チュートリアルを覚えたのに、応用できない理由|負け筋をほどく #001
こんにちは、映像クリエイターのサンゼです!
視聴者さんのお悩み相談生配信で、
「勉強しているけど、自信がない」という相談をよくもらいます。
この相談が来るたび、僕の中からパッション強めの自分が出てきます。
「いやいや、きみ!自信なんてもんは自分でつけなきゃいかんのだよ!」
でも、それが喉元まで出たところで、別の自分が現れて押し込めます。
「いや、『自信がない』って、お前自身もよく言ってたじゃん」
ぐぬ、、、
上手く行った自分だけを別名保存できればいいんですが、ずっと連なった僕自身の修正の歴史を無視するわけにもいきません。
相談を詳しく聞いてみると、悩みはだいたい同じ形をしています。
動画の通りには作れる。手順も分かる。
でも、いざ自分で考えて作ろうとすると、どこから手を付ければいいのか分からない、といったものです。
僕は、広告業界で約20年間、映像編集やモーショングラフィックス制作をしてきました。ありがたいことに、1,000本以上の作品づくりに携わらせてもらいました。
色々経験してきたけど、振り返ってみれば、僕もまったく同じ形で止まっていました。勉強しながら「やれどもやれども、不安は消えんなあ、、、」とよく感じていました。
こうなってしまうのは、単なる技術不足ではありませんでした。
今回は、以前の僕のように、学んでいるけど成長している実感が持てない方に向けて、等身大の自分の歴史を辿りながら「使える手札の増やし方」について書きます。
読んでくださった方からのコメントも掲載します。かなり長い文章になるのですが、体系立てて整理していくのでぜひご覧ください。
デザイナー職を目指してる学生はもちろん、若手のCGアーティスト、コンポジターは是非読んでーー📣🙋 https://t.co/wT0IqsdtAy
— K@miya. (@chiro_xyz) July 19, 2026
連載について
このnote『負け筋をほどく』では、映像クリエイターとして約20年で踏んできた負け筋を整理しています。連載のコンセプトはこちらです。
記事はマガジンにまとめています。
今回の負け筋
今回の負け筋は、かなりシンプルです。それは
「再現できる」と「使える」を、同じものだと思ってしまうこと。
僕自身が長い間そこに陥っていました。
先に断っておくと、チュートリアル学習が悪いわけではありません。チュートリアル動画は、右も左も分からない状態の人にとって、かなり役立つ学びの入口です。
僕自身、モーショングラフィックス制作に関しては、ほとんど独学で、オンライン上のコンテンツを軸に学んできました。
問題は、チュートリアルそのものではありません。
大切なのは「覚えた手順を、自分の制作や仕事にどう接続するか」を考えることです。
動画の通りに作れた。
見本に近いものもできた。
手順も覚えた。
その「作れた」という結果だけを見て満足し、参考の動画や本から何を受け取ったのかを確認しないまま進んでしまっていました。
というより、次から次へ数をこなせば不安が消えると思っていました。
でも、ここを軽く流すと、
勉強量は増えているのに、使える手札は増えません。
では、なぜ「再現できた」は「使える」にならないのか。
チュートリアルを見るときに、本当はどこを見るべきなのか。ここからは、僕自身が「できているつもり」で止まっていた頃の話も含めて整理します。
「再現できた」で止まってしまう
いまの時代は、学ぶ手段そのものには困りにくくなりました。
手順を日本語で丁寧に見せてくれる動画がある。記事もある。教材もある。分からない言葉があれば、AIに聞くことだってできます。
ひと昔前と比べたら、お手本どおりに形にすること自体は、ずっとやりやすくなりました。これは素晴らしいことです。
でも、その一方で、僕のように「勉強しているのに仕事になるとうまく使えない」と感じる人もいます。
情報は追っている。手も動かしている。流行も知っている。
でも、実際の依頼や自分の作品になると、組み立てられない。
この状態は、努力不足だけでは説明できません。
むしろ、努力しているからこそ分かりにくくなります。
前よりできることが増えているぶん、自分では前に進んでいる感覚がある。これこそが、「成長できているのか?」と混乱する入口になります。
実際の仕事や自主制作では、手順を知っているだけでは作品は完成しません。目の前の条件や頭の中のイメージに合わせて、覚えたことを組み替えて使っていく必要があります。
僕自身、この「組み替え」ができなくて、手が止まることが何度もありました。
僕も、できているつもりだった
偉そうにnoteを書いていますが、僕自身もずっと悩んでいました。
僕のチュートリアル学習は、フリーランスになる前からです。モーショングラフィックスは、Video Copilotのチュートリアルを筆頭に、独学で覚えてきました。
