風燕伝: 清河裏物語解説 英雄の陰で暗躍する懸剣 <無間無相 田英> その三完結
皆さん風燕伝楽しんでいますか?
風燕伝のストーリーと文化要素はファンタジーと実際の歴史を実に上手く融合させて作られていると思います。
その魅力を他のユーザーにも感じて貰いたいと思いこのような記事を無定期ですがやっていきたいと思っておりますのでこれからもよろしくお願い致します。
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※あくまで専門家ではなく素人一個人の趣味でやっておりますので間違っているところや不足な点があれば優しく指摘いただけると幸いです。
またどうしてもネタバレが含まれる事があるので観る前に是非ご了承ください。
前々回と前回の記事

-帰還する者-
清風宿の変のあと南唐は厳戒態勢を取り国境を封鎖、更に何としても契丹への和睦として使者を暗殺した者を討ち取っろうと織金閣に犯人の追跡を依頼した。それにより田英は江南からの脱出を阻まれたため変容の術で顔と身分を偽り南唐の監獄の奥深くに重罪人として身を潜め脱出の機会を待った。
時は流れ三年が経過した962年、時代も後周から宋と変わり南唐の警戒が緩んだ隙をみて魏先生から田英の救出を引き受け、江南に潜伏していた江無浪は監獄で田英と接触する事ができ二人は協力し織金閣の追跡を掻い潜りながら田英はついに南唐の国境を越え清河に帰還する事が出来た。
そして今回の帰還で田英は三年前に果たせなかった二つの誓いを果たすこととなる。
その一つ目の誓いのために旅途中で追手から奪った一対の瞳を冷気が漂う箱に納め田英は彼女と再会するため月湖へ向かった。

-盲目の女神との別れ-
約束が遅れてしまった、まだ彼女は怒っているのかな…
田英は月湖まで来ると静かな水面に映った自分の不恰好な髪を見て思わず手でかきあげ整えた。

一つ目の誓いとは三年前に一対の瞳を渡し光明を取り戻すと誓った月神・梨秦秦との約束でした。

時間を遡って3年前、月神が義士団を討ち妙善が契丹の使者を見送ると、供に南唐へ向かうため三日後に二人は再会を約束し、梨秦秦は隠れ家へ戻り長旅の支度をしていました。

がこの時隠れ家に仕掛けていた侵入者用の罠が次々と作動し何者かが隠れ家に侵入してきました。

この襲撃者の正体とは契丹使者を討ち損ねた江湖義士達の仇を討とうとする者達でした、漢人の剣客である月神が契丹人を守り義士達を殺めた事が、事情を知ることのない他の義士達にとっては国の裏切り者、または一族の仇として受け取られたのでしょう、義士達は当時月神の友人で師としても親しんでいた清河八駿の豊能奇に詰め寄り、最終的に豊能奇は月神の居所と彼が制作した隠れ家の仕掛け図を渡してしまいます。


何故月神の居所を教えたかは詳しく描写されてはいないのですが恐らく彼女は余りにも無実な人々を殺めてしまったのでしょう、その罪は長年親しんできた仲とはいえ変え難い事実でした。

また豊能奇はかねてより彼女の生業を危惧していた
突然の襲撃に梨秦秦は驚きながらも支度を途中でやめ剣を取り次々と襲いかかる者達を切り倒して行きます、がいくら腕が立つ月神とは言え多勢に無勢、何とか襲撃者を討つことが出来たが彼女もまた深手を負ってしまいます。

今まで歯を食いしばり何とか生き抜いて来た彼女ですが、流石に今回は駄目かもしれないと察した梨秦秦は約束の地に行くことを諦め一枚の手紙を残す、そして最後の力を振り絞り古い翡翠色の花嫁衣装に着替えた、何故花嫁衣装を選んだのかそれは梨秦秦にもよく分からなかった、只もしいつの日かあの人が約束を果たしにまた再会できた時、自分のこの姿を見て月神が誰なのかを思い出し、そして彼女のことを忘れずにいてくれるかもしれない。
そう思い谷の間から差し込む淡い光が当たる石座に横たわり、彼女はあの人の名を小さな声で呼ぶと静かに眠りについた…

そして三年後…

一歩遅かった…いや一歩というものではない…
彼はあの時三日待ったが、彼女は三年前のあの日からずっと待っててくれていた…
石座で花嫁衣装を着て静かに眠る彼女を暫く見つめ田英はこの時初めて気づくのです、月神がかつて青年時代に小鹿村で救ったあの盲目の少女だったと…
彼女を死へ追いやった自分の罪の始まりは何時だったのだろうか…
三年前、月神に使者の護衛を依頼した時か?
いやもっと前、彼女に初めて会い自分の小剣を渡した時なのか?

