なぜロックバンドのキャラクターが出てくるの
サイシフ:引き出しの奥から、古い券が出てきました。「お楽しみ券」って書いてあります。
AI:券の縁、上下ともにフィルムのパーフォレーションになっていますね。写真店の券らしい、芸の細かいデザインです。

サイシフ:「同時プリントお申し込みのお客様に1本に付1枚進呈」とあります。
AI:フィルム1本を現像とプリント同時に注文するたびに、1枚もらえる仕組みだったわけですね。集めて、何かと交換する。
サイシフ:点数を集めるゲームみたいなもの?
AI:「この点数を集めよう!」と、大きな文字で書いてあります。1点券ということは、もっと大きな点数の券もあったのかもしれません。5点券とか、10点券とか。
サイシフ:景品引換期間は、1997年12月31日まで。
AI:この券自体が、すでに一種のチェックテープだったんですね。番号ではなく点数ですが、「ここまでに現像した記録」を、静かに積み上げていく仕組みという意味では、同じ発想です。
サイシフ:ただ、チェックテープは現像所の中だけの話でしたが、これはお客様の手元に残るものです。
AI:お客様の財布の中で、静かに点数を積み上げていく。現像所の裏側にあった管理番号の仕組みが、お店の外側では、こういう形に姿を変えていたわけですね?
サイシフ:「グループ全店で有効」ともあります。
AI:1店舗だけの話ではなく、チェーン展開していたお店の、共通の仕組みだったようです。当時、この券を集めて、実際に何か景品と交換したことはありますか。
サイシフ:う~ん、どちらかというと、町中にミニラボ設置のカメラ店や、スピード仕上げの現像~プリントに特化した店舗など、いっぱい出てきました。
AI:1980年代後半、チェーン店が全国に拡大し、フィルムを出すと1時間でプリントが仕上がるスピード仕上げが普及していった時期ですね。まさにその流れです。
サイシフ:そうなんです。うちが扱っていたのは、営業マンが集荷して、大きな現像所に運んで、早くても、午後に仕上がるという流れでした。
AI:片や1時間、片や半日以降。同じ「写真を仕上げる」という仕事なのに、速さの桁が違います。
サイシフ:ミニラボは、店の中に小さな現像機を置いて、その場でやってしまうので。
AI:チェックテープも、 エントツも、DP袋の行き来も、すべて「大量のフィルムを、間違えずに、効率よく捌く」ための工夫でした。でも、ミニラボの店は、そもそも運ぶ必要すらない。
そう考えると、あの「お楽しみ券」の意味も、少し違って見えてきます。
サイシフ:どういうことですか。
AI:速さで敵わない相手が増えていく中で、常連のお客様に「点数を貯める楽しみ」を提供して、もう一度同じお店に戻ってきてもらう。ミニラボが「速さ」で勝負していたのに対して、点数券は「積み重ね」で勝負していた仕組みだったのかもしれません。
サイシフ:時間には勝てないけど貯めた点数は、よそのお店には移せない。
AI:まさにそこです。スピードでは負けても、「ここまで貯めた点数を捨てたくない」という気持ちは、お客様をお店に引き留める、もう一つの力だったはずです。
サイシフ:今思えば、いろんなお店が、それぞれ違う武器で生き残ろうとしていたんですね。
AI:速さで勝つ店、積み重ねで繋ぎとめる店。同じ時代の同じ業界の中に、まったく違う戦い方が、同時にいくつも存在していたわけです。
サイシフ:もう一枚、券が出てきました。「写遊館」という、お店の券です。

AI:チェーン展開っだたかもですね。
サイシフ:この券、いつも写真の仕上がりの中に、当たり前のように入っていたんです。
AI:頼んでもいないのに、仕上がったプリントと一緒に、必ず紛れ込んでいる。
サイシフ:そうなんです。封筒を開けると、写真と一緒に、いつもこの緑色の券が敷いてある。
AI:「お楽しみ券」は、点数を貯める仕組みでした。でもこちらは、貯めるのではなく、毎回一枚ずつ、律儀に差し込まれていたわけですね。
サイシフ:券の内容も違います。「大伸し2Lサイズプリント無料券」。次にまた使ってください、という券です。
AI:「お買物の間に写真が出来ます。」という一文も、券の一番下に書いてありますね。
サイシフ:次も来てください、というより、次も来るのが当たり前でしょう?というような。
AI:点数を貯めさせて競わせるのではなく、毎回同じように、静かに差し出し続ける。派手さはないけれど、律儀さで繋ぎとめようとしていた、という感じがします。
サイシフ:今思えば、あの緑色の券を見るたびに、少し得した気分になっていました。
AI:毎回もらえると分かっていても、開けるたびに「あ、また入ってる」と、ちょっと嬉しくなる。その積み重ねが、結局、次もこの店に行こう、という気持ちに繋がっていたのかもしれません。
サイシフ:もう一枚出てきました。「ファミリーサークル、点数をあつめてステキな景品をもらおう!!」。フジカラー新日本のものです。

