ミイラの始発【ショートショート】ハロウィンの翌朝。僕は「スーツ」という名の新しい包帯を巻いて電車に乗る
アラームの音で目が覚めた。
昨夜の記憶はない。
どうやら、ハロウィンの仮装のまま、リビングで寝落ちしてしまったらしい。
全身に巻かれたトイレットペーパーの包帯が、寝汗でじっとりと肌に張り付いている。
「……最悪だ」
壁の時計を見る。午前5時15分。
会議は9時。今からシャワーを浴びて、スーツに着替えて…、なんとか間に合うかもしれない。
僕は急いでシャワーに飛び込み、皮膚が赤くなるほど強く、こびりついた紙の包帯を擦り剥がした。
クローゼットから一番張りのあるスーツを掴み、ネクタイをきつく締める。
僕が昨夜ミイラの仮装をしていたなんて誰も気づくまい。完璧な擬態だ。
始発のホームには、夜勤明けの看護師と、眠そうな学生がいる。
僕は彼らと同じ「日常」の顔をして、銀色の箱に乗り込んだ。
やがて電車が走り出し、薄暗い窓に自分の姿が映る。
そこにいたのは、身綺麗にしたはずの、疲れ果てたミイラだった。
スーツという新しい包帯を窮屈そうに身に纏った、現代のミイラが、静かに揺られていた。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
今回のショートショートは、こちらの素敵なハロウィン企画に参加させていただいています。
🦉Toyさん
🤦リライフさん
少し早いですが、皆さんもどうぞ素敵なハロウィンをお過ごしください。
【追伸】
ミイラになりかけた時、あなたを人間に戻してくれる「魔法の言葉」や「アイテム」は何ですか?
僕は熱々のコーヒーです☕️
【あとがき】
この物語は、ハロウィンの翌朝に起きる悲劇と、現代社会の風刺を描いたショートショートです。
仮装(トイレットペーパーのミイラ)のまま寝落ちし、慌ててシャワーを浴びてスーツに着替える主人公。
しかし、電車の窓に映った自分を見て気づきます。
自分はまだ、形を変えただけの「ミイラ」のままではないか、と。スーツという窮屈な包帯に縛られた現代人の姿を浮き彫りにします。
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