【旅日記#3-2】ゆるキャラから始まる未知との出会い!道東と道北の狭間・紋別郡を巡ってみた(後編)
オホーツク管内の各市町村で配布される「オホーツクキャラクターカード」を集めるべく、私は両親と共に紋別周辺を回っていた。
前回は息抜きに立ち寄った雄武町・日の出岬の絶景にすっかり心を奪われてしまったが、これから向かう町ではどんな発見があるだろうか。
(前回はこちら↓)
2025年5月4日(日)
14:45 興部町
前編で訪れた紋別市と雄武町は、港を中心に栄えた典型的な漁業のまちであったが、次に向かった興部町の市街地は少しだけ海から離れたところにあった。
国道239号に入って間もなく、「道の駅 おこっぺ」に到着。先程までの雨予報はどこへやら、今ではすっかり晴れ模様である。

右が観光情報案内などを扱っている。
2つの建物をつなぐ屋根が特徴的
興部の主産業は酪農であり、「おこっぺ牛乳」というブランド牛乳をはじめとする乳製品のラインナップはかなりのもの。道の駅の醍醐味としてソフトクリームを挙げる方も多いと思うが、本場のものはさぞ別格なのだろう。この日はお腹の調子が悪く、食べるのを遠慮してしまったのが悔やまれる⋯。
また、ここは旧国鉄名寄本線および興浜南線の興部駅跡地でもある。今となってはどちらの路線も廃止されてしまったものの、内陸と海沿いという2つの路線が交わる交通の要衝であった事実が、この地区の発展に大きく寄与したことは想像に難くない。

北海道にはこのように廃駅を活用した道の駅が多い
この列車「ルゴーサ・エクスプレス」は2両編成で、手前の車両は休憩スペース、奥の車両はライダーハウス的な簡易宿泊施設として利用することができる。
車内は多少の改装こそされているものの、天井から吊り下げられた扇風機と蛍光灯が昭和の空気感を色濃く残している。現役当時はさぞ活気と熱気に満ちあふれていたのだろう。
そうそう、私も大学に通っていた時は毎日北見まで旧式のキハ40系に乗ったものだが、高校生の通学と重なるとすごい混雑で暑かった。決して快適とは言えなかったけれども、その路線にも新型車両が導入された今では、それも貴重な思い出である。

こうして座っているだけでも旅情が感じられる
大正から昭和にかけては栄華を誇った鉄道だったが、モータリゼーションの進む中で、次々にバス輸送へ切り替えられていった。前回訪れた「道の駅 おうむ」もそうだったように、ここ興部でも道の駅がバスの発着点となっている。
さらに、今は一家に1台どころか一人1台がマイカーを持つのが当たり前の時代。代替となったバスすらも存続が危ぶまれており、地方の公共交通のあり方は、再び変革の時を迎えていると言っても過言ではない。


平日であれば、人の動きも見られるのだろうか
さて、ここで恒例となったキャラクターカードの紹介に移ろうと思ったら、興部町はまさかのゆるキャラ不在。こんな企画をやるくらいだからてっきり全市町村にいるものかと思っていたが、そんなことあるのか⋯!?

カントリーサインの牛はゆるキャラではないらしい
執筆日現在、オホーツク管内でゆるキャラが存在しないのは興部町のみ。しかし実にタイムリーなことに、この旅の数日後に興部中学校の生徒が「興部にもゆるキャラを」と町長へ直々に請願の声を上げたという(参考文献:『広報おこっぺ No.766 2025年7月号』)。
こうした若い世代の提案は、町全体の機運を高める大きなきっかけとなるに違いない。続報に期待しよう!
15:25 西興部村
舞台は牧草地から森の中へ移り、続いては西興部村へ。この村は公共施設から民家まで概ね統一された建物の色使いが特徴的で、緑とオレンジのコントラストがどこか現実離れした雰囲気を漂わせる。
周囲を山に囲まれた静かな土地とこの演出が合わさって、居るだけで日頃の悩みなどがどこかへ消えてしまうような空間である。
カードの配布場所は道の駅に加え「森の美術館 木夢」があり、時間がかなり押している都合上、前後の町との周遊ルートにより近い後者でもらってくることに。

村域の9割を山林が占める西興部は林業が盛んな村で、この施設では木のおもちゃを通して子ども達に木の温もりと木工の魅力を伝えている。さすが連休とあってか、館内は数多の家族連れで賑わっていた。
これから遠軽の祖父母宅に戻り夕食を食べ、さらに明日の仕事に備えて網走に帰らなければならないことを考えると隅々まで見ることはできなかったものの、大人にとっても興味深い展示物も色々あるそうなので、時間に余裕のある時にぜひ再訪したい。今日はその良い下見となった。

