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【あなたに会えて幸せ】/第2章第8話「浜辺の風と切ない涙」


シティホテルの素敵な夜が開けて数日後、トモキと意見対立した。

トモキは、
・車椅子2台入れるラブホが無いこと
・ラブホでの屈辱的な暴言
・シティホテルなら、車椅子2台置ける
・浴室にリフトは無い
ということを、動画配信しようと言った

私は、プライベートを公開するように感じ、反対した。

表向きは、恋人同士という設定だから、
ラブホに行ったと思われても、
セックスしていると思われても構わない。
本当の恋人同士になった今も、それは変わらない。

しかし、トモキの考えは、受け入れられなかった。
チャンネルの主旨から言えば、トモキの考えが正しいと思った。

トモキも、最優先は私。
持論をゴリ押ししなかった。
結局、ラブホに関する動画配信は、保留になった。


1年ぶりに平塚海岸にきた。
車椅子で砂浜に出るのは、かなりきつい。
最近は、ビーチ用車椅子を常設しているビーチが増えつつある。
小学校中学校と水泳が得意だったというトモキ。
ビーチは、懐かしい場所らしい。

砂浜では、ビーチバレーを楽しむ若者たち。
私たちと同じ世代だ。
砂浜の手前は、舗装されている。
さらに手前は、バスケット・コート。
ドリブル&シュートの練習をしている少年。
中学生かな?

私たちは、大きなビーチボールを取り出した。
5mくらい離れて向かい合い、キャッチボール。
私は、養護学校以来。
トモキは、高校以来。

激しいプレイは、車椅子から転げ落ちるから、緩いキャッチボール。
潮風の香りの中で、楽しい時間。

「こんな楽しい時間が、ずっと続くといいなぁ」
「だよね。おーっとゴメン」
トモキが投げたボールは、私の頭でバウンドして、バスケット・コートへ。
ドリブル&シュートの練習をしている少年が、怪訝な顔をして、私に渡してくれた。

「あ、やっぱりそうだ! YouTube いつも観てますよ☺️」
「え? あ、ありがとうございます🙇」
「次の動画も楽しみです」

少年は、バスケット・コートに戻った。
トモキもその会話を聴いていた。

「チャンネル登録者が10000人を超えると、
 こういうこともあるんだね☺️」
「そうね、、、」
「? どうしたの? 元気無いね?」
「あそこのお店で飲み物買って、少し話さない?」
「うん、俺が買ってくるよ☺️ いつものオレンジジュースでいい?」
「うん、、、」

私が屋外のテーブルに車椅子を停めたら、
トモキが店員さんを伴って、向かってきた。

「ごゆっくりどうぞ」

店員さんが、オレンジジュースを置いて去った。

「ミク、、、」

オレンジジュースを飲みながら、トモキが心配そうにこちらを覗き込む。

「あのね。YouTubeチャンネルを閉じて、別れようって言ったら怒るよね?」
「ええーっ!」
「ウソよ。今の発言、忘れてね」

そう言ったものの、トモキの心配な表情は変わらない。
溜め息をついて、オレンジジュースを飲み、
また溜め息。

「トモキ、手を握って、、、」

手を握ってもらった途端、ふたりの手にポロポロと涙をこぼした私。
熱い涙。

「トモキ、膝に乗っていい?」

言いながら、車椅子を寄せた。
トモキの返事を待たずに膝に乗り、胸に顔をうずめて、泣く。
突然泣き出した私に、トモキは

「どうしたの?」

と驚いて戸惑っているようだったけれど、何も言わずに、大きな手で私の背中を優しく擦り続けてくれた。

いつしか寝入ってしまった私。
太陽が小田原の方角に大きく傾き、平塚海岸に夕闇が迫る頃、目覚めた。

「ごめんなさい。今夜、またあのホテルに行きたいの」

トモキと結婚したい。
赤ちゃんを生みたい。
でも、、、



第9話に続く



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