【あなたに会えて幸せ】/第1章第5話「ふたりの笑顔とひとりの涙」
トモキに言った。
「《車椅子のふたり》ってさ。いいんだけど、
《もうひとひねり》欲しいなぁ」
「じゃあ、ふたりとも車椅子で目線が低いから、《ローアングル・デート》は、どう?》」
「賛成!」
「最初の動画、どうする?」
「山下公園がいいな🎵」
「おし❗ 決まった❗
このルートで、道路の凹凸を紹介しつつ、最後は山下公園でマッタリ」
「うん🎵」
次の日、晴れていたので、私たちは早速ロケに出かけた。
撮影は、主にトモキ。
時々、スマホをスタンドに置いて、
「車椅子のふたり」
が、進む様子も撮影。
トモキのアパートで編集作業。
初めて入るトモキの部屋。
予想通りキッチン周りが整っていて、親近感があった。
トモキとふたりで、パソコンの画面を覗き込む。
肩が触れ合う距離なのに、トモキが遠い存在に感じた。
でも、
アフレコやエフェクトなど、作業が楽しい!
「車椅子カップルにオススメで~す❗
これからも、車椅子カップルにオススメの
デート・コースをご紹介していきます。
チャンネル登録お願いいたします」
と、ふたりで声を揃えて、編集は終わった。
この動画が、反響が良かった。
元々のお互いのチャンネル登録者が、
新しいチャンネル「ローアングル・デート」にも登録してくれて、あっという間にチャンネル登録者1000人。
コメント欄も賑わった。
「車椅子で移動の際の注意ポイントが良くわかった」
「車椅子カップルのデート、マッタリしてますね🎵」
「車椅子でも、普通に恋愛することがわかった」
「山下公園が、関東大震災の瓦礫を埋め立ててできたこと、初めて知りました!」
トモキは、ひとつひとつ丁寧に返信した。
応援だけでなく
「可哀想なのに頑張っている」
というような無邪気な偏見もあった。
可哀想?
私たちが可哀想?
Super thanks もいただけるようになり、
生活が潤ってきた。
デート場所のリクエストもいただき、
それまで行ったことが無い場所・知らなかった店にも行くようになった。
だが、成功の陰で、私は満たされない気持ちに苦しんでいた。
まだ、本当に恋愛しているわけじゃないの。
恋人同士の演技をするレポーター。
自分のアパートの部屋で、画面の向こうのトモキを見つめて泣いた。
--- 第1章 完 ---
第6話に続く
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