「企業マスコットのつくり方」と実存合理性経営
社長の実存合理性 第73回
タイトル絵:うちのマスコット知りませんか?
企業や自治体においてキャラクターは、もはや「BtoC企業の販促ツール」ではありません。
新規取引先の獲得、新卒採用での学生への訴求、社内の意識統一(インナーブランディング)、地域・社会貢献活動の発信といった、BtoB企業や中小企業が抱える経営課題そのものを解決する手段として、キャラクター活用が定番化しつつあります。
中には、業界特有の堅いイメージを和らげる役割を果たすキャラクターも登場し、製品やサービスを言葉だけで伝えにくい企業ほど、視覚的な訴求としてのキャラクターの価値が見直されています。
あなたの会社は、キャラクターを作るだけで終わっていませんか?
多くの企業が、認知度の向上や親しみやすさを狙って「自社キャラクター」を制作します。しかし残念なことに、その多くは数年後にはWebサイトの片隅で眠ることになり、配りきれなかったグッズが処分もできずに倉庫に積み重なる……という結果に陥っています。
なぜ、せっかく作ったキャラクターは
数年で「死んで」しまうのでしょうか。
その原因を、呼称の変遷から紐解いてみます。かつて、企業が自社を象徴するシンボルを作る際、それは「キャラクター」ではなく「マスコット」と呼ばれていました。それがいつの間にか、誰もが「うちのキャラクター」と呼ぶようになっています。
この変化の裏には、「提案する側(制作会社や広告代理店)」の都合や配慮があったと推測できます。実際に私も提案していました。
もし、提案側がクライアントに新しい提案をしたいとき、その企業にすでに「マスコット」が存在していたらどうでしょう?
同じ「マスコット」という言葉では、既存のものとバッティングしてしまい、新鮮な提案になりません。そこで提案側は、言葉をすり替え、「これからは『キャラクター』を作りませんか?」と持ちかけたのです。
こうして、ビジネスの現場ではマスコットに代わり、キャラクターという言葉が主流になっていきました。
しかし、ここで改めて2つの「語源」について調べてみました。
マスコット(Mascot)の語源
人々に幸運をもたらす「魔除け」や「お守り」
キャラクター(Character)の語源
刻まれた印、特徴、あるいは演じられる「役柄」
キャラクターは、あくまで表面的な特徴や「演じられた役割(記号)」に過ぎません。だからこそ、時代の流行やキャンペーンが終われば、その役割を終え倉庫で永眠することになります。
そこで、企業が永い資産活用として生きる象徴を「キャラクター」からもう一度、「マスコット」という呼称に戻し、会社のロゴやCI同様に資産として設計することが大切だと考えています。
そこに経営者の思想や、企業の存在理由(実存)をその身に宿し、自社の「自我(アイデンティティ)」を社会に発信し続ける「マスコット」の再設計を私たちは提案しています。
ここからが本題です。
マスコットは企業の「何を」代弁するのか?
そこでもう一度、自社のマスコットを再構築しませんか?
改めて、企業におけるマスコットの役割を考えてみましょう。マスコットとは、いわば「企業の代弁者」です。では、彼らは一体何を代弁し、何を社会に発信するべきなのでしょうか?
大切なのは、見た目の可愛らしさ(意匠面)だけを取り繕うのではなく、「マスコットの思想」そのものを再設計することです。そして、その思想の軸となるものこそが、私たちが提唱する「実存合理性経営」です。効率性やトレンドだけに流されるのではなく、「自社がなぜここに存在するのか」という固有の意味や価値観を経営の真ん中に据える。その姿勢こそが、マスコットに宿るべき魂となります。
私たちSecondo(セコンドー)では、見た目の意匠デザインよりも先に、この「コンテンツ設計(コンテンツマーケティング)」を徹底的に行います。
「このマスコットを通じて、社会に何を届けるのか?」
「この会社が本当に大切にしている価値観(実存)は何なのか?」
こうした本質的な問いを一つひとつ組み立てていくことが、何よりも大切です。確固たるコンテンツ(思想)が固まって初めて、「では、その個性をどうやってデザイン(意匠)に落とし込んでいくか?」というプロセスへ進みます。
本記事では、マスコットを単なるマーケティングの道具ではなく、「経営の実存合理性」として捉え、これからの時代に必要な本質的なブランディング論と、具体的な発注の進め方をお届けしますなぜ、独自の哲学を持つ企業の発信にマスコットが必要なのか?なのか?
