勤務間インターバル制度 何時間?義務化 いつから?厚生労働省審議会で議論
勤務間インターバル制度は「何時間」?
勤務間インターバル制度は法律で義務化されるのは「いつから」?
そういう疑問をもつ人事担当者は厚生労働省の審議会分科会(正式には「労働政策審議会 労働条件分科会」の議論に注目!
*今年(2026年)6月2日公表した日本成長戦略会議の労働市場改革分科会とりまとめを追記!
勤務時間インターバル制度
勤務間インターバル制度とは
勤務間インターバル制度とは、終業時刻から次の始業時刻の間に一定時間以上の休息時間(インターバル時間)を確保する仕組み。 この仕組みの導入を事業主の努力義務とすることで、労働者の十分な生活時間や睡眠時間を確保しようとするものですが、現在の法律(労働時間等設定改善法)では「努力義務」となっています。
労働時間等設定改善法
労働時間等設定改善法(正式には「労働時間等の設定の改善に関する特別措置法」)が改正され、勤務間インターバル制度を導入することが、事業主の「努力義務」となっています。この改正法は2019年4月1日から施行されています。
「労働時間等設定改善法」は、事業主等に労働時間等の設定の改善に向けた自主的な努力を促すことで、労働者がその有する能力を有効に発揮することや、健 康で充実した生活を実現することを目指した法律になります。
*労働時間等の設定の改善に関する特別措置法
(事業主等の責務)
第2条 事業主は、その雇用する労働者の労働時間等の設定の改善を図るため、業務の繁閑に応じた労働者の始業及び終業の時刻の設定、健康及び福祉を確保するために必要な終業から始業までの時間の設定、年次有給休暇を取得しやすい環境の整備その他の必要な措置を講ずるように努めなければならない。
2~4 (略)
労働政策審議会 労働条件分科会
厚生労働大臣の諮問機関・労働政策審議会の第199回(2025年6月6日開催)労働条件分科会では労働基準関係法制が議題になり、厚生労働省が準備した資料「労働時間法制の具体的課題について② (休日・連続勤務規制、勤務間インターバル、つながらない権利、年次有給休暇)の12ページから46ページに勤務間インターバルに関する資料となっています。
勤務間インターバル制度と分科会委員意見
資料の多さからも分かるように労働条件分科会が勤務間インターバルについて掘り下げた議論が行われたようですが、資料「労働条件分科会でのこれまでの意見」17ページから18ページに勤務間インターバルに関する労働条件分科会委員意見が記載されています。
・導入企業と未導入企業それぞれで働いている労働者の残業時間、労働時間の状況を示すべき。
・個人調査で、翌日の勤務までの間が11時間以内という方が多いが、就業形態ごとの違い等も含めてしっかりと分析すべき。現場での 感覚からすると、時間外労働やインターバルが少し控え目に出ているのではないかという感じもしており、就業形態ごとの状況を しっかりみて議論をしていきたい。
・令和6年就労条件総合調査でも企業の導入率は5.7%にとどまっている実態を踏まえれば、全労働者にインターバル時間を確実に確保するためには、11時間のインターバルを義務化していく方向で検討を進める必要がある。勤務間インターバル制度を多くの労働者に 広げていくためには、代替措置等の例外は限定的に設定すべき。現行は勤務間インターバル制度は努力義務であり、自由に代替措置 を講ずることができることから、これらの例外措置のルール化については慎重に検討が進められるべき。
・企業の円滑な事業運営の観点を踏まえて検討する必要がある。特に、災害時対応だけではなく、やむを得ないトラブル等にも対応できるような柔軟な制度とすることも念頭に置きながら検討を進めることが重要。報告書の検討の柱を堅持しながら実態に合わせた検討 が必要。
・勤務間インターバル制度は、過重労働を減らす有効な施策の一つだが、導入率が10%弱と低い。11時間以上のインターバルに支障があると回答した労働者の割合も高く、中身を掘り下げる必要がある。制度を導入している企業でも災害や業務上のトラブルでやむを 得ない対応が必要な場合は例外的に適用していない。健康を守り、過重労働を減らしていくという趣旨の中で、導入に当たっては一律の対応よりも、実態を踏まえて円滑に進めていけるよう議論を積み上げていきたい。
・適切な運用のためには、各社の実態や、労使での議論の状況やその工夫といったものが十分反映されるようにすることが重要ではないか。労使で話し合って、実態に合わせて制度を導入してきたにもかかわらず、後追いで国により画一的な制度が入ってしまい、労使でベストと思う制度運用ができなくなってしまった経験もある。
・過労死等防止対策推進協議会の大綱で掲げられた令和10年度までの目標はかなり高い数字であり、中小企業への周知が必要だと思うが、制度設計に当たっては、企業実態や助成金の活用も念頭に置いた検討が必要。
