才能の再出発と、私の消えない葛藤。マンガワンの件を巡って思うこと
アクタージュの原作者が星霜の心理士の原作だったことについて。マンガワンの件を巡って思うことをまとめました。
幼稚園から高校までスクールカウンセラー(SC)として勤務経験がある、さいさいです。
今、話題のマンガワンの一連の事件…性加害者の社会復帰に関して考えたことをnoteにまとめようとおもった矢先
アクタージュの原作者であり、性加害の加害者が名義を変えて執筆していた件という続報が出てきました。星霜の心理士という最近話題になっていた漫画です。
私の中でどうしても整理しておきたい衝撃があります。 心理職として、そして一人の読者として、今感じている「わりと衝撃だったこと」をまとめたいと思います。
まず、何より衝撃だったのは、名義を変えて再出発していたこと、そして「心理職」がキーになる漫画を描いていたということでした。
本題に入る前に。今回性被害に遭われた方々、そして今回復中の性被害サバイバーの方々の回復を心より願っています。そして、この記事が、みなさんにとってさらなる苦痛にならないことを、安全な記事になっていることを願います。
Part 1:職業への「光栄さ」が、衝撃に変わった
私はその漫画を読んだことはなかったけれど、心理職が出てきて、物語の方向性をしっかり担っていると聞いていました。 「あぁ、この仕事の知名度が上がってきたのかな」「好意的に書いてもらえているんだな」と、すごく嬉しく思っていたんです。実は、読むのを楽しみにして「すぐ読む漫画リスト」の1位に入れていたくらいでした。
だからこそ、その裏側にあった事実を知ったとき、言葉にならない衝撃を受けました。
Part 2:気づかされた、無意識に加担する「恐怖」
私は、この人が復帰することをただ否定したいわけではありません。社会復帰は大事なことだと思います。 でも、もしこの事実が公表されていなかったら……と考えると、本当に怖いんです。
「あぁ、純粋に面白いな」と思って、いろんな人に薦めてしまった可能性がある。もし、その薦めた相手が性暴力の被害者だったとしたら。 相手を傷つけることに近づくような、他人に害を与えるかもしれない行為を、自分自身がしていたかもしれない。その「可能性」に、ものすごい恐怖を感じました。
Part 3:カウンセリングと「勇者パーティ」
小学館の声明によれば、作者の方はカウンセリングを受ける中で心理的な知識を得て、関心を持ってくれたそうです。「じゃあ勇者パーティを見たらどう思うんだろう」と考えて描いてくれた。
その経緯自体は、とても素敵なことだと思います。私たちの仕事は、どんな立場の人であっても支援していくものですし、この漫画を介して「あぁ、そういう仕事なんだな」と知ってもらえるのは光栄なことだと思っていました。 加害をした人が、カウンセリングによって変わっていく。それは現実としてあるべき姿だし、すべての人はそうなれると信じているので、そこは全然いいんです。
Part 4:知った上で、作品に出会いたかった
でも、そうだとしたら……やっぱり「それを知った上で作品に出会いたかったな」という気持ちが拭えません。 そうすれば、物語の背景にあるものを分かった上で向き合えたし、誰かに薦める時にも話題を考えられたはずです。
一人では楽しめたかもしれないけれど、これほど大きな背景を隠されたままだと、「すごくいい物語なんです」と純粋には言えなかったと思う……かなぁ。
Part 5:被害者の回復と、社会復帰のあいだで
私は性被害からの回復について特化した専門家ではありません。普通の心理師が知っていることしか知らないけれど、それでも回復には「安全」がいかに大事かは分かります。
加害者が社会復帰していくのは望ましいこと。それは分かっています。 でも、その人が表立って、社会的に成功していく姿が見えてしまうことは、被害者の方にとってどうなんだろう。
「自分はこんなに傷ついて、もう前の自分には戻れないと確信しているのに、なぜ加害者はのうのうと暮らして、成功できているんだろう」
そう思う人が少なからずいるはずです。その姿が見えてしまうことが、回復の妨げになったり、さらなる苦痛を与えたりすることにならないだろうか。 被害者に「許可」を背負わせるのも違うし、誰がどう判断すべきなのか。本当に難しいなと思います。
Part 6:支援者としての倫理観が、揺さぶられた
今回、何がそんなに衝撃だったのか。 それは私自身が「支援者として、人の害にならないこと」を一番の倫理観として持っているからです。まず「害にならないように気をつけよう」と考えて接している。
その土台を、なんだか崩されたような感じがして……正直「嘘でしょ?」と思ってしまいました。 「心理学で想像する(創造する)」と話題になっていたし、きっとすごく才能のある人なんだと思います。でも、だからこそ、その才能の出し方、あり方については、もう少し検討してほしかった。それをどう「オッケー」にしていくのか、もっと考えてほしかったなと思うんです。
Part 7:監修の公認心理師と担当の心理カウンセラーへの疑問
この漫画には公認心理師の監修がついています。
作画の担当者には伝えていたということですが、監修の公認心理師には背景が知らされていたのでしょうか?
知っていたとしたらその心理師は被害者への影響を言葉にしなかったのでしょうか・・・
ただ言ったことが記録に残っていない可能性はあるのでそこはわかりませんね。
また、担当の心理カウンセラーが「更生した」と判断したということでしたが、本当に言ったのか疑問に思います。個人的には、そのようなものを判断できる自信はありません。
というよりも、名前を変えて世に出る職業についてもよいという判断をしたならば、被害者への影響を考えて行動しているのかどうかをもう一度扱うべきだったんじゃないかなと思います。
そのあたりどのような話になったのかはわかりませんが、心理士の判断の大きさも感じます。
終わりに
最後は私自身の「お気持ち発表」になってしまいましたが、どうしても純粋に作品を楽しめないし、心理職の評価が傷ついてしまったようにも感じて、やるせない気持ちです。
難しい・・・
でも、かくして活動は違うし、明確に被害者がいる事件の加害者が表立って活動することは非常に難しい。
正解はわからないけれど、この衝撃と、支援者としての違和感を抱えながら、被害者に遭われた方々の害にならないこと,加害者も生活できることを考えていかなければいけないと感じます。
改めて、被害に遭われた方々が安全な感覚を取り戻せる日が1日も早くくることを願っています。私も安全な社会にするために出来ることを1つ1つやっていきたいと思います。
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