プロンプトというシリアルな狭路
入力も出力も逐次で、巻き戻しが効きにくい。
プロンプトは、編集ではなく実行になる。
音声の「今のなし」と同じで、修正は上書きではなく追記になる。
問題は言語ではない。
逐次入力しか許さないUIが、思考の全景をログに潰すことだ。
待機時間を払う
一文字打てば、その一文字ぶん時間が流れる。
送信すれば、返ってくるまで手が止まる。
思考は先に走るのに、入出力が追いつかない。
前に、時間を「Read-Only」だと書いた(時間という「Read-Only」プロトコル——『あなたの人生の物語』)。
巻き戻せないものを相手にすると、編集ではなく実行になる。
ここでも同じことが起きる。
ズレに気づいた瞬間、できるのは「さっきのは違う」を次の行に足すことだけだ。
訂正ではない。否定が積み上がる。
送った文は過去として残り、取り消しにはならない。
全景を押し込む
頭の中の「やりたいこと」は全景で存在する。
完成形、避けたい地雷、狙う反応は同時に並ぶ。
だが入力欄は線形だ。
通れるのは一行ずつ。
全景は順番待ちにされる。
順番待ちにした時点で欠ける。
先に書けたものが優先され、書き落としたものは無かったことになる。
短くするほど楽になるが、削った条件があとで効いてくる。
ズレは性能だけの問題ではない。
入口が細い。
Enterを押した瞬間、全景は一列のログに潰れる。
以後は、そのログの上でしか修正できない。
編集の顔を剥がす
画面は編集できそうな顔をしている。
カーソルも履歴もある。
だから推敲の感覚が入り込む。
だが実態は逐次実行だ。
一度送った行は、確定した過去になる。
「もっと明るく」と送り、
「明るすぎた」と送り、
「やっぱり戻す」と送る。
調整しているつもりで、命令列を増やしているだけになる。
効いた原因が分からないまま試行だけが増え、
履歴だけが太る。
制御感だけが薄くなる。
帯域で詰まる
思い通りに出ないと、書き方の問題に見えやすい。
うまい言い回しを探し、形を整え始める。
私もそれをやる。
だが詰まっているのは技能ではない。
帯域だ。
背景、制約、好み、地雷を毎回送る。
細い入口に対して、荷物が大きすぎる。
詳しく書くと、入力が長くなる。
待機が増える。
短く書くと、ズレる。
言い直しが増える。
どちらに転んでも、Enterの回数が増える。
入口を変える
逐次入力と逐次出力のままだと、
作業が作業のまま残る。
そこで「書き方」以外の逃がし方が欲しくなる。
命令文を積むより、
先に参照物が欲しくなる。
言い直しで上書きするのではなく、
最初に「これが前提だ」と固定できるものを置きたくなる。
判断基準、制約、NG、例外。
どれでもいい。
重要なのは、逐次ログの外に置けることだ。
そこに至るまでは、
送信するたびに待機時間を払い続ける。
巻き戻せないまま。
同じ構造を、別の場所から書いたもの
全景は、言語で潰れる