君に、新しい目を贈る。
彼女への罪は償う事はもう出来ない、が彼女への誓いは果たす。
田英は瞳が入った箱を石台に置くと震える手で手紙を書いた。
手紙の最後に「梨秦秦」と署名し、静かにその名を囁いた。
田英はこの時生まれて初めて感情に押し潰されそうになっていただろう、しかし彼はここで立ち止まる訳にはいかない、ふっと滅仏を聞かされた晩、魏先生が言っていた言葉が頭を過ぎる。
「知我罪我、其惟春秋」
(私を理解する者、あるいは私を責める者は、おそらく「春秋」だけだろう)
地獄に堕ちる覚悟はあの晩からとうに出来ていた。
そう自分に言い聞かせると田英は彼女に触れることなくその場を離れた。
途中一度だけ彼は振り返った、彼女の瞳に光が宿るところを、そこに映る自分の姿を見たかった、もしあのとき…だがもう「もし」はない。
-旅立つ者-
清河に帰還する者がいれば、旅立つ者もいる
田英が清河に帰って来るのと同じ頃、3年前に行方不明となった江無浪の手掛かりを探すためかつて江おじさんと暮らしていた竹林小屋を尋ねた我ら主人公ですが突然黒衣の剣客に襲われます、しかし何故か剣客は主人公が赤子の頃から肌身離さず付けていた玉だけを奪い去っていった。

襲撃後竹小屋に残された、三年前に魏先生から江無浪への手紙を手に入れると主人公は江おじさんは「田英」という人物を探しに行ったのを知る。その後紅線と供に寒おばさんを尋ねたあと清河各地で散らばる田英の痕跡を捜索する旅に出た。
そして豊作村に着き田英の幼馴染である燕大鉄の案内で春秋別館の調査をする事となり別館は田英の首を狙って清河にやって来た織金閣によって占領されていた。

織金閣を倒しながら別館の地下施設へ進むと懸剣という組織の資料や痕跡から妙善と田英の繋がりを見つけ更に奥に進むと織金閣の刺客と勘違いされ留守役だった十七坊とやむなく戦う事となった。

戦いの途中で織金閣に龍頭の像を落とされ、偶然にも主人公は龍頭に隠されていた妙善の仏光石の片割れを見つける。
その後十七坊は別館の皆がばらばらになったあと魏先生は彼に、いつか皆が帰ってきた時再びこの地で皆が修練できるよう剣を一万本鍛える任務を与えてくれたという。(魏先生の真意は後周が滅んで世は再び乱れ、まじめで優しい十七坊の安全を考量し彼に任務を与え別館の奥深くに隠し留めるつもりだった)
そして史実主君柴栄亡きあと、魏仁浦は自ら宋に従臣し趙匡胤は柴栄の意思を引き継ぎ、太平の世の実現のために文官を重用した、そのため魏仁浦は再度宋の宰相として活躍しその後も趙匡胤に信頼され老後は皇子の教育係となった。
次に主人公は妙善禅師の手がかりを探るため彼のゆかりの地である善妙州を尋た、慈心町に着くとここでは紫色の曼荼羅花・仏花を栽培していてそれを仕切っていたのが織金閣と結託し慈心山院を占拠していたかつての妙善の一番弟子慧薬だった。

慈心町で出会った楊一先から苦海彼岸に向かったきり、帰ってこない仏彫職人の父の行方と帳簿を持ち帰って欲しいと頼まれ主人公は苦海へと向かう、がそこで懺悔塔から解き放れ再び狂い、心魔に囚われた葉万山の討伐をすることとなる。

