事業決めずに、14年ぶりの起業 |株式会社Eldipa設立のお知らせ
実はまだ、何の事業をやるかは決まっていません。
前々回のnoteで、paiza株式会社の取締役会長を退任したことをご報告しました。その中で「新たなチャレンジについては、改めてご報告します」と書きましたが、今回はその報告です。
なぜ事業を決めないまま、14年ぶりに起業したのか。今回はそのことを書きたいと思います。
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■ご報告
2026年7月9日に、私が代表を務める新会社の株式会社Eldipa(エルディパ)を設立しました。決まっているのは、バーティカルAIエージェントの領域でもう一度ゼロから事業をつくる、という方向だけ。冒頭に書いた通り、具体的な事業はこれから決めようと思っています。

paizaの次に何をするか?というのは、実は結構昔から何となく考えていました。起業〜社員200人規模・会員100万人規模に至る過程や、投資家や証券会社とのやり取り等で経験したアレコレは、なかなか普通の会社員生活では得られないエキサイティングな経験でした。
なので、もしpaizaを離れることがあったら、それを活かして投資サイドで起業家の支援をするか、経験を活かしてもう一回起業するかのどちらかだと考えていました。
今回は、51歳でまだ全然元気ということと、振り返るとpaizaでの日々が単純に楽しかったため、ならばもう一回自分で前回の経験を活かしてやってみようとい思い、シリアル・アントレプレナー(連続起業家)の道を選びました。
■なぜ再び起業するのか
もう一回起業しようと思ったのにはもう一つ理由があります。世の中の構造が大きく変わっていく瞬間に、評論家としてではなく、実務サイドで関わっていたほうが絶対おもしろいだろう、ということです。
1990年代後半、インターネットが登場して社会に広まっていったときの空気と、現在の様子は非常に似ていると感じます。AIにより、世の中の色々なものの構造が大きく変わっていくのは確実です。
Andreessen Horowitzの創業者マーク・アンドリーセンは、2011年にウォール・ストリート・ジャーナルで「Why Software Is Eating the World(なぜソフトウェアが世界を飲み込むのか)」という論考を発表しました。
その後、Amazon、Apple、Google、Netflixなどを筆頭に、実際に様々な領域でソフトウェアが世界を飲み込んでいきました。そして現在は、AIが世界を飲み込もうとしています。
この変化が人類にとって祝福になるのか、脅威になるのか。その答えはまだ誰にもわかりません。しかし歴史を振り返れば、人類は一度発見したものへの探究を止めたことはありません。
それならば、変化を遠くから眺めるのではなく、混沌に飛び込んでその先頭に立ち、自らの手でより良い未来をつくる側でありたいと考え、会社組織としてそれを推し進めるべく、再び起業することにしました。

社名のEldipaは、北極星を抱くこぐま座(Little Dipper)から取りました。不確実な混沌の中で方向を示す北極星を抱いて進む、という意味を込めています。
■Eldipaがやること:バーティカルAIエージェント
とはいえ、現在Eldipaでやることとして決まっているのは「バーティカルAIエージェント」という領域だけ。半年ほど走りながら事業検討し、参入領域を定めていこうと考えています。
生成AI時代において、幅広いユーザーに共通する汎用(ホリゾンタル)領域は、OpenAIやAnthropicといったモデルプロバイダーや、Office系アプリ・企業内ID・権限管理・ファイルストレージを押さえているMicrosoftやGoogleなどのハイパースケーラーの優位性が高く、参入障壁を築くのは至難の業です。
一方で各業界特有だったり、各企業ごとのクローズドデータ/クローズドプロセス等のバーティカルな非汎用領域特化でのAIエージェントの構築は、モデルプロバイダもハイパースケーラーも参入しづらく、大きな可能性があります。
現在考えているのは大きくは下記の2つの方向性です。
バーティカルAIエージェントを事業会社へ提供する
自分たちで特定ドメインの事業を行い、裏側をAIネイティブ運用で差別化する
当面はAI導入コンサルティング・AIエージェント開発受託も一部請けながら、ノウハウとドメイン知識を深め、自分たちの事業を探索しようかと考えています。
■「決めてから動く」より「動きながら決める」
やる事業を決めずに、年内に参入領域を決定する、という大まかなスケジュールのみで再起業したわけですが、生成AIと壁打ちしても市場の課題は概要しかわからないし、考えてるだけでは何も進みません。
そのため、一旦色んな人に会ったり(この2ヶ月で100名ほどあったり)、自分の目で現場を見てみる、という活動をしながら事業検討をしています。
退任後すぐに開催されたIVS2026に、7/1~7/3の3日間フル参加し、いろいろな方の話を聞きながら事業の方向性を検討したりもしていました。
今後、参入領域検討のなかでの現場ヒアリングだったり、立ち上げの営業活動などは、再度自分で泥臭くやる必要があります。またゼロから色んなところに飛び込むマインドが今後非常に重要になると考えています。
とはいえ直近は200人を超える組織の経営を中心にやってきており、社内では丁重に扱われたり、ランチも秘書が買ってきてくれる、というような生活に慣れてしまい、自分のなかでスタートアップマインドは明らかに損なわれている事に危機感を覚えていました。
■初心にかえるためにタイミーで単発バイト
そこで改めてマインドチェンジするために、経営者としてではなく、何者でもないおじさんとして扱われる経験が必要だろうと考え、タイミーで単発バイトをしてみることにしました。
初心に帰るためにバイトからやり直そう、という感じです。
初心にかえるため & タイミーの仕組みを体感してみたくて、タイミーでバイトしてみた。
— 片山 良平@paiza創業者 (@rk611) July 20, 2026
お互いを評価する為、店側も働く側も丁寧だし、パッと集まって、空気見ながら緩く連携しつつ成り立つのがすごく面白い。
あと、やはり初めての体験はドキドキする。
そう考えてから、7月中にはタイミーをやろうと思っていたのですが、実際実行に移すのか…と考えると頭ではやってみたほうが良いとわかっていても、意外と億劫で腰が重かったのは事実です。
そして、そろそろ7月も終わってしまうなという中で、タイミー用にまる1日予定を入れないで空けていた月曜日が近づいてきたので、その前々日の土曜日に一念発起してバイトの登録をすることにしました。
タイミーは書類選考無しでバイトできるものの、未経験OKかつ体力系でない案件は多くなく、その中から選ぶことにしました。
直前かつそんな条件だとあまり案件は多くなく、たまたま出てきた某麻辣湯屋の「新規開店前のロールプレイのお客さん役」という2時間ほどバイトは、片道600円の交通費がかかる、だいぶ遠い場所…。
こういう効果が見えてなく未経験なものは、時間を置けば置くほど絶対にやらなくなるので、思い立ってから5秒以内に行動する「脳の5秒ルール」の原則を守るのが重要です。
グダグダ考え始めるとやらない理由をあれこれ見つけてしまうので、5秒ルールに従い「えいや!」と応募しました。
実際にバイトに入るまでは超ドキドキでした。20歳の頃にやっていたガストのキッチンでのバイトで、ホールの女子高生バイトに「お前馬鹿か!?」と罵られたことが頭をかすめます…。

