多様で柔軟な働き方の推進(経済財政運営と改革の基本方針2025)が気がかり
厚生労働大臣の諮問機関・労働政策審議会の第200回(2025年6月16日)労働条件分科会の議題の一つが「『経済財政運営と改革の基本方針2025』(骨太方針2025)等について」とされていますが、骨太方針2025には「多様で柔軟な働き方の推進」という項目があります。「多様で柔軟な働き方」と言えば聞こえはいいのですが?
経済財政運営と改革の基本方針2025
2025年6月13日、「経済財政運営と改革の基本方針2025~『今日より明日はよくなる』と実感できる社会へ~」(骨太方針2025)が経済財政諮問会議での答申を経て、閣議決定されています。
閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2025」(骨太方針2025)8ページに「多様で柔軟な働き方の推進」という項目があり、次のように記載されています。
(多様で柔軟な働き方の推進)
短時間正社員を始めとする多様な正社員制度、勤務間インターバル制度の導入促進、選択的週休3日制の普及、仕事と育児・介護の両立支援、全ての就労困難者に届く就労支援 に取り組む。
いわゆる「年収130万円の壁」を意識せず働くことができるよう、2025年度中に、労働時間の延長や賃上げを通じて労働者の収入を増加させる事業主を支援する措置を実施する。
働き方改革関連法施行後5年の総点検を行い、働き方の実態及びニーズを踏まえた労働基準法制の見直しについて、検討を行う。
国家公務員について、優秀な人材の獲得及び定着のため、民間の人材獲得に向けた取組を踏まえ、働く時間や場所の柔軟化、人材マネジメントの強化、採用プロセスの弾力化、 処遇の改善を進める。
実態?ニーズ?を踏まえた労働基準法制とは
まず、経済財政運営と改革の基本方針2025(骨太方針2025)に「勤務間インターバル制度の導入促進」と書かれていますが、現在の努力義務のままでは無理だと思います。勤務間インターバル制度の義務化と明確にすべきではないでしょうか。
しかし勤務間インターバル制度の義務化といっても内容の乏しい義務化では意味がないので、今後の厚生労働省・労働政策審議会 労働条件分科会での勤務間インターバル制度に関する議論を注目すべきです。
次に、経済財政運営と改革の基本方針2025(骨太方針2025)に「働き方改革関連法施行後5年の総点検を行い、働き方の実態及びニーズを踏まえた労働基準法制の見直しについて、検討を行う」とありますが、働き方の実態、またニーズとは何を意味しているのか、よく注視していく必要があります。
第197回(2025年5月13日)労働条件分科会の議事録を読むと、首藤若菜教授が「今回の労基法の、前回の働き方改革における改正後に、働きがいを失うような事態が起きているのではないかということが使用者側の委員から、幾人かの方から御指摘を受けましたし、経団連さんの経労委報告の中でもたしかそうした記述があったような気が記憶としてございます」と発言しています。
つづいて、首藤若菜教授は「多分、会社側から見て、経験的に、労働時間の規制の強化によって働きがいが失われるような事態が起きているのかなと予測をしますけれども、先ほど来、45ページ、46ページのデータ(*)などを見る限りは、そういったことがなかなか確認されないので、ぜひ何かデータ等の根拠を示していただけると、今後の議論にとって非常に有益かなという気がしております。労働時間の抑制によって働きがいが持てないということがもしあるのであれば、その根拠を示していただくようお願い申し上げます」と。
また、「今回の法改正によって短期的に働きがいの喪失が起きたとしても、例えばヨーロッパなどでは日本より労働時間規制が厳しい国はたくさんあるわけで、そういった国で働きがいをみなが持てていないのかというと、多分そういうわけではないと思いますので、それが短期的な要素であるのか、より構造的な要素として考えられているのか、その辺も併せて何か示していただけると、今後、インターバル規制等の議論に有益なのではないかと思いました。よろしくお願いします」と述べられていました。
首藤若菜教授も使用者側委員の「働き方改革における改正後に働きがいを失うような事態が起きているのではないか」という使用者側の委員発言に強い疑念を持たれたようです。
データなどの根拠のない「働き方の実態」「ニーズ」が労働条件分科会の中で堂々と主張されたとしても、今の公益代表委員(有識者)の中で糺すことができる人は新たに委員になった首藤若菜教授ぐらいではないでしょうか。
*首藤若菜教授発言の中に「45ページ、46ページのデータ」とありますが、厚生労働省が準備した資料「労働時間法制の具体的課題について①」の45ページ、46ページ、つまり労働時間制度等に関するアンケート調査(令和5年)からまとめられた一般(労働者)所定労働時間・残業時間 と労働時間(残業時間の認識)のことだと思います。
労働時間法制の具体的課題について①(PDF)
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