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人間不信が、ひとり起業の原点になった【第2のどん底② 詐欺編】

人生は、うまくいき始めたときほど、落とし穴に注意しなければならない──
それを僕は、まだ知らなかった…

雑貨屋を成功させて、人生初のどん底から這い上がることができた僕。

しかし、前回の記事で書いたように、母の一件で心に傷を負っていました。

それでも、メンタルを鍛えていたおかげで、「これから先は大丈夫だ」と信じていた。

これまでの積み重ねは、間違っていなかった──
そう思っていたのです。

けれどその後、僕は再びどん底に落ち、すべてを失いました。

お金だけでなく、人を信じる心までも。

それは、これまでの人生で味わった中でも、最もショックな出来事でした。

そして、その出来事が、僕を「ひとり起業で生きる覚悟」へと導くことになります。

もし、あなたが今、「人を信じるのが怖い」「前に進めない」と感じているなら──
僕のこの経験が、あなたの心を少しでも軽くするきっかけになれば嬉しいです。


再び動き出したビジネス

雑貨屋をやめたあと、張り詰めていた糸が一気に緩む。
僕はしばらく、家族との時間を大切にしていました。

生まれたばかりの長女と、ゆっくり過ごす毎日。
人生で初めて、お金と時間の両方を手にした時期でした。

そんな幸せな日々を送りながら、ずっと考えていました。

「自由に生きるために、何をやればいいだろう」と。

雑貨屋は成功したけど、自由がないという理由でわずか1年2ヶ月でやめた僕は、次の挑戦を探していました。

手探りで掴んだ「ネットで稼ぐ」感覚

ちょうどそのころ、世の中はインターネットが急速に広まり始めていました。

2001年。
まだ誰もが手探りでネットを使い始めた時代です。

僕は小学5年のときにマイコン(マイクロコンピュータ・NEC PC6001)に出会い、時間があればデパートに行って、BASICというプログラムを打ち込んで遊んでました。

ゲームのプログラマーになることが、当時の僕の夢だった。

ところが中学2年、パソコン(NEC PC8801)がギター(ストラトキャスター)に変わった。
夢はミュージシャン。

時は経ち、30代になった僕。
そんなことを思い出しながら、久しぶりにデスクトップのパソコン(SONY VAIO)を買ってワクワクしていました。

インターネットを使えば、なにかビジネスができるのでは?と考え、まずはホームページの作り方を独学でマスターしました。

同時にヤフオクにも挑戦しました。

物販の経験があったこともあり、ネット販売にも抵抗はありませんでした。
家にある本や車のパーツや不用品のほか、仕入れをしたものなどを売ったところ、思った以上に売れました。

「ネットでお金を稼ぐって、こんなに簡単なのか」と感じました。

ネットでお金を稼ぐ感覚をつかんだ僕は、ホームページを作成してアフィリエイトにも挑戦。

検索上位を目指したり、無料特典をつけたりすることで、2つの代理店紹介型のビジネスで日本一の実績を出すことができました。
そのうちのひとつは800万円以上の利益を出すことができたのです。

けれど、僕は満足してませんでした。

確かにアフィリエイトは稼げることが分かりました。
けれど、他社の商品やサービスを紹介しているだけ。

アフィリエイトは自分のビジネスじゃない、という感覚が拭えませんでした。
その先にやりがいを見いだすことができなかったのです。

ひとまず、稼げるビジネスは続けながらも、僕自身が納得するビジネスを探し続けていました。

そんなある日のこと。
尊敬していた先輩から、一本の電話がかかってきたのです。

それが、再び僕をどん底へと導くことになるとは、このときは思ってもいませんでした。

カーシェアリングとの出会い──詐欺ビジネスの始まり

「久しぶり。
せきくん、車好きだよね?
面白いビジネスがあるんだけど、近いうちに会わない?」

そのとおり、車が好きだった僕は、その言葉に胸が高鳴った。

時間はあったので、すぐに会って話を聞くことにしました。

紹介されたのは、カーシェアリングの代理店ビジネス。

車を所有する時代から、みんなで共有して使う時代へ──
そんなビジョンを掲げるベンチャー企業の話でした。

2002年、まだ「シェアリング」という言葉は一般的ではありませんでした。

それだけに、「車に関わりながら社会を変える」「これから伸びる市場」という響きに、強く惹かれたのです。

当時の僕は、心からワクワクしました。
「楽しそう。これだ」と思った。
そんな感覚さえあったのです。

かなり安い価格で車を利用できるという、サービス内容も魅力的でした。
法人に営業しても面白そうだと考えました。

時代の先を行くビジネス、しかもベンチャーの挑戦。
その先に、自由な生き方の可能性も見える気がしました。

前向きに検討することにして、本社で話を聞くことにしました。

僕は、このビジネスに賭けた

後日、先輩と待ち合わせして、福岡の本社に行きました。
社長や室長から直接、詳しい話を聞きました。

表向きは、先輩から聞いたとおり、車を安く所有できるカーシェアリングでした。

ただ、そのビジネスを運営していく仕組みは、資金をファンドとして運用していくというちょっとややこしい話。

当時の僕は「ファンド」という言葉さえよく知らなかった。
金融の話をされても、正直、理解が追いつかなかった。
さすがに一度の説明では、信じるか信じないかの前の段階でした。

