アンドロイド転生1704
2134年8月20日
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兄に「国民になろう」と言われたケンジ。だがケンジは頑なだった。すると兄はとうとう怒りを露わにし、「執念深い奴め」という鋭い言葉の矢を放った。
さらに兄はケンジの目の前で居間を歩き回り、タウンに行けば適切な治療を受けて、また以前と同じように歩けるようになると言う。そして彼は弟をじっと見つめた。
「タケルは村の力になりたいと言っていた。今、ここでタケルの遺志を継ごう。それが生き残った俺たちにできる唯一の『供養』だ」
・・・
その日の深夜
ケンジは夢を見ていた。夢の舞台は、一本道。その先には霧が立ち込める夕暮れの薄暗い森。杖を突いて立ち尽くすケンジ。そこに遠くから人影が見え、ケンジは目を凝らした。
(誰だ?)
人影はこちらに向かってやって来る。どんどん近づいて、やがて姿形がはっきりと見えた。若者は清々しく晴れかに微笑んでいる。それはタケルだった。
『やあ、ケンジさん』
『お、お前…生きてたのか…!』
『はい』
『そ、そうか…生きてたんだな。良かった、本当に良かった』
安堵するケンジにタケルは満足そうに頷くと、静かに背後を指し示した。
『今日は、ケンジさんにある人を紹介しようと思いまして』
『ある人?』
『ええ』
霧の向こうから、もうひとつの人影が近づいてくる。その姿を認めた瞬間、ケンジの呼吸が驚きに止まった。
『と、父さん…』
『やあ、久しぶりだな。元気か?』
そこに立っていたのは、30代のリョウヘイだった。5歳のケンジを救って命を落とした、あの日のままの姿。
ケンジは慌てて駆け寄ろうとして、足元をよろめかせた。すかさず差し出された父の逞しい手が、ケンジの身体をしっかりと支える。
『…有難う。いや、すっかり歳を取ってしまったよ。もう…90なんだ』
若々しい父を見上げ、ケンジは力なく笑った。
『父さんは…あの時のままだな』
その瞬間、心臓を鷲掴みにされたような痛みがケンジを襲った。彼はリョウヘイの手を振り払うようにして、首を横に振った。
『父さん…俺は、取り返しのつかないことをした。無謀で、浅はかだった。本当に…馬鹿だった』
『何を言っているんだ?』
『あの時、俺が部屋に戻らなければ…父さんは死なずに済んだんだ』
85年前の「あの日」。おもちゃのピストルで敵を倒せると信じた5歳のケンジ。その結果、自分を庇った父が凶弾に倒れた。リョウヘイはそんな息子の言葉を聞くと、自慢げに笑った。
『お前は、家族を守ろうとしたんだ。凄いことじゃないか』
『凄くないよ…。お父さん、ごめん…ごめんなさい…。ぼ、僕…』
いつの間にか、ケンジの口調は幼い子供に戻っていた。姿もまた、あの日のままの5歳の浴衣姿。リョウヘイは静かに腰を落とし、小さなケンジの目線に合わせた。
『お前は、父さんの自慢の息子だ』
『ほ、本当? 怒ってない…?』
『どうして怒る必要があるんだ?』
『だって…僕のせいで、お父さんは…』
ケンジの瞳から、大粒の涙がポロポロとこぼれ落ちた。リョウヘイはケンジの頭を力強く撫でると、そのままひょいと抱き上げた。そして、射抜くような真剣な眼差しで息子を見つめた。
『いいか、ケンジ。父さんと約束してくれ。金輪際、「僕のせいで」とは言わないこと。そして、誓うんだ。お前は生きるんだ。みんなの分まで幸せになるんだ。いいか? 絶対だぞ』
父の言葉が胸に刺さり、ケンジは言葉にならない声を漏らしながら、唇を噛み締める。涙が次々と頬を伝った。リョウヘイはそれを大きな手で優しく拭い、ただ静かに息子を抱きしめ続けた。
※リョウヘイが命を落としたシーンです
