【アマノ文筆クラブ】夢のつづき|エッセイ


夢のつづきを見る方法がある、と昔から信じている。
それは、夢の中に「物」を置いてくることだ。

靴でも、鍵でも、名前でもいい。
夢の途中で、わざと忘れ物をする。
すると次に眠ったとき、私はそれを取りに戻る。
夢は「未完」を嫌うらしい。

目が覚めると、内容は驚くほどの速さで薄れていく。
エビングハウスの忘却曲線みたいに、
感情も情景も、何もしなければ滑り落ちていく。
朝の光は、夢にとっては残酷だ。

だから私は、忘れ物を置く。
忘れないために、あえて忘れる。
矛盾しているけれど、
人の記憶は、そういう遠回りが一番しぶとい。

夢のつづきは、努力して思い出すものじゃない。
「まだ終わっていない」と、心に勘違いさせるものだ。

忘れたはずの何かを取りに行くために、
私はまた、同じ夜へ戻っていく。
夢はきっと、そこで待っている。


エビングハウスの忘却曲線は、
覚えたことを再度覚え直すときの時間の節約率を表した曲線です。


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