、どれだけ利益を左右するか

——こういうことが、急に自分の仕事として降ってきました。

診療報酬を学んでおいてよかった、と何度も思いました。学んでいなかったら、師長として現場を回すことすらできなかったはずです。

全部、つながっていた

師長として数ヶ月過ごして、一番衝撃だったのは、

医療現場のすべての活動が、お金とつながっている

ということでした。

スタッフのシフトの組み方、患者さんの誘導、診療材料の選び方、患者満足度——すべてが収益に影響していて、すべてが経営の話と地続きでした。

看護師として現場にいた頃は、「経営」は経営陣がやる別世界の話だと思っていました。でも実際は、現場の一つひとつの動きが経営そのものだったんです。

この気づきは、私の中で何かを大きく変えました。

「医療現場のことを、もっと広い視点で考える仕事があったら、私はそれをやりたいかもしれない」

そう思い始めたのは、このタイミングだったと思います。

おわりに:第1話で伝えたかったこと

今回の話で伝えたかったのは、

外からの一つの指摘が、人生を変えることがある、ということ。

あの「自費/保険を分けないとダメ」という指摘がなかったら、私は診療報酬を学ぶこともなく、師長になることもなく、その後に挑戦することもなかった。

そして、もう一つ。

看護師の世界には、見えていない景色がたくさんある。

私たちは患者さんとの関わりに集中するあまり、その背景にある経営・制度・お金の流れを学ぶ機会が、看護師資格を取得する学習過程でも、管理者にならない限り、現場でも、ほとんどありません。

でも、その景色を一度見ると、看護師という仕事の捉え方が180度変わります。

そしてもう一つ、これは少し重い話になりますが——。

自分の職場で起きていることを、知らないままにしないでほしい。

私が経験したように、知らないうちに不正の片棒を担いでいることもあり得ます。それは、患者さんにとっても、自分自身にとっても、誰のためにもなりません。

「うちの職場、お金の流れって、ちゃんと適切なのかな?」

そう思ったら、まずは診療報酬の本を1冊、手に取ってみてください。それだけで、見える景色が変わります。

もし、今この記事を読んでいるあなたが、

  • 「もう少し違う世界も見てみたい」と思っている

  • でも何から始めればいいかわからない

——そう感じているなら、まずは自分が働いている場所の「お金の流れ」を学ぶところから始めてみてください。

それが、すべての出発点になります。

次回予告:第2話

師長になって経営の入り口を見た私は、その後、ある違和感に気づきます。

クリニックには3社のコンサル会社が出入りしていて、転職先のクリニックでも開業コンサルが1社入っていた。私は短期間で4社のコンサルを至近距離で見たんです。

最初は「コンサル会社しか知らない、特別なノウハウがあるんだろうな」と思っていた。

でも、そこで私は、ある決定的なことに気づくことになります——。

第2話  つづきはこちら


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