当時は、Ash ThorpやKyle Cooperのような世界観が好きで、アイアンマンに出てくるようなUIアニメーションにも憧れていました。そういう表現に近づきたくて、それっぽいものばかり真似していました。
見た目が近づいてくると、なんとなく分かった気になります。
でも、振り返ると、あれは誰かが作ってくれた物の雰囲気を借りているだけでした。
そのときは本気で「前に進んでいる」と思っていたんです。
だから厄介でした。
似たものは作れても、応用して何かつくれるかというとできない。憧れの見た目は追えている。
でも、空のコンポジションを前にすると手が止まる。
その繰り返しでした。
気がついたこと
きっかけは、チュートリアルの中ではなく、編集の現場にありました。
僕は普段、エディターとして立ち会い編集をしています。代理店の方や監督さんと同じ部屋で、映像を前に議論しながら仕上げていく仕事です。
そこではいつも「この課題を解決できているか」が議論されていました。
「どんな映像表現をするか?」ということは、
手段であって、目的そのものではない。
現場に立ち会ううちに、そう感じるようになりました。
同時に、こうも感じました。
僕ら作り手は、直接手を動かす側です。
気をつけないと、作業コストのほうに目が入ってしまう。
自分が苦労して作ったものに意識を持っていかれると、切り捨てることができなくなる。本質を見失って、踊らされてしまうんです。
本当に見るべきだったのは、その表現が「何を解決しているのか」でした。
このアニメーションは視線を誘導しているのか。レイアウトで情報を整理しているのか。そこを見ないまま表面だけ持ち帰っても、実際には使えません。
チュートリアルの数だけこなして表面だけ持ち帰ってきた自分にとっては、多くの時間を無駄にしたような、かなり痛い気づきでした。
補足
次の章からは、細かく解説をしていくのですが、要約すると「トレース練習をしろ」ってことを言っています。
ただ、何でそんなシンプルなことを長々と説明しているかというと、筋トレと同じで、同じ回数をするにも、何も考えずの消化試合的にこなすのと、フォームややる意義を意識してこなすのとでは結果が変わってくるからです。
「再現できた」と「使える」は違う
そこから、時間をかけて自分の中で整理しました。ここを整理しないともっと時間を無駄にしてしまう気がしたからです。
その中で気がついたのは「再現できた」と「使える」の違いです。
よく言われる言葉かもしれませんが、この違いを見つめ直すことで、沢山のことが分かりました。
分かりやすい例で言うと、九九に近い話だと思っています。
九九を暗記していれば、覚えた範囲では答えられます。でも、少し設問が変わったときに答えが出せないなら、それは仕組みを使えているとは言えません。答えを暗記しているだけに近い状態です。
僕もずっと丸暗記で誤魔化していました。
たとえば、15×9という問題に直面した時。
「15の段なんて覚えていないから分からない」となる。でも、仕組みが見えている人は、「10×9」と「5×9」に分けて考えられます。90と45を足すだけでいい。
僕らは機械じゃないから、憶えられることには限りがあります。
だから大切なのは、分解して構造として捉えることです。
構造が見えているから、組み合わせを変えられる。
これが「使える」という状態です。
映像で言えば、この「仕組み」にあたるのが、さっき出てきた「その表現が何を解決しているのか」です。
視線誘導という仕組みが見えていれば、モチーフや色が変わっても、同じ考え方で組み立てられます。逆に、表面だけ覚えていると、見本と同じ場面でしか出せません。
見本どおりなら作れる。でも、題材や順番や目的が変わると止まる。それはまだ「再現できた」の状態であって、「使える」状態にはなっていません。
作れた気がするものほど「使える」とは限らない。
ここは今でも、自分に言い聞かせて立ち返るようにしています。
頭の中にあるものが、そのまま出てこない
ここまでで、「使える」とは、構造を捉えて組み替えられる状態だという話をしました。
では、何のために組み替えるのか。
実際の仕事や自主制作では、最終的に「自分の頭の中にあるイメージ」を形にするために組み替えます。だから「使える状態」の土台には、「頭の中にあるものを、そのまま作り出す力」が必要になります。
この力は、さらに2つに分けられます。
1つ目は、イメージを鮮明に思い描く力。
2つ目は、思い描いたものを正確に作る力。
この2つがそろって、はじめて頭の中のものが形になります。
ただ、1つ目の「思い描く力」を育てるのは、かなり難しい。
たくさんの作品を見て、経験を積んで、何年もかけて育てるものです。
短期間の練習では伸ばしにくいので、この記事では扱いません。