けれどその時点で、僕に紹介した先輩は、総代理店の契約を結ぶことを決めていました。
僕は、先輩がそこまで動いているのならと、前向きに検討はしていました。

ただ一つ先輩と違ったのは、先輩はその数人で契約金を出し合っていたのに対し、僕の場合はひとりで全額を出すことになるということ。

代理店契約は高額です。
軽い気持ちではサインできません。

慎重に検討を重ねながら、それから数回、本社に出向き、説明会などにも参加しました。

毎回、質問にも誠実に答えている。
信じられそうだと判断しました。

そうして、妻とも話し合い、雑貨屋で得た資金などをもとに契約することにしました。
本気で取り組むことを決めた僕は、この事業を始めるために急いで法人を立ち上げました。

やるなら、徹底的にやる。
そう決めた僕は、先輩と同じく総代理店として契約したのです。

総代理店の契約金は、代理店の10倍ほど。
代理店との大きな違いは、総代理店になると自分の下に代理店を持つことができる点です。

全国に代理店も増やしながら、日本にカーシェアリングを広げる構想を描きました。
僕にはホームページ制作やインターネットマーケティングを理解している強みがあったので、広げる自信はありました。

「一緒に頑張っていこう」と先輩は言った。
この人となら、何かを成し遂げられそう。
その言葉を信じ、胸を高鳴らせながらスタートを切りました。

本社の電話がつながらなくなった日

毎日が新しい挑戦の連続でした。

ホームページを作り、チラシを配り、法人に営業をかけて──
夢中で走り始めました。

しかし、聞いたこともない会社に不信感を持つ人が多く、想像以上に理解してもらうことは大変でした。

それでも、代理店も少しずつ増え、お客さんもできました。

スタートから3ヶ月経った頃のこと。
妙な噂が流れ始めました。

「車の納車が遅れているらしい。」
「報酬の支払いも遅れている。」

最初は、単なるトラブルだろうと思っていました。
ベンチャーにはよくある話だと、自分に言い聞かせたのです。

でも駄目でした。
僕の代理店やお客さんにも同じことが実際に起き始めたのです。

本社に出向いて説明を求めたところ、社員は逃げも隠れもせず、きちんと説明してくれました。
社長は留守のときも多かったですが、その誠実そうな態度に、少しだけ安心したのです。

「きっと、もうすぐ解決するはず」
──そう信じていました。

数日が経ち、やはり状況はまったく変わりませんでした。
社長は本社にほとんどいない。

これはまずい状況。
急いで契約金の返金を求めることにしました。

すでに返金された人もいるという声を聞くものの、事実確認はできない。
代理店は福岡を中心に、他県にもたくさんいると聞く。
被害は見えないところに、広がっているに違いない。

焦りが山のように募っていた、そんな矢先、本社の電話がつながらなくなったのです。

担当にも連絡が取れない。
本社に行くと、誰もいない。

まるで、息をしてないオフィス。
時が止まったかのように、静まり返っていました。

計画倒産──消えた詐欺社長と「残高260円」の口座

なんとかお金を少しでも回収しようと、紹介してくれた先輩にすぐに相談しました。

「自分も動いてる」と言ってくれました。

その後、先輩から連絡があり、残高照会を依頼した弁護士から信じられない報告が届いたとのこと。

「本社の口座残高、260円。」

──頭が真っ白になった。

投資した資金も、顧客の契約金も、すべて消えたのです。

被害総額は少なくとも10億円前後の規模。
社長はお金を持って逃げた。

「計画倒産、詐欺だ」
そう確信しました。

契約金で最初だけは車を購入し納車し、代理店や顧客を安心させながら、逃げる準備をしていたのでしょう。
ファンドや金融の話を、もっともらしく話していましたがすべて作り話。