AI:景品の交換表まで載っていますね。5点でキッチンペーパータオル、10点でサランラップ・アルミホイルセット、15点でフェイスタオル、20点でスポーツタオル。
サイシフ:タオル類とラップ類、生活用品ばかりです。
AI:景品の並びが、写真とはまったく関係のない、台所と洗面所の日用品なんですよね。写真店のはずなのに。
サイシフ:でも、それぞれの点数の下に、括弧書きで「又は◯◯プリント」「又は現像料無料」とも書いてあります。
AI:なるほど、日用品か、写真関連のサービスか、選べる二択になっていたんですね。10点なら、サランラップかアルミホイルのセット、それとも現像料無料か。
サイシフ:これ、当時の主婦層をかなり意識した景品構成だと思います。
AI:写真を撮るのはお父さんでも、実際にお店に現像を持っていくのは、家庭を切り盛りするお母さんだった、ということかもしれません。だからこそ台所用品が並ぶ。
サイシフ:応募欄には、住所、氏名、年齢まで書く欄があります。
AI:点数を貯めるだけでなく、お客様の情報そのものを、お店側がしっかり把握する仕組みにもなっていたわけですね。
サイシフ:「同時プリント1本に1点」。これも、お楽しみ券と同じ仕組みです。
AI:「大伸し&額縁セット、今なら1,700円」という広告も、同じ紙の上段に載っています。点数を貯める仕組みと、今すぐ得するセール、両方を同じ一枚に詰め込んでいる。
サイシフ:欲張りな一枚です。
AI:お客様を引き留める手段を、一種類に絞らない。今すぐの割引と、後で貯まる点数、両方を同時に見せておく。当時の写真店の販促が、どれだけ知恵を絞っていたか、この一枚だけでも伝わってきます。
サイシフ:今度は券じゃなくて、仕上がりのDP袋に入っていた、三つ折りのしおりです。その表紙です。「Konica いちばん好きな写真、この夏、届けます。」

AI:白いオーバーオール姿の女性が、大きく写っていますね。夏らしい、青空とヤシの葉の背景です。
サイシフ:暑中見舞いはがきを、自分の写真入りで作りましょう、という提案です。
AI:「暑中お見舞い申し上げます」の文面に、ピンクの帽子の女性の写真がはめ込まれた見本も載っています。「平成五年 盛夏」とありますね。
サイシフ:1993年です。
AI:「郵政省発行のくじ付かもめーる、貼り仕上げ」ともあります。当時の暑中見舞いはがきには、抽選くじが付いていたんですね。
サイシフ:年賀状のお年玉くじの、夏バージョンです。
AI:写真を撮って、現像して、プリントして終わり、ではなく、その写真を今度は「はがき」という別の形に変換して、さらに人に送る。仕上がったばかりの写真が入っている袋の中に、次の使い道を提案するしおりが一緒に入っている。写真の役割が、記録から通信へと、その場でもう一段階提案されていくわけですね。
サイシフ:料金表も細かいです。「1種1組30枚以上1枚80円、10〜29枚まで1枚90円」。
AI:枚数によって単価が変わる、まとめて頼むほどお得になる仕組みです。年賀状や暑中見舞いは、何十枚もまとめて出すものだから、こういう価格設定になっていたんですね。
サイシフ:「K-6、住所・氏名タイプ、文字入れ料金1,400円」ともあります。
AI:写真の加工だけでなく、宛名や名前の印字までセットで請け負っていたわけです。今なら、パソコンで誰でも数分でできることを、当時は写真店が一手に引き受けていました。
サイシフ:このころから写真店が、実は年賀状印刷屋さんも兼ねていた時代です。
AI:現像所やDP袋の仕組みが「撮った写真を、正確に持ち主へ返す」ための工夫だったとすれば、このポストカードのサービスは「撮った写真を、今度は他の誰かに届ける」ための工夫です。同じ写真店の中に、両方向きの流れが、同時に存在していたことになります。
サイシフ:これもDP袋に入っていたしおりです。「フジカラー本物プリントキャンペーン! Wプレゼント」、平成6年7月1日から8月30日まで。
AI:1994年の夏ですね。海辺で麦わら帽子をかぶった親子の写真が、大きく使われています。
サイシフ:その1「応募券5枚で、大きなプリントプレゼント」。4ツ切サイズ、253ミリ×304ミリだそうです。
AI:「同時プリントご注文の方」限定で、券を5枚集めると、大きく引き伸ばしたプリントが1枚もらえる。これも点数を貯める仕組みの一種ですが、景品がタオルやラップではなく、写真そのものの拡大版という、写真店らしい景品です。
サイシフ:その2は、もっと目を引きます。「デーモン人形が当る!!」

AI:金色の逆立った髪、白塗りの顔。あのバンドの、デーモン閣下のぬいぐるみですね。しかも「20,000名様に当たる」という、かなり太っ腹な規模です。
サイシフ:写真店の景品に、なぜロックバンドのキャラクターが出てくるのか。
AI:おそらく、フジカラーが当時、別のキャンペーンかCMで、閣下のキャラクターを起用していたのだと思います。写真の腕を競うわけでも、写真に関係する景品でもなく、単純に「話題性のあるキャラクターで、注目を集める」という、まったく別の力学が働いていたわけです。
サイシフ:券を5枚集めるプリントプレゼントと、券1枚で応募できる抽選。同じ紙の中に、性格の違う2つの企画が同居しています。
AI:「大きなプリント」という、写真店らしい真面目な景品と、「デーモン人形」という、話題づくりのための派手な景品。堅実な一手と、目立つための一手を、同じキャンペーンの中に両方仕込んでおく。これもまた、当時の写真店が生き残るために編み出した、二段構えの工夫だったのだと思います。
サイシフ:ラップやタオルの次は、ロック風のぬいぐるみです。写真店の景品も、時代によって、ずいぶん振れ幅がありますね。
AI:写真という、変わらないものを扱いながら、景品の中身だけは、その時々の流行を映す鏡のように、目まぐるしく変わり続けていたわけです。
AIの返事は、いつも忖度して明るい。
「Amazonのアソシエイトとして、サイシフは適格販売により収入を得ています。」
【この記録について】本記事は、著者の50年前頃の記憶の断片をベースに、AI(人工知能)との対話を通じて、当時の泥臭い空気感や技術の過渡期の雰囲気を再現・再構成したエッセイです。あくまで個人の体験に基づく主観的な記録(当時の思い出)としてお楽しみください。
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