ビギナーのうちに先に高めたいのは、2つ目の「正確に作る力」のほうです。
こちらは練習で伸ばせます。
見本をゴールに置く
ただ、ここで一つ問題があります。
「正確に作る力」を確認するには、イメージがズレていないかの答え合わせの相手が必要です。でも、頭の中のイメージを参考にスタートするとゴールの輪郭がぼんやりしていて、作ったものと見比べることができません。
頭の中のイメージをゴールにスタートするとズレているのかどうかすら、判定できない。これでは練習になりません。
だから、見本を用意してそれをゴールに置く。
そこで、まずは「見たものを、見たまま作れるか」をトライする。
これなら、見本と自分の作ったものを並べて、どこがどれだけズレているかを確認できます。
この「見たまま作る」練習で正確さを鍛えておくと、いずれイメージが育ってきたときに、それをそのまま形にできるようになります。
目の前の見本をそのまま作る練習は、遠回りに見えて、「頭の中にあるものを、そのまま作り出す力」への近道です。
「インプットのズレ」と「アウトプットのズレ」
では、実際に見本をゴールにして作ってみると、どうなるか。
やってみると分かるのですが、たいてい、どこかがズレます。
見たまま作っているつもりなのに、見本と同じにならない。
このズレの原因を探るために、「見たものを、見たまま作る」という作業を、もう少し細かく見てみます。
この作業は、「見本を見て受け取る」と「受け取ったものを手で作る」という2つの工程でできています。ズレは、必ずこのどちらかで起きています。
作る側の工程で起きるのが「アウトプットのズレ」です。
前の章で言った「正確に作る力」が、まだ足りていない状態です。
例えば、水彩で見本の紫を作るとき。
「紫は赤と青を混ぜる」と知っていれば早いですが、知らなくても、作れます。見本と見比べながら混ぜて試していけば、少しずつ近づけていけます。
だから、このズレはあまり心配いりません。
ズレていることが、自分の目で見えているからです。
見えていれば、直す方向も分かる。知らないことはチュートリアル学習を続けていけば埋まっていくし、手の加減は繰り返すうちに追いついていきます。
本当に厄介なのは、見る側のズレ
厄介なのは、見る側の工程で起きる「インプットのズレ」のほうです。
これは、作り方ではなく、見え方の問題です。
「作る力」ではなく、いわば「見る力」の問題。
そして、自分ではなかなか気づけません。
たとえば、目の前の紫を、よく見ずに「なんとなく赤」と捉えていたとします。すると、どれだけ作る技術が高くても、出てくるのは紫ではなく赤になります。
入口で受け取り間違えているので、その先の工程がどれだけ正確でも、ズレたまま出てくるんです。
ちゃんと見れば、「単純な赤じゃないな。少し青が入っているな」と気づける。そこに気づけるかどうかが、分かれ目です。
つまり、見る力が弱いままだと、作る力をいくら鍛えても、成果物はズレ続けます。
だから「正確に作る力」を高めようとすると、その手前で必ず「ちゃんと見えているか」という壁にぶつかります。まずは「インプットのズレ」のほうを、点検する必要があります。
トレースで見るべきなのは、自分の認識のズレ
では、このインプットのズレ、つまり自分の「見る力」は、どうやって点検すればいいのか。手がかりになるのが、トレース練習です。
生配信のお悩み相談コーナーでも、勉強の仕方を聞かれたときは「まずはトレースをきっちりやって、そのあとに少しアレンジしてみるといい」と答えるようにしています。
「再現できたで満足するな」と書いておきながら、「きっちり再現しろ」と言われると、矛盾するように感じる方もいるかもしれません。
でも、やることは似ていても、中身は逆です。
浅く似せて次の作例へ逃げるのか、そこで生まれたズレを点検の材料にするのか。
トレースで大事なのは、数をこなすことではなく、ズレの点検のほうです。
だから、「トレース練習だからこのくらいでいいか」と雑に似せて流してしまわないこと。それを怠ると、自分が何を見落としているのか分からないまま先に進んでしまいます。
ズレが無いように実際に手を動かしてトレースしてみると、自分の認識のズレが見えてきます。
あれ?余白のバランスが取れていないな。あれ?アニメーションのタイミングが全く合ってないな。案外、「こんなところでつまずくと思わなかった、、、」と気がつくと思います。
トレースで生まれる差分には、自分の「見る力」の弱さがそのまま現れます。
僕自身の反省なのですが、ここを「トレースだからこんなもんでしょ」と甘やかしてしまう。それを都合よく「自分なりのデフォルメ」と称して、これこそが自分の味だよね、なんて言い訳をしてしまっていました。
※注意