959年柴栄は軍を率いて北へ進軍これにより籠城していた葉万山の心に再び火が灯す、が柴栄の北伐は進軍途中で彼の病によって志半ばの撤退となった、一度灯した火が消えその反動は大きく北伐撤退を知った葉万山は愚かにも部下に契丹人の格好をさせ、街を襲撃し契丹の仕業と見せる事で朝廷に圧力を与え、再び北伐が再開するのを図った…だがこの襲撃で部下達は心神喪失し我に帰った葉万山は心の安寧を求め寺院へ向かう、寺院の住職妙善は彼らを苦海の塔の中に閉じ込め懺悔修行を命じた、そして妙善は南唐へ旅立つ前に仏光石を二つに割り片方を葉万山に持たせ、これを法具としていつか彼が心魔に打ち勝ち鉄心将軍として帰還できるよう願った。
しかし柴栄が世を去り後周が滅亡したのを知ると葉万山の心はついに崩壊し、塔を飛び出した軍は苦海寺院の僧侶、騒ぎに駆けつけた慈心町の仏堀職人達共々虐殺した。葉万山の心はもう戻る事がかなわず彷徨う心魔となった。(この虐殺によって慈心町は職人を多く失い生計を立てる事が出来ず後に織金閣の仏花栽培の農奴となった)
苦海へ来た主人公は彷徨う葉万山を討伐し成仏させもう片方の仏光石を手に入れる。

仏光石を全て手に入れ帳簿を楊一先に返し彼から「仏光頂が三度目に光る時妙善が帰ってくる」という伝承を聞きつけると仏光頂へ向かいそこで塔頂の仕掛けを見つけ仏光石を設置した、すると塔は三度目の大きな仏光に包まれた。

-仏光頂は三度光る-
月湖を去った田英は二つ目の誓いを果たすため仏光頂付近の小屋へ向かった、がその途中で突然仏光頂が三度目の仏光を発した。
三年前仏光石を半分に割りそれらを葉万山と十七坊に託したはずが今それを再び集め仏光を灯したのは何者なのか。
心魔を打ち勝ち苦海から脱した葉万山か?帰還した他の懸剣の同志か?それとも追手の織金閣か?
田英には見当がつかなかったが今後の計画に支障をきたす事は出来るだけ避けたい、そこで彼はそれを確かめるべく再び妙善禅師として仏光頂へ向かった。

仏光頂に着くと仕掛けを作動させ妙善は仏光頂の最下層へ降り金剛手菩薩や金剛力士の巨像が聳え立つ行場で座禅を組み来訪者を待った。
しばらすると見慣れない若い剣客が行場にたどり着き、妙善はゆっくりと振り向きながら若者にこう問いだす

「若施主よ、其方が知りたいのは拙僧の「法相」か?それとも「真相」か?」
若者からの返答はない、ならば拳で聞き出すまで。と妙善は若者に襲い掛かった、若者もすかさず剣を抜き応戦する。
戦っていくうちに田英は若者の剣術に何処かで見た事があるような違和感を感じ更に確かめるべく一旦引き下がると手を合わせた、その瞬間薄暗かったはずの行場に仏光が灯し真昼のように辺りを明るく照らした、妙善も構えを金剛手菩薩の相へ変え戦いは一層激しさを増していく。

だがこの若い剣客もここまで辿り着くのに織金閣を蹴散らし、十七坊を倒し更には鉄心将軍・葉万山を討伐した器である。
妙善は当初殺さず真意を聞き出そうとしたが、この若者の底知れぬ意志の強さと成長の早さに己の命の危機を感じ、遂に袈裟を脱ぎ折れた錫杖の鋭い石突を剣替わりに握り、金色の菩薩面を取り払うと暗殺者田英の「真相」を若者に曝け出した。

ここまで来るともはや田英の技に慈悲はない、一手一手に相手を死に追い込む殺気が込められている、それでも何とか喰らいつき一瞬の隙に若者は渾身の一撃を田英の体に叩き込んだ。

この瞬間先ほどまで田英が感じていた違和感は確信へと変わった。

若者の剣技はかつて南唐を脱出する時に供に戦った江無浪の無銘剣である、するとこの若者が江無浪が言っていた「あの赤子」…

次の瞬間田英の体は大きく吹き飛ばされ後方に立つ金剛手菩薩像に叩きつけられた、更にその衝撃で像は田英に追い被さるように床に倒れ床はその重みに耐え切れず大きく崩れ二人は巻き込まれ地の底へ落ちていった。

