ろろろのめ第35回 SNS時代の終焉と「作品」の復権:ダイレクトに繋がるメディアの時代へ
SNS時代の終焉と「作品」の復権:ダイレクトに繋がるメディアの時代へ
現代社会において、インターネット上の「空気」は急速に変化している。SNSはかつての役割を終え、発信者と受信者の双方に疲弊をもたらしている。この潮流は、クリエイターから一般ユーザー、さらには政府機関まで巻き込む大きな構造変化である。
本稿では、一連の現象を「SNSの終焉」と定義し、その背景と未来について考察する。
1. SNSの機能不全と「投稿疲れ」
かつて、SNSは「誰もが自由に意見を表明し、日常を共有する場」であった。しかし、その役割はもはや機能不全に陥っている。
「公」の場の情報劣化
:広告やSEO対策のための中身のない記事がウェブを席巻し、GoogleのGeminiやChatGPTといった生成AIがそれに拍車をかける。AIが瞬時に大量の情報を生成するようになったことで、何が真実か見分けられない「デジタル暗黒時代」が到来した。
「投稿疲れ」の蔓延
:監視や炎上リスク、そしてアルゴリズムに支配された投稿の徒労感から、多くのユーザーが発信意欲を失った。特にZ世代を中心に、積極的に投稿せず「見る専用」に徹するユーザーが増加している。
現実との乖離
:SNS上の声は、現実社会の総意を反映していない。SNSで活発に意見を表明する一部の声が、見えない大多数の民意と乖離する現象は、政治や社会問題において顕在化している。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250826/k10014904251000.html
2. AIが促す「個」の再発見
SNSが情報過多と不信の空間へと変質する一方、GoogleのGeminiやChatGPTといったAIは、より質の高い情報へのアクセスを求める「個」の行動を加速させている。
AIは、無数のウェブ情報からノイズを排除し、必要な情報を瞬時に要約する強力なツールである。この機能により、人々は検索エンジンでの無益な情報収集から解放され、本当に価値のある情報や、その情報源である「個」へと直接向かうようになった。AIは、情報の受け手を「膨大な情報の中から取捨選択する人」から、「質の高い情報を効率的に探求する人」へと変えたのである。
そして、この変化はクリエイターにも影響を及ぼしている。
「私」を捨てる戦略
: 感情や個人的な感想を排除し、限りなく客観的で公的な文章を公開する姿勢は、AIが簡単に模倣できない人間ならではの「信頼性」を確立する。SNSはもはや「個人の日常」を晒す場ではなく、「作品や価値ある情報」を告知する場へと変貌した。
「作品」の復権
: 質の低い情報が蔓延する中で、AIに模倣できない人間ならではの「作品」が持つ価値は高まっている。有料記事や有料ポッドキャストといった、情報に直接対価を支払うモデルの拡大も、この傾向を裏付けている。
3. ダイレクトに繋がるメディアの時代へ
SNSの機能不全は、クリエイターにとって新たな機会を生み出した。それが「ダイレクトに繋がるメディア」への移行である。
仲介者の排除
: YeやJustin Bieberの事例が示すように、クリエイターはレコード会社やエージェントといった従来の仲介者を通さず、自らのブランド力とツールを駆使して、ファンと直接繋がるようになった。
プラットフォームの選択
: 米国におけるThreadsの台頭や、コーチェラがXからThreadsに宣伝を移行させた動きは、プラットフォームの不安定さから脱却し、より信頼性の高いコミュニティにユーザーを誘導する戦略である。


結論
SNSの「終焉」とは、SNSという概念そのものの消滅ではない。それは、役割と機能が大きく変わり、「不特定多数に向けた承認の場」から、「信頼できる個人が、信頼できるコミュニティと直接繋がる場」へと変容することである。
私たちは今、SNSという羅針盤に毒され、現実との乖離に苦しんでいる。しかし、同時にこれは、理性と感性を両立させ、自らの羅針盤を再構築する好機でもある。真の価値は、AIが生成する加工された情報ではなく、現実世界への深い洞察と、そこから生み出される「作品」に宿る。そして、その価値は、広告やアルゴリズムに左右されず、AIに導かれた「個」と直接繋がる新しいメディアによって正しく届けられるだろう。