私たちのマーケティングアドバイザーサービス「Secondo(セコンドー)」へご相談に来られる経営者のうち、7割以上が同じ悩みを抱えています。
「これからは自社メディアの時代だ、SNSやYouTubeで発信しないと生き残れないと言われてアカウントを開設したものの、何を発信していいか分からず更新が止まっている……」
あるいは、経営者自身が深夜に身を削ってブログを書き続けているケースも少なくありません。 発信が苦しくなる原因は、自社の「個性」や「価値観」を、経営者個人の属人的な言葉や、無機質な法人の言葉だけで伝えようとしているからです。
小さな企業こそ、経営の思想(気)を宿し、チーム全体で運用できる「人格を持った愛すべきマスコット」をコンテンツの中核に据えるべきです。その大切な理由を3つの視点から解説します。
理由①重くなりがちな「哲学」を軽やかに翻訳する
小さな企業最大の武器は、大企業にはない「なぜこの事業をやっているのか」という強い内発的動機(実存合理性)です。しかし、経営者の強いこだわりや業界への危機感をそのままストレートに発信し続けると、読み手にとっては「重すぎる」「説教くさい」と感じられてしまう危険性があります。
ここでマスコットという「フィルター」が機能します。企業の確固たる哲学を、親しみやすい「物語」や「日常のつぶやき」、時には「ユーモア」へと軽やかに変換できるのです。
経済合理性のマスコット
「ターゲット層にウケそう」「流行りのテイスト」で作るため、市場のトレンドが変われば機能しなくなる。
実存合理性のマスコット
「なぜこのビジネスをやっているのか」「世界をどう変えたいのか」という内発的動機を視覚化したもの。
完璧なヒーローである必要はありません。経営者が持つこだわりや、時に「弱さ・葛藤」さえも内包した不完全な人格(ペルソナ)だからこそ、人々の心を強く揺さぶります。
成功事例:『有隣堂しか知らない世界』のR.B.ブッコロー
神奈川・東京を中心に展開する老舗書店・有隣堂のYouTubeチャンネルでは、MCを務めるミミズクのマスコット「R.B.ブッコロー」が活躍しています。彼は文房具への愛が深すぎるあまり、時に会社の偉い人に毒舌を吐いたり、ニッチな魅力をマニアックに掘り下げたりします。
もし、有隣堂が法人の真面目な言葉で「私たちは本や文房具の価値を届けたい」と発信しても、ここまで人の心は動かなかったはずです。ブッコローという「嘘のない、本音を語るマスコット」を通すことで、有隣堂の根底にある魂(実存)が、極上のエンターテインメントとして生活者に届いているのです。
ここが実存合理性経営のポイント もし、有隣堂が法人の真面目な言葉で「私たちは本や文房具の本質的な価値を届けたい」と発信しても、ここまで人の心は動かなかったはずです。 ブッコローという「嘘のない、本音を語るマスコット」を通すことで、「本や文房具が本当に好きでたまらない」という有隣堂の根底にある魂(実存)が、重くならず、極上のエンターテインメントとして生活者に届いているのです。
理由②雪山を迷わず進むためのコンパス
SNS、ブログ、動画、ニュースレターと、発信媒体が多角化する現代のマーケティングは、まさに天候の変わりやすい雪山のようなものです。
スタッフに発信を任せたり、外部の制作会社にコンテンツ制作を依頼したりする際、最も起きやすい悲劇が「自社らしさの喪失(ブレ)」です。しかし、実存を宿したマスコットがいれば、それがコンテンツ作りの明確な「基準」になります。
「うちのマスコットなら、流行りだからといってこのトレンドには乗らない」
「このテーマを取り上げるなら、うちのマスコットならこういう切り口で語るはずだ」
誰が作ってもブレない一貫性を保つことは、外部パートナーのクリエイティブを適切に評価・管理する「デザインマネジメント」の観点からも、強力なコスト削減と品質向上に繋がります。
理由③:顧客との「意味消費」を通じたベースキャンプ(居場所)をつくる
今の時代、機能や価格(経済合理性)だけで選ばれるのは至難の業です。顧客は「その企業が何を大切にしているか(存在意義)」に共感し、意味を消費します。
『有隣堂しか知らない世界』の視聴者は、単に本が安いから行くのではなく、ブッコローやスタッフのファンになり、「この人たちがいる有隣堂で買い物をしたい」という動機で店舗に足を運びます。これが「意味消費」です。