トレースは練習であって、作品ではありません。どれだけきれいに再現できても、人の目に触れる場所には出さない。SNSにもポートフォリオにも載せないこと。
条件を変えると、理解の深さが見える
いちど見本をきれいにトレースできたら、次はそれを「使える」に変えていく段階です。やることはシンプルで、九九の設問を変えたのと同じように、見本の条件を少しだけ変えてみます。
例えば、主役のモチーフが丸なら、まずは四角に変えてみる。
ここからで十分だと思います。
余裕がでてきたら、同じ手法を別のジャンルに持っていけるか試してみる。カッコいい系の表現を可愛い系に応用できるか?などです。
条件を変えても成立するなら、その表現の仕組みが掴めています。
逆に、変えた途端に崩れるなら、まだ表面をなぞっているだけ。
ここで、自分の理解の深さが見えます。
そして最後に、その表現が「何を解決しているのか」を言語化してみる。視線誘導なのか、情報整理なのか、テンポなのか。かつての僕が見ていなかったのは、まさにここでした。
言葉にできれば、その仕組みは条件が変わっても持ち出せます。
これを繰り返していくと、少しずつ「使える」状態に近づき、チュートリアルで学んだものが自分の手札になっていきます。
まとめ
最後に、ここまでの話を「使える手札」を増やすためのワークとして、3つに分けて整理します。
1.量をこなして、手を慣らす
初めは「やってみたい作例を真似する」ところからでいいと思います。難しく考えず、好きなもの、作ってみたいものを選ぶ。その過程で、ソフトのUIやショートカット、基本の操作に手が慣れていきます。
2.見たものを正確に捉えられているかを、トレースで点検する
操作に慣れてきたら、疲れは軽減されるはずです。
そこからは、数を増やすことよりも、作例にできるだけ近づける努力に切り替えます。見本との差分を通して、自分の「インプットのズレ」を知る段階です。
僕の体感では、この時期が一番しんどい。派手な進歩が見えにくいし、「自分はちゃんと伸びているのか、、、」と不安にもなる。
不安になると安心材料が欲しくなって、つい数をこなすことが目的になり、「手順の在庫」だけが積み上がっていきます。
怖いけど、数に逃げ込まない。
ここが一番大切なポイントです。
ふんばって作例に近づけようと粘っていると、少しずつ「見る力」が鍛えられ、それを直そうとする中で「作る力」も上がっていく。この二つが噛み合ってくると、自分の中に背骨ができて、見たものを、見たまま作れるようになっていきます。
3.その表現が何を解決しているのかまで掴む
トレースがきれいにできるようになったら、条件を少しだけ変えて、最後に「何を解決しているのか」を言語化する。ここまで見えると、学んだことは少しずつ、自分の手札に変わっていきます。
トレース練習は、認識の補正でもあります。そうなれば、チュートリアル動画はただの手順書ではなく、自分の目を鍛える素晴らしい材料になります。
冒頭の「自信がない」に答えます
最後に、冒頭の「勉強しているけど、自信がない」に、僕なりに答えます。
僕の場合、自信は、チュートリアルをこなした数からは生まれませんでした。数をこなしていた時期ほど、不安は消えなかった。
自信のもとになったのは、
見て、作って、ズレを見つけて、直した回数です。
つまり、「再現できた」を「使える」に変えた回数のほうでした。
不安が消えなかったのは、頑張りが足りなかったからではありません。
増やしていたのが、使える手札ではなく、手順の在庫だったからです。
だから僕もいまだに、新しい表現に触れるたびに自分へ聞くようにしています。
いま自分は、再現で止まっていないか。
この表現は、何を解決しているのか。
この問いを持って見本に向かえているなら、その勉強は、もう手札に変わり始めています。
次回の話
次回は、「練習で覚えた技術を実務で使うときに起きるズレ」について書きます。
練習までは「再現できるか」が問われます。でも仕事になると、「何を選ぶか」が問われます。この場面で覚えた技術をそのまま出すと、今度は「仕事では評価されない」に繋がることがあります。
次回はその話を、僕自身の失敗も含めて整理します。
さいごに
この連載は、僕が20年で転んできた場所を、順番に案内していく旅です。自分で転ばないと分からないことは、たくさんあります。だから、転ぶなとは言いません。ただ、僕がどこで転んだかを先に知っていれば、同じ場所で転んでも、致命傷にはなりにくい。知って転ぶのと、知らずに転ぶのは、別ものです。
ここまで読んでくれて、ありがとうございました。この記事が良かったら、「スキ」を押してもらえると、次を書く励みになります。読みながら誰かの顔が浮かんだら、その人に渡してもらえたら嬉しいです。
次回もお楽しみに。 では、また!

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