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☆【小説】「龍と空色の歌」第21話【創作大賞2025応募】021 〜春スペシャル

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 第二十一話 一九八八年── 学会と柏木

 柏木は渡米している。
 仮住まいのホテルの一室。
 電話のベルが鳴る──

 誰だろう。連絡を取って来そうな相手の顔を一通り思い浮かべた。柏木の電話嫌いを知る仲間なら電子メールでメッセージをくれそうなものだ。
 柏木は電話での会話で時間を取られるくらいなら、目の前のコンピューター端末で分析処理のプログラミングをしていたい。それもあってか殆ど電話をしない。

 DEAPsの外部インターフェース部分は、帰国前に仕上げておきたい。
 日本には未だ巨大なデーターの塊を保管できるデーターセンター設備に乏しい。なので、必要なデーターが見つかり次第、柏木のコンピューター端末に送り込まれるような仕組みを構築する必要があった。日本に帰ったらデーターの分析をさらに進めてDEAPsを完成させるのだ。

 電話に出るとホテルのフロントからだ。
 英語で短く日本からだと告げられた後、受話器から男の声が鳴り響き出した。

「あの件どうなった?」
 電話の相手も確かめずに男は威圧的な声で柏木に訊く。
 主語もへったくれもない。かろうじて目的格はあるようだが、何なんだ。どの件だよ。こっちが質問したい。
 相手は学会の重鎮、大学の名誉教授だ。
 国にも睨みを効かしている。逆らったら国内での学位はままならない。関係する分野の企業でも彼に逆らえない。
「なんで、君は最近論文を学会に出していないのかね。何かあるわけ?」

 やれやれ、いつもの調子だ。
この手の「なぜ」、Whyから始まる質問は叱責の証。口にするのはクレーマーくらいなものだ。

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