マスコットという人格と関係性を築くことで、企業という無機質な看板を越えた、より強固で長期的なエンゲージメント(ファン化)が生まれるベースキャンプ(コミュニティ)が作られます。
マスコットづくりのプロセス
Secondo(セコンドー)では、単に「見た目が可愛いから」「ウケそうだから」という理由でキャラクターの絵を描き始めることは一切ありません。経営の「根っこ(実存)」を掘り起こし、それをコンテンツ設計に落とし込むために、以下のような独自のプロセスでキャラクターに命を吹き込みます。
1.内発的動機(気・哲学)の棚卸し:まずは対話から。
経営者自身の原体験や、「なぜこの事業をやるのか」「業界の何をリデザインしたいのか」という、内発的な動機(気)をインタビューを通じて徹底的に言語化します。
2.人格(美学と弱さ)の設計:完璧なヒーローにしない。
企業の哲学をベースに、マスコットの「譲れないこだわり(美学)」と、人間味を感じさせる「不完全さ(弱点やコンプレックス)」を設計します。これが、後に顧客が感情移入するための「余白」になります。
3.行動規範と「言葉遣い」の定義:発信のブレをなくす。
「このマスコットなら、このニュースに対してどう反応するか?」「どんな言葉遣い(トーン&マナー)で語るか?」を定義します。これが、雪山を迷わず進むためのコンテンツの「羅針盤」となります。
4.ビジュアルへの落とし込みと発注:ここで初めてデザインへ。
固まったマスコットの人格と行動規範をベースに、適切なイラストレーターの選定や、デザイン会社への発注要件(三面図の有無や差分の設計)をシームレスに組み立てます。マスコットデザインの費用相場と発注の仕組み
経営の思想を反映させたキャラクターを実際に形にするための、「費用相場」と「発注のポイント」を整理しました。マスコットデザインの費用は、依頼先や使用用途、著作権の扱いによって大きく変動します。
マスコットデザインの費用相場(目安)
実績のあるフリーランス(SNSで人気の絵師など)
約 50,000円 〜 200,000円企業のWebサイト用、地域マスコット、個人の商用利用(VTuberのLive2D用原画など)
制作会社・デザイン会社約 200,000円 〜 500,000円〜本格的な企業ブランディング、ゲームの主要キャラクター、アニメ、商品パッケージ用など。
料金を左右する「4つの要素」
見積もりを取る際、以下の要素によって金額が変わることをあらかじめ理解しておきましょう。
表情・ポーズのバリエーション(差分) 基本の立ち絵1枚に対して、表情を3パターン追加する、ポーズを変える(喜怒哀楽など)といった「差分」ごとに、追加料金(数千円〜数万円)が発生します。
三面図(設定資料)の有無 マスコットをグッズ化したり、3Dモデル化したりする場合、前・横・後ろ姿を描いた「三面図」が必要です。これを作成する場合は、通常の2倍以上の費用がかかることが多いです。
著作権譲渡(商用利用) グッズ化して販売したり、企業のロゴとして商標登録したりする場合、著作権譲渡料(または商用利用料)として、デザイン費の50%〜100%程度が上乗せされるのが一般的です。
リテイク(修正)の回数 ラフ(下書き)段階での修正は2回まで無料、それ以降は1回につき数千円、といったルールが設けられていることが多いです。
💡 発注時のコストダウンのポイント 予算を抑えたい場合は、「使用範囲(Webサイトのみ、グッズ展開はしないなど)」をあらかじめ限定して伝え、著作権を「譲渡」ではなく「利用許諾」という形にすると、費用を抑えられるケースがあります。
おわりに
発信を「作業」から「経営の資産づくり」へ
マスコット活用を前提としたコンテンツ設計とは、単なるPRの小手先のテクニックではありません。
経営者自身の「生きる意味(実存)」や企業の譲れないこだわりを掘り下げ、それに命を吹き込み、組織の内外を繋ぐ経営戦略そのものです。
今日の発信は、明日消えてしまう「消費される情報」になっていませんか? 自社の価値観を宿したマスコットという心強い相棒とともに、長く愛される顧客との関係性を築いていきましょう。
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