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【風まかせ文芸部】未送信|エッセイ


タイトル: ゴミ箱の中の岩

未送信のまま、画面を閉じることがある。

言いたいことは山ほどあるのに、
送信ボタンの手前で指が止まる。
たぶんこれは悪あがきだ。
誤解されたくない、傷つきたくない、
そんな小さな保身の積み重ね。

書いては消し、また書いて、また消す。
文章はだんだん短くなって、
最後には句点だけが残る。

それをゴミ箱に捨てる。

通知は来ない。
何も起きなかったことになる。
それなのに、心の中では確かに何かが転がった音がする。

毎日、同じことを繰り返している気がする。
シーシュポスの岩みたいに、
伝えたい言葉を山の上まで運ぼうとして、
手前で落としてしまう。

無駄なのかもしれない。
でも、その無駄が私を形づくっている。

送らなかった言葉は消えるわけじゃない。
行き場を失って、内側に積もっていく。
それがいつか、別の誰かに向けた
やさしい一文になることもある。

ゴミ箱は、終点じゃない。
ただの待機場所だ。

未送信のメッセージたちは、
今日も静かに呼吸している。


シーシュポスの岩は、ギリシャ神話に登場する徒労を意味する神話で、シーシュポスが創建者のコリントスにかけた石のようなものです。


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