【あなたに会えて幸せ】/第3章第13話「奇跡の生還と新しい命」
じわじわと、黒いアスファルトに真っ赤な液体が広がっていく。
ツンとした鉄の匂いが鼻腔を刺した。
「いやぁぁぁーー❗」
トモキの胸に耳を当てた。
この広い宇宙で、私だけが聴いている音。
お願いだから、鳴り続けて❗
気が付くと、ベッドに寝ていた。
ここは、どこだろう?
久しぶりに見る両親の顔が、心配そうに私を覗き込んでいる。
私は、なぜ寝ているの?
踏切で前輪がハマって、トモキが腕を引っ張ってくれて、、、
「トモキ!」
慌てて起き上がる。
背中に激痛が走る!
ベッドに倒れこんでしまった。
「まだ寝てなきゃダメよ。
あなたの背中に、コレが刺さってたの」
と、母。
私の車椅子のブレーキ・レバーだ。
「あいつは、ICUだ。
まだ、意識が、戻らない。
踏切事故から既に3日だ。
ちくしょう!
独り暮らしなんてさせるんじゃなかった!
あいつがついていながらこんなことに!」
と、父。
「お父さん!
私がぼーっとしてたからいけないの。
彼は注意を呼びかけてくれたし、
動けない私を命がけで助けてくれたのよ!
お父さん、この前 LINE で言ったよね。
《車椅子の男に何ができる❗》って。
できるじゃない!
命がけの人助け、できたじゃない!」
「そうよ、あなた。
ミクの命の恩人を悪く言ってはダメ」
「、、、」
「それよりミク。
あなたのお腹に、新しい命が」
「ナニ!
あいつは、娘を妊娠させておいて、
責任も取らずに死ぬつもりか!」
「私のお腹の中に、、、」
私は、お腹を撫でた。
トモキとは、あのホテルで一度きり。
私にとっても、トモキにとっても、初めての交わり。
その【たった一度の交わり】で、命が宿るなんて、、、
奇跡だわ!
私は、自分のお腹に手を当ててささやいた。
《あなたに会えて幸せ》
第14話に続く
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