第2のどん底① 裏切り編|許せなかった。信じた人の一言
人生でいちばん深く傷つくのは、「信じた人に裏切られること」かもしれません。
第2のどん底では、そんな「信じることの痛み」を痛感する出来事が、立て続けに起こりました。
ひとつは、母が信じていた人に裏切られたこと。
そしてもうひとつは、のちに僕自身が信じた相手から詐欺に遭ったことです。
今回は、前者の出来事を書きます。
もしあなたが今、「誰かを信じたいけど怖い」と感じているなら、僕の体験が、あなたの心を少しでも軽くするきっかけになれば嬉しいです。
第2のどん底の始まり
最初に起こった出来事は、母の同級生と僕との信頼の崩壊でした。
その話を始める前に、関係性を少しだけ伝えておきたいと思います。
これは、僕が初めてビジネスの世界に足を踏み入れた、24歳のときに遡ります。
音楽の夢を諦め、将来の道を見失っていた頃。
僕は千葉でひとり暮らしていました。
そんなとき、母から興奮気味に一本の電話があったのです。
「たつや、すごい話があるから、ちょっと話を聞いてみない?」
母の高校時代の同級生が、母を誘ってきたそうでした。
最初は気乗りしませんでしたが、母の知り合いという安心感があり、宮崎に帰省したときに彼女から話を聞くことにしました。
そうして紹介されたのが、アムウェイという米国発のダイレクトセリング(ネットワークビジネス)でした。
まったく未知の領域で、最初は何も分かりませんでした。
当時はまだインターネットも普及しておらず、信頼できる人の情報こそが唯一の頼りでした。
創立者や成功者と呼ばれる人たちの話を聞くうちに、ビジネスの仕組や可能性が見えてきました。
単にお金を稼ぐだけでなく、人生を変えるビジネスだと理解したのです。
人生に絶望していた僕は、強く惹かれました。
それまで、自分でビジネスをやるなんて考えたこともありませんでしたが、アムウェイなら、自分が望む生き方を手に入れられる気がしたのです。
当時は、起業のハードルも高く、他の選択肢もなかった。
若さゆえの勢いもあって、これしかないと本気で信じたのです。
母の表情は、今でも忘れられません。
息子が前向きになったこと、そして一緒に頑張れることが本当に嬉しそうでした。
それから5年後
「自分の成功は、母の幸せにも繋がる」
──そう信じて、前向きに頑張り続けた5年間。
しかし、思ったほどの成果は出ず、気づけば人生で初めてのどん底にいました。
家賃滞納や借金を抱え、生活のために雑貨屋の店長として働き始めました。
ビジネスの活動は、自然と縮小していったのです。
やがて、思いがけない展開に。
なんと、雇われ店長をやめ、自分の雑貨屋を2店舗オープンしたのです。
2店舗目が当たり、想定を超えるお金が入ってくるようになりました。
「お金を稼ぐことは、こんなにもあっけないものなのか」と驚きました。
それだけ、あの必死で頑張った5年間の努力が報われなかったことを痛感したのです。
それでも後悔はせず、むしろいい経験だったと考えていました。
──しかし、母からの電話で、事態は大きく変わりました。
母の優しさから始まったトラブル
「たつや、どうしたらいいのか…」
泣きながら電話してきた母の声は、別人のように小さく震えていました。
話を聞くと、母の同級生との間で金銭トラブルを抱えていたのです。
母は、決めたことは必ずやり通すほどの真面目な人でした。
相手が困っていれば、自分が苦しくても助けようとする。
そんな優しさが、母の長所であり、同時に弱点でもあったのだと思います。
ビジネスの関係で言えば、僕は母のグループに所属し、母はその同級生の直のグループ。
つまり、母の売上が同級生のランク(ピンレベル)に大きく影響する仕組みでした。
母が一定以上の売上を上げないと、同級生のランクも、母自身のランクも下がる。
やがて母は、同級生に迷惑をかけまいと、商品を買い込み、余計な在庫を抱えるようになっていました。
自分の成績を上げたい気持ちもあったでしょう。
けれど、それ以上に「同級生のために」と動いてしまうのが母でした。
しかしそれは、明らかに無理のあるやり方。
アムウェイを始めとする、ネットワークビジネスの、典型的な負の連鎖です。
僕は何度も言いました。
「そんなやり方はやめた方がいい」と。
それでも母は、借金をしてまで続けていたのです。
しかも、その借金の相手は──
同級生本人だったのです。
信頼で始まったはずのビジネスの結末
僕には、同級生が自分のランクを維持するために、母にお金を貸したとしか思えませんでした。
まさに、借りる方も借りる方、貸す方も貸す方です。
そして案の定、返済が滞り、期限を過ぎても支払えなくなった。
ここまでは、母にも落ち度がありました。
しかし問題は、その後です。
彼女は、借金の取り立てを業者に任せたのです。
どんな業者かは知りませんが、夜中でも構わず電話をかけてくるようなところでした。
毎晩のように、母のもとに電話が鳴り続けたそうです。
母の心は、完全に壊れかけていました。
「どうしたらいいのか分からない…」
母の声を聞いた瞬間、僕の中で何かが切れました。
友情と信頼で始まったはずのビジネスが、なぜこんな酷い結末を迎えるのか。
許せない感情が芽生えた
母の様子に僕はたまらず、翌日同級生のもとを訪ねました。
僕は険しい顔のまま、彼女に聞きました。
「なぜ母にあんな電話をかけるんですか」
彼女は淡々と少々呆れたように言いました。
「あなたのお母さんが、お金を払わないからでしょ」
その瞬間、胸の奥で何かが音を立てて崩れました。
僕はその人から多くを学び、尊敬していた。
母の恩人だと思っていた。
僕が頑張ることが、その恩返しになると信じていた。
信じていた人に、平然と切り捨てられたあの感覚。
あれほど努力した5年間が、一瞬で無意味になったように思えた。
許せない──
その感情が、心の奥に芽生えました。
「それっぽっちの繋がりだったのか…」
僕は、そのビジネスを完全にやめる決意をしました。
その時にはすでに雑貨屋の仕事で忙しく、活動はほとんど止まっていました。
それでも、僕を信じてついてきたグループの人たちを思うと、申し訳なさで胸が痛みました。
その後、母と電話で話しました。
「全部、自分が悪いのよ」
どんなに傷つけられても、母はその同級生を一言も悪く言いませんでした。
ようやく終わったが…
それは、奇跡的なタイミングでした。
ほんの少し前まで借金地獄だった僕が、雑貨屋の成功でお金を持っていたからです。
「お金は払うから、心配せんで。」
妹も協力してくれて、すぐに全額を一括で返すことができました。
これでようやく終わった──そう思いました。
けれど、母を苦しめた出来事と、目の前で母を切り捨てた言葉は、僕の心に深く刻み込まれました。
「信じる人を裏切るなんて、絶対に許せない──」
その感情は、しばらく僕の中で静かに燃え続けていました。
そしてそれは、次に訪れるもうひとつの出来事へと繋がっていきます。
──つづく。
おわりに
次回は、僕自身が信じた相手から詐欺に遭った、もうひとつの出来事をお話します。
続きはこちら。
👉 【第2のどん底② 詐欺編】人間不信が、ひとり起業の原点になった
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よければ、最初に書いた自己紹介の記事も読んでみてください。
せきたつや
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