裁量労働制拡大の検討加速を高市総理が日本成長戦略会議で厚生労働大臣に指示
高市総理は日本成長戦略会議で裁量労働制や変形労働時間制など労働時間制度の見直しについて検討を加速するよう上野厚生労働大臣に指示。*写真は首相官邸ウェブサイトより転載
裁量労働制拡大と高市総理
昨日(2026年4月22日)第4回 日本成長戦略会議(議長は高市総理)が開催されました。
その会議で労働組合の連合会長・芳野委員は「分野横断的課題への対応の方向性」に対する意見書を提出しています。
その意見書には「裁量労働制は、厚生労働省の調査でも、適用労働者の方が長時間労働者の割合が高く、裁量や適切な処遇が必ずしも確保されていない実態があるため、制度の拡充ではなく、2024年改正を踏まえた厳格な導入手続や定期的なモニタリン グなどの適正運用の徹底を進めることが重要である」と書かれていました。
*2024年改正とは、専門型裁量労働制の対象業務拡大にともない、労働基準法第38条の4第1項の規定により同項第1号の業務に従事する労働者の適正な労働条件の確保を図るための指針も改正されました。これにより従前から企画業務型裁量労働制に求められていた健康・福祉確保措置の強化が、2024年度以降は専門業務型裁量労働制にも求められることになりました。
芳野委員は裁量労働制の拡充(拡大)ではなく2024年の裁量労働制改正を踏まえた厳格な導入手続きや適性運用の徹底を訴えていましたが、高市総理は、日本成長戦略会議(第4回)の議論を踏まえ、首相官邸ウェブサイトによると次のように述べています。
「上野大臣(厚生労働大臣)は、『裁量労働制』や『変形労働時間制』など労働時間制度の見直しについて、現場の実態や労使双方の立場を十分に踏まえて、検討を加速してください。裁量労働制につきましては、経済界として健康確保、長時間労働防止、処遇改善にしっかり取り組まれるとの御発言も踏まえまして、こうした濫用防止措置を前提に制度対象の在り方について、見直しの検討を進めてください。また、現行の労働時間規制の運用についても、労働時間や労働者の健康確保措置に関する労使の合意に則った指導を行うよう、見直してください」と。
裁量労働制拡大と上野厚生労働大臣
前日(4月21日)上野厚生労働大臣は会見で記者から「裁量労働制について伺います。先日(4月)17日の労働政策審議会(労働条件分科会)の中で、裁量労働制について、適用者の実働時間などの調査(裁量労働制実態調査)を行うという発言があったかと思います。調査の目的、期限、さらにその結果をどのように活用していくのか、現時点で決まっていることを教えてください」と質問されています。
それに対して上野大臣は「今後、裁量労働制等についてご議論いただくに当たっては、その実態を十分に把握することが重要だと考えています。先週17日(金)の労働政策審議会労働条件分科会において、令和6年度(2024年度)に施行された裁量労働制の制度改正を含めて、現行の裁量労働制の実態などを把握するための調査を行う旨を表明したものです。しっかり調査を進めていきたいと考えています」と答えています。
また記者から「労働時間規制の関係でお伺いします。昨日(4月20日)、上野大臣は官邸で取材対応され、『総理から労働時間規制に関しては分科会の中でしっかり議論を進めてほしいという話があった』とお話しされていました。『しっかり議論を進める』という内容をもう少し詳しくお伺いさせてください。高市総理が施政方針で示された裁量労働制の見直し検討についての指示はあったのでしょうか」と質問されています。
この質問に対して上野大臣は「昨日(4月20日)、私から総理に対して、労働時間法制に関する議論の状況と今後の議論の進め方等についてご報告を行いました。具体的には、労働時間制度については、裁量労働制や変形労働時間制、勤務間インターバルなど様々な制度がありますが、それらについて現在、労働市場改革分科会や労働政策審議会で議論を行っており、その状況についてご報告したものです。総理からは、こうした労働時間規制の在り方については、しっかりと議論を進めてほしいという指示をいただいたところです。引き続き、働き方の実態とニーズを踏まえて、労働市場改革分科会や労働政策審議会において、運用・制度の両面から、議論を進めていきたいと考えています」と回答しています。
news23が裁量労働制見直し検討指示を報道
Youtubeチャンネル「TBS NEWS DIG Powered by JNN」は『高市総理が「裁量労働制」の対象見直し検討を指示 柔軟な働き方などの実現へ 「裁量労働制」どんな働き方?【news23】|TBS NEWS DIG』と見出しをつけた動画を投稿しています。
日刊スポーツの記事『小川彩佳、高市首相肝いり政策で懸念「望まない形の長時間労働に…」裁量労働制見直しめぐり』によると、news23に出演するフリーアナウンサーの小川彩佳さんは「(裁量労働制の)必要性を訴える声がある一方で、(高市)総理の発言の中には『乱用を防止する措置というのが前提』という言葉もありました。裁量労働制といっても、働き手自身に裁量がない場合もあるわけですよね。どのような働き方を選択するか自由に決められない場合に、本人が望まない形での長時間労働につながるのではないかという不安も根強いと思います」と懸念を示しめしています。
また東洋経済オンラインのウェブ記事(空前の賃上げラッシュの裏で進む「名ばかり裁量労働」拡大議論の無理筋/営業職への拡大が招く「定額働かせ放題」の罠)の中で、風間直樹・東洋経済コラムニストは「経団連はこれまでも長年にわたって裁量労働制の対象拡大を訴えてきた。目下も残業上限の規制は維持すべきとしつつ、裁量労働制については『拡充は喫緊の最重要課題』と位置づけ、過半数労組と合意すれば対象業務を拡大できるような仕組みの導入を求めている。具体的には営業職やコンサル業務への拡大を意図している」と述べています。
日本弁護士連合会の会長声明
高市総理が日本成長戦略会議で裁量労働制など労働時間制度の見直しについて「検討を加速」するよう上野厚生労働大臣に指示したのが(2026年)4月22日ですが、その2日前の4月20日に日本弁護士連合会の松田純一会長は声明を公表しています。
その声明には、まず「政府は、2025年11月4日、日本成長戦略本部を設置し、本年(2026年)1月22日、『労働市場改革分野の検討を進める』ことを目的として、同本部の分科会として労働市場改革分科会が設置された。そして、本年2月20日、高市内閣総理大臣は、第221回国会における施政方針演説において、裁量労働制の見直しを行うことを表明した。本年3月11日に開催された第1回の分科会において『今後の進め方』が示され、僅か2か月後の本年5月頃に取りまとめを行う予定であることが明らかにされた」とあります。
そして「今般、政府が本年(2026年)5月頃の取りまとめを目指すとした発表をしたことを受け、当連合会は、改めて、労働法制審議については、委員の構成バランスを欠いている分科会(日本成長戦略会議の労働市場改革分科会)やWGで拙速に議論するのではなく、公労使三者構成原則に則って組織されている労働政策審議会において公正な審議を行うとともに、上述の調査結果や、裁量労働制の問題点を踏まえた、規制強化も含む労働法制審議を行うことを求める」とあります。
つまり、労働政策審議会の労働条件分科会で2019年に調査し2021年に調査結果を公表した裁量労働実態調査の分析などを踏まえて、公正に慎重に審議すべきということです。
その声明にもかかわらず、高市総理は翌々日(4月22日)に裁量労働制の検討加速を上野厚生労働大臣に日本成長戦略会議の席上で行っています。
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