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【独り言】知人の陸上自衛官の苦悩

 「有事になれば、どの建物を壊すかを判断しなければならない」「ひどいときには、どの民間人を見捨てるかという判断に直面することになるかもしれない」これは仮定の話ではなく、野戦特科にいる知り合いの自衛官が、自らの職務について語った言葉です。

 野戦特科とは、榴弾砲などを用いて遠距離から地上目標を砲撃する兵科です。彼は、「自分の仕事とは、守るべき土地に砲弾を落として破壊することでもある」と語りました。防衛という職務には、守る対象を破壊するという側面も含まれています。その事実を、彼は淡々と言葉にしていました。

 防衛戦、特に地上戦は、どれだけ自分たちの土地を焼くかという判断でもあります。彼は、敵の侵攻を食い止めるために、どこまで自国の建物や道路、農地を犠牲にするのか。その判断は誰が、いつ下すのかという問いにも触れました。教義や規則は判断の基準を示しますが、現実には一つひとつの状況に応じた判断が求められます。
 
 これだけ聞けば、耐えがたい矛盾を抱えた職業に思えるかもしれません。しかし彼は、その矛盾を解消しようと語るのではなく、理念や思想だけで折り合いをつけられるものではないこと、そして今の自分には職務を淡々と遂行するしかない、という趣旨のことを話していました。

 この「淡々と遂行する」という姿勢は、感情を失ったという意味ではなく、矛盾を抱えたまま職務を果たすための構えとして、私には受け取れました。判断を下す場面では、確信があることと、それが適切であることは必ずしも一致しません。強い確信が、かえって状況判断を難しくすることもあるのでしょう。

 彼は最後に、今後さまざまな考えや経験に触れる中で、自分の考え方も変わるかもしれないと語りました。答えを急がず、自分の考えが変わる可能性を否定していませんでした。

 自衛隊という組織では、有事の判断は指揮命令系統のもとで行われます。しかし、その命令を具体的に現場で実行し、ときには状況に応じた判断を積み重ねるのは、一人ひとりの隊員です。国家防衛という大きな目的の下で、その判断を担う人々が何を抱えているのかは、制度の外からは見えにくいものです。砲弾を落とす判断を担う人間がそこにいて、実際に引き金をひく人間がそこにいます。「守るとは何か」という問いに簡単な答えが出ないまま、今日も職務に向かっている。その事実は、記憶にとどめておく価値があるように思います。

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