若者が目を覚ますとそこは地底湖の中だった、その時背後に目を閉じ微動せず静かに暗い湖の底へ落ちていく田英の姿が…それを見届けると若者は光に向かい何とか脱出した。
これより妙善禅師・暗殺者田英は死んだ。
-無間無相-
無間:途切れなく続く時間・空間、または途切れなく苦しみを受ける様子
無相:固定された姿や形特徴がないこと、または一切の執著から離れた境地
妙善禅師・暗殺者田英が死んだという噂は江湖にすぐに広まった。
田英を討ち取ったという報告は彼の遺品と首と共に追跡していた織金閣に届けられた、織金閣との約束通り討ち取った者は南唐朝廷の高官に封じられその後、その者は清風宿で契丹使者を暗殺した刺客の首を手土産に南唐使者として契丹へ赴き遼国に臣従する旅に出た。

紫は伝統的に最高位なので位の高い人物だと分かる
この田英を討ち取った者とは梨殿「梨中兌」である、この江湖人はかねてより南唐と通じ、暗殺者田英を討ち取った暁には己の富のため契丹へ赴きたいと申していた。
そして彼が織金閣の護衛と供に契丹へ旅立った後、彼の支度小屋には一枚の手紙が残されていた。
その手紙の内容とはこうである
某(それがし)、魏は聞くところによれば史書にはまず公子が亡くなりその後斉の桓公が即位したと書かれているそうだ。
そして歴史は今、巡り巡って先に田英の死があり、その後梨氏の生が続く…
そうです、田英は自分の死を偽造し再び顔と身分を変え梨中兌として単身契丹へ潜伏したのです。

三年前、柴栄がこの世を去ると続けて懸剣のメンバーである諸清泉もまた北の地で倒れた。

太平鐘楼の一件の後も二人の絆は変わらないのが伺える
彼のその後の行方は本章で戦友の伊刀が寒おばさんへ伝えることとなる…
諸清泉は「先断使臣、後潜契丹」策の片翼にあたる契丹に潜入する役を任されていました、しかし彼は無念にも北の地で倒れその役が居なくなると策は失敗となり、今後華北王朝は契丹と南唐の調略に対抗できなくなってしまう、それを危惧した魏先生は一時南唐に囚われていた田英に望みを託した、彼が帰還した時に諸清泉の代わりに潜入を実行出来るよう裏で懸剣として最後の任務である「田英死、梨氏存」の準備を整えた。
途中で主人公の介入があったが、結果的に「田英の死」を演出できた事に変わりは無いので田英は戦いの中で主人公が江無浪の育て子と悟った瞬間、臨機応変にこの機を利用したのでしょう。(まだ本気を出していなかったという事…)

また彼と再会する時は来るのでしょうか…
こうして何度でも執着なく名を捨て、顔を捨て、時には命すら捨てる覚悟で戦乱の世のために光を求める「侠」の物語はまだまだ続いて行くのでした。
以上で清河編、無間無相 ・田英の物語の解説はここまでとさせてください。
最後に田英が震える手で書いたあの手紙の行方を少し追って終わりたいと思います、最後までご観覧いただきありがとうございました。
-光なき浮世-
仏光頂の三度目の仏光からしばらく経ち、活人医館の天不収の所に一通の手紙が届く、差出人は梨秦秦と署名されていたがどうも梨秦秦にしては様子がおかしいと思った天不収は主人公を誘い一緒に月神が住んでいる月湖へ向かった。

二人は隠れ家に着くと三年前に清河義士の襲撃によって亡くなった花嫁衣装姿の梨秦秦を見つけた。その近くの石台には冷気が漂う箱の中に一対の瞳入っていた、更に横には手紙が一通埃をかぶったまま置いてあった。

手紙を開け読んだ二人ですがこの手紙が誰へのものなのか見当もつかなかった、だが活人医館に届いた手紙よりは梨秦秦らしさを感じると天不収は言う。
その後天不収は依頼された通り目の交換を試みたが、なぜか梨秦秦に拒否されてしまう。

すると彼女の願いは光を取り戻すことではないのかもしれないと察した天不収は主人公に彼女が望む物を探させた、主人公は彼女が大切に保管していた錆びた小剣を見つけ、手渡ししてみるも彼女はこれにも何の反応も示さなかった。


主人公は更に探索し隠れ家の奥で彼女が育てた月湖花を見つけ持ち帰ると、天不収は月湖花は一度絶滅したため彼女は相当な苦労をかけて育てたのだろうなと語った。そして主人公はこの花を彼女の手に添えた瞬間、梨秦秦は花と共に光の欠片となって舞い上がり静かに消えていった…

梨秦秦は最後、ただ平和な世に生まれ自分の意思で生きる小さな花のようになりたかったのかもしれません…
今回の記事で使った公式の田英と梨秦秦のPVは以下です
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