村内の情報通信技術の中枢を担っているという。
温かな山村であると同時に、デジタル化も進んでいるようだ
さらに隣には「ホテル 森夢」という立派な宿もあり、この一画だけでも遊びから宿泊まで一挙に楽しむことができる。
このように小さな村はさまざまな施設がコンパクトに集まっているから便利であるが、統一感あふれる施設名や建物の色は、慣れない人にとっては却って「どこが何の場所だっけ?」となりかねないので、そこは少し注意が必要かも知れない。
そんな西興部村のゆるキャラは「セトウシくん」。村の成立にあたり役場が置かれた土地(現在の西興部地区)がかつて瀬戸牛と呼ばれていたことからその名がついたと思われる彼は、村のギター工場で作られたギターを手に各所で活躍中。
確か私が中学生の頃だろうか、たまたま寄った道の駅でイベントが開かれていて、その際に彼に握手してもらったのが懐かしい。

絵柄が変更になったが、そちらは色が異なっている
ところで、カードを受け取って「木夢」を出ると、入口に見慣れないカントリーサインが貼ってあるのに気付いた。まさかまた絵柄が変わったのかと思ったが、村に来る時に見た標識も、たった今もらったこのカードの裏も現行のデザインだったから、どうやらここだけのオリジナルのようだ。

正式に採用されるのだろうか?
なぜここに何の脈絡もなくこれが貼ってあるのか、そしてセトウシくんの隣にいる女の子は誰なのか。調べてみても情報は全然ヒットせず、謎は深まるばかりであった。
16:10 滝上町
少しずつ日が傾きつつある中、瀬戸牛峠と札久留峠という2つの小さな峠を越え、最後は滝上町へ向かう。
相変わらずほぼ緑と茶色の景色が続くものの変化がない訳ではなく、深い森に包まれるようだった西興部に対し滝上側は多少開けた原野が広がっており、西に目をやると1,000m級の山々が連なる様子を望むことができる。
滝上といえば芝桜であり、時期になれば網走のお隣・東藻琴と共に大勢の観光客で賑わうのだが、GWではさすがにまだ早いか。沿道からちらりと見る限り、町一番の名所たる滝上公園は今まさに咲き始めの様相を呈していたので、あと2週間もすれば見頃になるだろう。
というわけで、何とか日没前に本日の最終チェックポイント「道の駅 香りの里たきのうえ」へたどり着いた。「童話村」をキャッチフレーズとする滝上町らしく、メルヘンチックな建物がかわいらしい。

これぞ田舎の道の駅といった個性が光る
駐車場に降り立った瞬間から癒やしムード満点の当駅は、香りの里という名の通り名産のハーブ・ハッカの製品を取り揃えるほか、地元で作られた木工品や手芸品が多数並んでおり、過疎の町ながら地場産業は生き生きとしていることがうかがえる。
将来はこういう所でスローライフを営むのも良いなあ、なんて思ったり。

館内に設置された情報カメラを見ると、ここから南の浮島峠には多くの残雪があった。せっかくここまで来たから帰りは浮島経由で高速に乗るのはどうかと考えていたものの、私の車はすでに夏タイヤに交換済みだったのであえなく却下。
山間部では5月でもまだまだ雪の可能性があるのは分かっているのだが、ほとんど舗装が出ているのにスタッドレスで長距離を走るのは勿体ない気がして、いつも早くに換えてしまうんだよなあ⋯。これは北国の春における永遠のジレンマである。
それはさておき、今回のオホーツクキャラクターカード巡りの旅では5つの市町村を回ってきたが、そのトリを飾ったのは「ピコロ」だった。
前述の通り滝上町は童話のような世界観を売り出しているから、妖精のモチーフがよく似合う。ステッキは芝桜になっていて、シンプルでありながらも町の魅力がひしひしと伝わってくる秀逸なデザインだ。