意を決して店舗にいってみると、自分以外に集まったタイミーさんの7名は全員女性かつ、店員側もマネージャーも含め全員女性で、店舗内に十数人いる中で唯一の男性が自分のみ、という気まずいスタートでした。
とはいえ実際に業務をはじめてみると、自分が何者でもないおじさんとしてフラットに扱われることや、店舗ではこういうことが裏でおきてたのかなどの発見等、色々なことが新鮮で、やってみてよかったなと思いました。現場に行ってみると本当にいろいろな発見があってやっぱり楽しい。
直接的に自分の事業には活きませんが、ガストのバイト以来の30年ぶりの店舗オペレーションの現場での気づきとしては、ざっとは下記のようなものです。
店舗オペの改善は「その場で的確な指示出し→修正」の高速反復で、机上で考える改善活動とはまったく別物だと体感
店舗ごとに作りが違い、導線が異なったりで、まだまだ人でないと吸収できないことが結構ありそう
タイミー自体の仕組みの発見(相互評価でジェントルで、みんな自律的)
むりやりAIの話とつなげるとしたら、「現場の暗黙知やリアルタイムのオペレーション修正は、机上とAIだけでは拾えない。だからドメインの現場に入らないとバーティカルAIは作れない」と言えるかもしれません。
現場に入って、そこで発生しているペインに目を向けられなければ、基本的には成長する事業は立ち上がらないと思います。その際に必要なのは、自分は現場のことはよくわからないから、多少疎まれてもバカにされても初心者として詳しく話を聞きに行くという姿勢や、課題を詳しく知りたいという好奇心なのだと思います。
起業においては、つまらないプライドが最も邪魔であり、重要なのは知りたいという好奇心だということです。今回のタイミーのバイトでは改めてそんなことをひしひしと感じました。
バイト代は往復の交通費と、時間調整でのカフェ代にほぼ消えましたが、初心に帰れて非常に良い体験でした。これからも色々現場に飛び込んで、走りながら事業を考えていきたいと思います。
■8月8日、最初の一歩として登壇します
そんな中、paiza時代からつながりのあったG's(ジーズ)さんよりお声がけをいただき、8月8日土曜日にEldipa名義での初の外部露出としてイベント登壇することになりました。
イベント名:「好奇心ドリブンでAI時代を駆け抜けろ」
日時:2026年8月8日(土)10:30〜11:50(開場10:15)
会場:ジーズ東京校(原宿)+オンライン配信
主催:G's(ジーズ)/デジタルハリウッド株式会社
共演:千代田まどか(ちょまど)氏(Microsoft Developer Advocate)、
坂尻愛明氏(ファシリテーター、G's AI教育主任講師)参加:無料・要予約(会場30名/オンライン50名)
申込 https://curiosity-duf.peatix.com/プレスリリース:https://www.dhw.co.jp/press-release/20260715_gs_aitalkevent/
今回のイベント趣旨に「不安や焦りを動機に学び始めた人のうち、学習が定着したのは27%にとどまり、好奇心を動機にした人は45%と明確な差が表れ、好奇心が学習継続の鍵」とありました。
「不安ではなく好奇心で動く」というのはまさに今自分がやっていることに近いと感じ、今回登壇させていただくことになりました。興味ある方はぜひご参加ください!
■まとめ
6、7月はいろいろな方と話をしたり、イベントに参加したり、タイミーでバイトしたりして、ある程度事業検討してみたい方向性が見えてきたので、8月はビジネスモデルを検討しつつ、現場ヒアリング等に時間をつかっていければと考えています。
AI導入やAIエージェントに課題感のある企業の方がいらっしゃれば是非お話を聞かせて欲しいです。Eldipaには開発メンバーもいるので受託開発することも可能ですが、どちらかと言うと「世の中のAIニーズを知りたい」ので、AIをどう使っていくのかを壁打ちしたいという方大歓迎です。
話してみたいという方は、XやFacebook、LinkedIn、noteの問い合わせ等でご連絡いただければと思います。
ソフトウェアが世界を飲み込んだように、今後AIが世界を飲み込んでいくのは確実です。その未来が人々にとって祝福になるか、脅威になるかを分けるのは、現場にAIをどう根づかせるかです。そのためにもEldipaでは、ひとつの産業に深く入り込み、業務・事業をつくりを変えて行きたいと思います。

