見出し画像

心見ず うわべの策に 徒労だけ | 変えたのに、変わらない 【働くを詠む #03】

あなたは、職場の課題を仕組みやルールで片付けてしまっていませんか?

前回の記事では、プロセス・ロスはどうしたら抑えることが
できるのでしょうかと書きました。
今回は、その課題や解決について、考えてみます。


なぜか、上手くいかない

職場における課題を解決するために新しい取り組みやルールを
考えて実行するものの、なぜか上手くいかない……。
そんな経験はないでしょうか。

私の職場でもこんなことがありました。
エンゲージメントサーベイの結果から、「成果に対する称賛」の
スコアが低いという話になりました。
確かに、お互いをあんまり褒めないよね、という空気はありました。

  • 称賛する余裕がないよね

  • 何かツールがあるといいよね

そこで出てきた答えがこれでした。

  • Teamsの投稿には必ず「いいね」をする

  • Teamsに称賛用のチャネルを作る

最初は私も考えて投稿していました。でも、長くは続きません。
やがて「何でもいいから称賛しましょう」という話になりました。
何でもいいと言われると、かえって辛くなる。
結局、投稿は減っていき、チャネルは自然消滅しました。
よかれと思って打った施策が、「徒労」に終わってしまいました。


「技術的課題」と「適応課題」

当時の私には、なぜ上手くいかなかったのか、
うまく言葉にできませんでした。
後になって、この経験を説明してくれる言葉に出会いました。

ハーバード大学のロナルド・ハイフェッツが提唱する、
課題の二つの分類です。

  • 技術的課題:既存の知識や仕組みの導入で解決できる問題。

  • 適応課題:ルール変更では解決せず、関わる人々の価値観や行動様式そのものの変化が求められる問題。


技術的課題と適応課題

称賛チャネルを作るのは、技術的課題への対処です。
でも本当の問題はそこではありませんでした。

「なぜ、お互いを称賛しようという気持ちが生まれないのか」——
そちらが本質でした。
これは適応課題です。仕組みをいくら変えても、そこには届かない。

日本の職場における組織の課題の多くは、この適応課題です。
そして、私たちは無意識のうちに、向き合うのが難しい適応課題を、
答えが出やすい技術的課題にすり替えてしまいがちです。

仕組みを作れば「動いている実感」が得られる。
責任の所在もはっきりする。
何より、人の価値観が変わるという痛みを避けられるからです。


なぜ思い浮かばないのか

では、適応課題に向き合うとはどういうことでしょうか。
称賛チャネルの事例で言えば、「なぜみんな称賛しないのか」を
問うのではありません。
そうではなく、「なぜ称賛することが、そもそも思い浮かばないのか」を
チームで一緒に振り返ることです。
責めるのではなく、一緒に不思議がる。

そうやって話し合っていくと、あることが見えてきます。

  • 仲間が何をやっているか、実はよく知らない。

  • 自分の仕事と仲間の仕事がどう繋がっているか、意識したことがなかった。

そして、
仲間の成果が自分の目標にも貢献しているという実感が、そもそもない。

称賛が思い浮かばないのは、性格の問題でも、
余裕がないせいだけでもありませんでした。
仲間の仕事が、
自分にとって「意味のあること」として見えていなかったのです。

実は、称賛が「思い浮かばない」現象には、脳の仕組みも関係しています。
人間の脳には、自分にとって重要・関心のある情報だけを優先的に意識に
通すフィルター機能があります。
今までフィルターされていた仲間の成果が自分の目標と繋がっていると
感じることで、自然と優先的に反応するようになります。


心見ず うわべの策に 徒労だけ

あなたの職場で、仕組みを変えたのに変わらなかった経験はありませんか?

それは、適応課題に触れていないサインかもしれません。
解決策を探す前に、「なぜそうなっているのか」をチームで
一緒に不思議がることから始めてみてください。

そして、適応課題に少しずつ向き合い、
改善されていった先には、何があるのでしょうか?

次回【働くを詠む #04】


マガジン【働くを詠む】(全17編3章構成)

前回【働くを詠む #02】
出来る人 集めてみたが 成果でず

#働くを詠む #人が動く構造 #組織力 #創作大賞2026 #ビジネス部門

※本記事の文章・川柳・構成・内容の無断転載・転用はご遠慮ください。
 引用の際は出典明記の上、リンクをお願いいたします。


いいなと思ったら応援しよう!