後になって分かった。
これは昔からある典型的な詐欺──ポンジ・スキームだった。

金融に詳しい人に、もっともらしく話される。
それだけで、頭が真っ白になる。

人は理解できない話をされた瞬間、思考が止まり、信じてしまうのです。
恐ろしい。

特にお金を持っている人には詐欺師が寄ってくるので、多額の被害に遭う可能性があります。

後年、年収億以上を稼いでいる人たちと交流していましたが、過去に数千万円以上騙された人がたくさんいる事実に驚きました。

ただ今は、スマホやSNSの広がりで、誰でも詐欺に遭いやすくなっています。
あなたも、僕のようにならないよう、十分に注意してください。

人間不信。また信じた人に裏切られた

このとき僕が被害にあったのは総額にして650万円。

そのために法人を立ち上げ、半年動きました。
すべてがパーになりました。

まだショックが冷めやらない。まだそれほど時が経ってない日に、一緒に回収しようと言ってくれていた先輩から連絡が。

「回収は無理。
せきくん、あとは自分で頑張って」

電話が切れた瞬間、肩を落とす──とはこういうことか。
そう思うほど、全身が鉛のように重くなった。

その言葉とともに、離れていった先輩。
激しく孤独を感じました。
そうだ、僕はひとりだったんだ…

僕を騙したのは社長。
そして、このビジネスをやると決めたのは自分。
先輩を責めるつもりは一切ない。

けれど、僕が最も信じていたのはこの話を持ってきた先輩でした。
「一緒に頑張っていこう」という言葉が嬉しかった。

だから、最後の一言が本当に悲しかった。

逃げた社長には怒り、先輩へは空虚な感情が残りました。

それより少し前にあった、母の同級生の件。
そして今回の一連の詐欺の件。

「また信じた人に裏切られたのか」
──そう思った瞬間、体の奥から力が抜けていき、何をすればいいのか分からなくなりました。

お金を失った痛みより、人を信じられなくなった方が、ずっと深く刺さっていました。

この二つの出来事が重なって、気がつけば僕の中で「人を信じない心」が育っていったのです。

僕の「ひとり起業」の原点

「騙された。
信じた僕が馬鹿だった…」

しかし、そう自分のことばかりで落ち込んでばかりはいられませんでした。

なぜなら、僕にはお客さんや代理店がついていたからです。

最終的に本当の意味で僕を打ちのめしたのは、そのお客さんや代理店さんの存在でした。

お客さんは何も知らず、車を楽しみに待っています。
が、もう当然車は届きません。

お客さんのところへお詫びに行き、事情を話しました。

そして、彼は真剣な目で僕にこう言い放ったのです。

「私はカーシェアリングの本社を信じたんじゃない。
せきさんを信じて、お金を払ったんですよ。」

想定してなかったその言葉に、胸がえぐられた感じがしました。
お詫びの言葉をいくら丁寧に発したところで、何の意味も持たないことが自分で明瞭に分かりました。

お客さんは登録料として、本社に50万円を払っていました。

僕は1円も受け取っていない。
本来なら、本社が返金すべきこと。
しかし、会社は消え、社長は逃げた。

僕は立て続けに、信じた人から裏切られた苦しみを知った。
もし、このお客さんを僕を裏切ったら、お客さんは僕と同じように苦しむ。

「信じてくれた人を、裏切るわけにはいかない。」

僕はひとり静かに決めました。
お客さんに自腹で全額を返すことを。

正直、すでに大損失をしていたので激しく悩みました。
それでも、自分が紹介した以上、僕は責任をとることにしたのです。

僕を信じて代理店になってくれた人たちもいた。
しかし、正直もうお金は尽きてしまった。
本当に申し訳ない、と謝るしかなかった。

「自分で決めたことだから。」
と納得してくれたことが本当に有り難かった。

その後も、僕の契約金と同様に、その代理店の人たちの契約金の回収にも動きました。
しかし、事態は上向くことなく、やがて回収は無理だと判断し諦めました。

自分で責任を取れないビジネスはしない

しばらく、何もやる気が起きなかった。
でも同時に、静かに一つの決意が生まれたのです。

「もう二度と、自分で責任を取れないビジネスはしない。」と。

自分でコントロールできる仕事。
100%、自分が責任を取れる生き方。

それだけを選んで生きていこうと決めました。

代理店でも、フランチャイズでもない。
自分が全責任を負える、自分ひとりの力で完結するビジネス。

それが、僕の「ひとり起業」の原点です。

こうして「ひとりビジネスを模索する人生」が始まりました。

──つづく。

おわりに

僕はこの詐欺にあったことで、ほぼ全財産を失ってしまいました。

さらに人間不信に陥り、人に会うことはもちろん、外出することも困難になりました。

そしてこの時期に、長男が生まれました。
妻は長女、長男の育児のため、僕が家族4人を食べさせていかなければなりません。

次回は、この第2のどん底で、僕がどう動いたかを語ります。

続きはこちら。
👉 【第2のどん底③ 転落編】家族4人、六畳一間の居候生活。怒りを生きる力に変えた日々

最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。

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初めて僕の記事を読んでくださった方へ──
よければ、最初に書いた自己紹介の記事も読んでみてください。

せきたつや

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