・労働者の健康確保を図るためには、十分な睡眠時間を確保することが極めて重要。睡眠不足などが労働者のパフォーマンス低下をもた らすことを示す研究や、仕事の生産性にも影響を及ぼすとの研究結果も示されている。労働者の健康確保や、日々働きがいを持って働き続けられるようにするためには、必要十分な睡眠時間を含めた生活時間の確保が極めて重要であり、そのためにも、勤務間イン ターバル制度の導入を進めていく必要があり、その実効性を高めるためにも、いずれの法律で規定をしていくことが適切かも含め、 具体的な検討を進めていくべき。
「労働基準関係法制研究会」報告書
厚生労働省は今年(2025年)1月8日に「労働基準関係法制研究会」報告書を公表し、1月21日に開催された労働政策審議会の労働条件分科会で厚生労働省は「労働基準関係法制研究会」報告書の内容を説明していますが、その報告書の中の勤務間インターバルに関する箇所(報告書41~43ページ)を抜粋します。
(3)勤務間インターバル
働き方改革関連法で導入された時間外・休日労働時間の上限規制は、過重労働を防止する観点から、月を単位として、労使協定によっても超えることのできない上限を設定したものである。
一方で、労働者の暮らしと健康を考えると、月を単位とした労働時間管理だけでなく、日々の生活を送る上でのワーク・ライフ・バランスの確保が必要となる。このため、欧州等では、日々の勤務と勤務の間に一定の時間を空けることを義務とする勤務間インターバル制度が設けられている。
我が国では、勤務間インターバル制度は、労働時間等設定改善法第2条において、「健康及び福祉を確保するために必要な終業から始業までの時 間の設定」として努力義務が課されており、また労働時間等設定改善指針(平成20年厚生労働省告示第108号)においても一定の記述があるが、概念的な内容にとどまり、勤務間インターバルの時間数や対象者、その他導入に当たっての留意事項等は法令上示されていない。
厚生労働省において、勤務間インターバル制度の導入・運用マニュアルを作成し、時間数や対象者等の設定に当たっての留意点を示しているもの の、2023年(令和5年)1月時点の導入企業割合は 6.0%にとどまっている。他方、制度の導入予定がなく検討もしていない 81.5%の企業のうち、51.9%は「超過勤務の機会が少なく、当該制度を導入する必要性を感じないため」と回答している点にも留意が必要である。また、既に勤務間インターバルを導入している企業の制度設計や、諸外国の勤務間インターバル制度を見ると、様々な適用除外が設けられた上で制度が運用されている。
このような現状を踏まえ、本研究会(労働基準関係法制研究会)としては、抜本的な導入促進と、義務化を視野に入れつつ、法規制の強化について検討する必要があると考える。企業に勤務間インターバル制度の導入を求める場合に、具体的にどのような内容の制度を求めるかについては、例えば、
・勤務間インターバル時間として11時間を確保することを原則としつつ、制度の適用除外とする職種等の設定や、実際11時間の勤務間イン ターバル時間が確保できなかった場合の代替措置等について、多くの企業が導入できるよう、より柔軟な対応を法令や各企業の労使で合意して決めるという考え方
・勤務間インターバル時間は11時間よりも短い時間としつつ、柔軟な対応についてはより絞ったものとする考え方
・規制の適用に経過措置を設け、全面的な施行までに一定の期間を設ける考え方等が考えられる。
いずれにしても、多くの企業が導入しやすい形で制度を開始するなど、段階的に実効性を高めていく形が望ましいと考えられる。
勤務間インターバル時間が確保できなかった場合の代替措置については、健康・福祉確保措置の一環として実施される健康観察や面接指導等といった事後措置を目的としたモニタリングではなく、代償休暇など労働からの解放を確保するものであることが望ましいとの考え方や、代替措置によることが可能な回数について各事業場の労使協議で上限を設定するという考え方が示された。
また、義務化の度合いについても、労働基準法による強行的な義務とするという考え方、労働時間等設定改善法等において勤務間インターバル制度を設けることを義務付ける規定や、勤務間インターバルが確保できるよう事業主に配慮を求める規定を設けるという考え方、これらと併せて労働基準法において勤務間インターバル制度を就業規則の記載事項として位置付け行政指導等の手法により普及促進を図るという考え方、現行の抽象的な努力義務規定を具体化するという考え方等が示されており、様々な手段を考慮した検討が必要と考えられる。(「労働基準関係法制研究会」報告書より)
経済財政運営と改革の基本方針2025
「経済財政運営と改革の基本方針2025~『今日より明日はよくなる』と実感できる社会へ~」(骨太方針2025)が経済財政諮問会議での答申を経て、(2025年)6月13日に閣議決定されています。
閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2025」(骨太方針2025)8ページに「多様で柔軟な働き方の推進」という項目があり、そこに「勤務間インターバル制度の導入促進」記載されています。
石破内閣の骨太方針2025に「勤務間インターバル制度の導入促進」と書かれていますが、現在の努力義務のままでは無理だと思います。勤務間インターバル制度の義務化と明確にすべきではないでしょうか。
しかし勤務間インターバル制度の義務化といっても内容の乏しい義務化では意味がないので、今後の厚生労働省・労働政策審議会 労働条件分科会での勤務間インターバル制度に関する議論を注目すべきです。
追記:労働・使用・公益委員別の意見を資料に
今年(2025年)8月19日に開催されました第201回「労働政策審議会(労政審)労働条件分科会」で配布されました資料「各側委員からの主な意見の整理(案)」には、労働法制に関する論点別に労働者側委員、使用者側委員、公益(有識者)委員の意見をまとめた資料となっています。
(労働者側)
・ 労働者の健康を確保し、日々働きがいをもって働き続けられるようにするため、必要十分な睡眠時間を含めた生 活時間の確保が重要である。
・ 諸外国のインターバル制度では11時間が原則であることも踏まえ、11時間のインターバルを義務化する方向で検討すべき。
・ やむを得ない場合に例外措置や代替措置を認めることを前提にして規制内容を検討することにより、結果的に実効性がない制度となってしまっては本末転倒。勤務間インターバル制度をより多くの労働者に広げていくためには、代替措置等の例外は限定的なものとすべき。
・ 制度を導入していない企業の多くが超過勤務がないからという理由を挙げていることを考えると、導入割合が低いことは義務化が難しい理由にはならないのではないか。
(使用者側)
・ 現行の努力義務の下で、各社では労使で話し合い、例外事由や代償措置、 制度の適用範囲等のあり方が各企業の 実態に応じて様々な制度を導入してきたところであり、制度の検討に当たっては、原則11時間というような画一的な規制ではなく、既に導入している 企業の多様な方法を認める方向で検討すべき。
・ 災害時対応だけではなく、やむを得ないトラブル等にも対応できるような柔軟な制度とすべき。受注型の企業や下請企業で突発的に業務が発生する状 況も考慮が必要。
・ 初めから罰則付きではなく、猶予期間や経過措置を設け、まずは周知徹底や助成金の活用促進をしていきながら、段階的に制度導入を進めるべき。
(公益)
・ 現時点で最も多くの割合の企業が導 入している翌日の始業・終業時刻の後ろ倒しは、労働者のワーク・ライフ・ バランスにマイナスとなることから、 義務化の検討とあわせて、他の望ましい方法について周知することが必要。
8月19日に配信されたアドバンスニュース(「労働時間法制の具体的課題」をテーマに議論続行、労政審労働条件分科会 これまでの労使見解を整理し後半戦へ)には今回の労働条件分科会では前回に引き続き「労働時間法制の具体的課題」について掘り下げ、また、事務局の厚生労働省がこれまでの論点に対する労使の意見を一覧にして整理し、「これを基に、労使が意見の補強や論点の追加要望などを行った」と報じています。
またアドバンスニュースの記事には「今回の論点整理を踏まえ、年内の報告書取りまとめを念頭に議論は佳境に入る」と書かれています。
追記:労働市場改革分科会とりまとめ公表
厚生労働省が今年(2026年)6月2日公表した日本成長戦略会議の労働市場改革分科会とりまとめ(報告書)には「柔軟で多様な働き方を含む労働時間法制等に係る政策対応については、夏以降の労働政策審議会において、議論を行う必要がある」とあります。
そして「勤務間インターバル制度や連続勤務規制は、労働者の休息や生活時間を確保するために重要な制度であるが、現行の努力義務の下や現行の変形週休制の下では労働者の健康確保の観点から限界があり、勤務間インターバル制度の義務化や長期の連続勤務の制限などについて、例外措置や代償措置も含め検討を進めるべき、つながらない権利の導入も検討すべきとの意見があった」と書かれています。
また「労働者の健康確保や生活時間の確保が重要であり、これらは多様な人材の労働参加に当たっても重要であることから、連続勤務規制や勤務間インターバル制度の法的位置付け、『つながらない権利』の在り方、副業・兼業に当たっての健康確保、テレワークの活用促進などについて、現場の実態や労使双方の立場を十分に踏まえて、検討を進める必要がある」とあります。
つまり連続勤務規制や勤務間インターバル制度の法的位置づけについては、現場の実態や労働者(社員・職員)側・使用者(経営者)側双方の立場を十分に踏まえて、今年(2026年)夏以降に労働政策審議会(厚生労働大臣の諮問機関)労働条件分科会において「検討を進める必要がある」と労働市場改革分科会とりまとめ(報告書)に明記されました。
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