絶妙な味わいを醸し出すのに一役買っている
ちなみに、近隣のキャラは2010年代生まれが大半を占める中、彼(彼女?)の誕生はなんと1991年。かわいい見た目とは裏腹にすごい古参である。
カントリーサインにも制定初期から描かれ、すっかり滝上の顔としてお馴染みとなったピコロ。これまでも、そしてこれからも、地域を牽引する存在であり続けるのだろう。
16:20 錦仙峡を散策
道の駅から国道273号を挟んだ反対側には渚滑川が流れており、そこに広がる渓谷は錦仙峡という名で知られている。残す行程は帰るのみとなったので、ここらでゆっくり散歩でもしていこう。
なお、父は雄武で入った温泉の塩分が肌の炎症に浸透してしまい、痛くてそれどころではないので車で待機しているという。さすが塩化物強塩温泉、その威力たるや凄まじい。だから肌の弱い人は上がり際にシャワーで流した方が良いって言ったのに⋯。
(その温泉について詳しくはこちら↓)
国道を渡るとすぐに橋があり、その袂では様々な看板やのぼりの列が道行くドライバー達にアピールしている。東日本ではとても珍しいとされる「ラドン温泉」は温泉ソムリエとしてとても興味深いが、それより「七面鳥ラーメン」って何だろう?
錦仙峡探索はまだ始まってもいないものの、この時点で相当に面白い場所であることが私の中で確定した。

その名はズバリ「渓谷橋」
渚滑とはアイヌ語で滝壺を意味する地名である。雪解けの季節は水量が多いこともあり、上流から聞こえる大迫力の音が訪れる者を惹きつける。
橋の上に差しかかると空気は一変し、目と鼻の先に道の駅や民家があるにも関わらず、幽玄な渓谷美はそのことを一切感じさせない。この空間だけが俗世と切り離されているかのような、不思議な感覚があった。

紅葉の時期もぜひ見てみたいところ
対岸には、道の駅とよく似た意匠の「ホテル渓谷」がそびえ立っている。ここが件の温泉とラーメンを提供しているに違いないが、父を放ったらかしてそれらを堪能する訳にもいかないのでまた今度としたい。
そういえば先程から、回れば回るほどに行きたい所が増えている気がする。同じ管内に住んでいながら気付いていなかった魅力がこんなにもあったとは、紋別郡のポテンシャルは本当に凄まじい。
ご覧の通り急峻な地形の錦仙峡だが、両岸には遊歩道が整備されており、ホテルのそばからもアクセスが可能だ。谷に下りると渓流の音がより鮮明に聞こえ、まさに自然と一体になった気分が味わえる。
道こそしっかりしているものの人の気配はなく、代わりに小さな観音像が点在する森の中は、夕暮れ時という時間帯も相まって少々心細かったけれども、それも含めて良い体験になった。

この遊歩道は2kmも続いているというが、あまり遠くまで行くと車に戻る前に日が暮れてしまうため、左岸を歩くのはほどほどにして、続いては右岸の遊歩道を軽く見てみよう。
メインルートはこちら側なのだろうか、道中には東屋があるうえ、心なしか渓谷の見通しも良い。自然との触れ合い方の好みは人により分かれるけれども、私にはこれくらいの明るい空気感の方が心地よく感じる。時間に余裕があれば、このまま街まで歩いてみるのも楽しそうだ。

この距離からでも水しぶきが見えるほどの
激しい流れには圧倒されるばかり
そして近くの民家に通じる小道から国道に復帰し、16時45分に道の駅に戻ってきた。私と母が25分間とは思えない充実感ある時間を過ごす中、父は車の中からずっとドッグランの様子を眺めていたらしい。それで楽しかったのなら何よりなのだが、今度来る時は是非ともみんなで歩きたいものである。
それにしても、のどかな街道沿いにこれほど雄大で力強い自然の風景があったとは。しかも見所はここだけではなく、市街地付近にも複数の滝があるというから驚きだ。ここで暮らす人々にとっては、この景色が日常の一部なのだろう。
悠久の時が育んだ大地と、共に生きていく町。滝上町は、何かとあくせく急ぎがちな現代に残された、小さな理想郷なのかも知れない。

昨年はGW前に散ってしまったが、今年は遅めのようだ
その後は再び紋別を経由し、ベースキャンプの遠軽へ。道民からすれば「ちょっとそこまで」程度の軽めのドライブであったが、数多の心に残る発見がそこにはあった。
今日はキャラクターカードを集めるのが主目的だったため所々で駆け足気味になってしまったものの、そのおかげでまた今度じっくりと滞在しようと思う良いきっかけにもなったので、総じて非常に有意義な旅だったと言える。
また今回訪れた西紋地域は、オホーツク管内の中でもマイナー寄りの地方ゆえか、GW真っ只中でも混雑はほとんどなく快適に過ごすことができた。近隣では知床・網走などが定番となっているが、観光地の混み合う行楽シーズンにこそ、あえてこちらへ足を運んでみるのはいかがだろうか。
今回は以上になります。
最後までお読みいただきありがとうございました。
北海道を拠点に旅や温泉の記録などを書いておりますので、よろしければこちらもご覧いただけると幸いです。
