【あなたに会えて幸せ】/第3章第14話「ちゃんと育てられるのか!」
私の妊娠を告げた母。
怒る父。
「お母さん、ありがとう。
先日の LINE でいきなり《別れなさい》は、
悲しかったけど、許してくれるの?」
「あの時は、ごめんなさい。
あなたたちふたりが、どれほど愛し合っているか、わかったの」
私は、温かい気持ちになった。
ちっとも味方してくれない母、
私を否定するばかりの母が、私を認めてくれた。
「トモキさんの意識が、戻るといいわね。
無事に生まれたら、お母さんにも協力させてね」
私は、嬉しい。
トモキの意識が戻るようにと、母が祈ってくれた。
育児にも協力してくれる。
「俺は、許さないぞ!
車椅子のお前たちが子どもを産んで、ちゃんと育てられるのか!」
「ちゃんと?
《ちゃんと育てた立派な親》なんて、どれだけいるの?
《ちゃんと育てられた心豊かな子ども》なんて、どれだけいるの?
万引きしたり、人をイジメたり、お金を騙し取ったり。
私は、《足無き子、足無き子》ってバカにされてきたのよ!
もう一度言うよ。
《ちゃんと育てた立派な親》なんて、どれだけいるの?
《ちゃんと育てられた心豊かな子ども》なんて、どれだけいるのよ❗」
私は、【あの悔しさ】を思い出し、泣き崩れた。
「ミク、五体満足に産んであげられなくてゴメンね」
「お母さん、そんなに自分を責めないで。
私は、幸せよ。トモキに出会えたから。
もし、五体満足に生まれてたら、私も他人を見下して生きる人生だったかも。
ありがとう、お母さん、お父さん。
私は、ミク。
《未来》と書いて、ミク。
お父さんが名付け親。
素敵な名前をありがとう。
私たちの未来を信じてね》
私が微笑むと、父はハッと目を見開いた。
《ミクが産まれた日の喜びと絶望》を思い出し、自分のこれまでの言動を悔いた。
その目から、堪えきれなくなった大粒の涙が、堰を切ったように溢れ出す。
父は大きな背中を丸め、ベッドの上の私の手を、壊れ物を扱うようにぎゅっと握りしめた。
「……すまない、ミク。すまない……っ」
嗚咽を漏らしながら泣き崩れる父の姿を見て、私は優しくその手を握り返した。
---第3章完---
第15話に続く
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