創作大賞2024応募作・恋愛小説部門「青い海のような、紫陽花畑で」1話
【あらすじ】
1900年初頭のイギリス。
自然豊かな美しい地方で
リズとジェレマイアは兄妹として
育ち、世間的にもそうであった。
本当はリズの母はジェレマイアの母の
妹で、お互い死別し残された者同士が
子を連れて再婚したのだった。
幼少期からジェレマイアを愛していたリズ。
大人になり、ジェレマイアと愛を交わすこと
を願うが、兄妹、いとこを越えられず、
リズは他に嫁ぐ。
時は流れ二児の母となり里帰りしたリズは
結婚間近のジェレマイアに愛を伝える。
感情と贖罪と戦禍の中で迸る魂はお互いを
呼び合う。
古き良き、映画のような、恋愛小説。
1話
海風に包まれて紫陽花を眺めていた。
紫陽花は一面に揺れながら
青く、蒼く、光輝いていた。
深い海の中のようで少し、不安になって
リズは鼓動を感じ、胸を抑えた。
それでも、ひとりぼっちの海は
誰にも邪魔されない、奥深い
自分に還るような感覚があった。
紫陽花の青い海で泳ぎながら、まるで
優しく沈んで行くように。
リズは目を閉じた。
自分の海に深く、沈んで行く時、
かけがえのないものだけを抱いて。
それは、愛だけを。
「リズ?」
問いかけるような、優しい声。
少し掠れ、少年の甘さが残っている、
ジェレマイアの声は物心ついた時から
知っている。
そしてそんな頃からずっと
ジェレマイアを愛してきたのだ。
紫陽花畑を掻き分けるように
ジェレマイアはリズの元へ。
二人は数秒、見つめ合った。
そしてジェレマイアは
リズへ、手を伸ばす。
その手を決して離さぬようにリズは
静かに指を絡め、それから
ジェレマイアの手を握る。
視力の薄れたジェレマイアには
紫陽花の青い海が幻想的に靄がかかった
写真のように見えていた。
「記憶で見ているの?」
リズの言葉にジェレマイアは
静かに頷き、それから
リズを見て優しく笑った。
「小さな君はひとりぼっちが怖くて
泣いて僕を呼んだ。
僕はまるで君を護るために生まれた
騎士みたいな気分で君の元へ走った。
あれから
ずっと君を護っているように思って
きたけれど、本当は君がずっと僕を
護っていてくれた。」
リズはジェレマイアの横顔を眺めていた。
「私があなたを想うことが
あなたを縛りつけたのかな。
私は自分でも驚くほどに
熱情を持っていて、
それは青い、この紫陽花の美しさに
息が止まりそうなくらいの感覚。」
それから二人は
青い紫陽花の海をただ、眺めていた。
繋がれた手の温もりは二人の
深い魂の結びつきのように。
「いつか、海へ帰りたい。一緒に。」
リズは言った。
「母なる海へ。」
ジェレマイアは言った。
紫陽花は海風と光に、揺れていた。
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