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第11話《GLORIA》番外編 拗らせファーストラブ〜アラサー女は死んだ初恋相手を助けるためにタイムリープする〜

⬛︎第11話《GLORIA》#2

⬛︎第11話《GLORIA》番外編

【side:麻理子】
(※)当時のケータイ小説の名残で表記しています。


貸したスマホ片手に歩く里穂を見て、あたしは不思議に思っていた。

黒咲くんの様子を見にきたのがあたしと里穂という珍しい組み合わせだったから。

画面越しに見える姿は里穂からどう見えているのだろう。

上下を気にするあたしと何が違うのか。

ふと、光る石に合わせてドレスも光らせたいと発言した芽々を思い出す。

暗くても光を放つ光沢のある粒を眩して、奏が手先の器用さを発揮し完成させた。

まさに麻理子のために作られたドレスである。

周りは片田舎では浮いてしまうほどに現実離れしていると褒め称えるが、麻理子から言わせてみればどんぐりの背比べでしかない。

小さい頃はテレビの中でしか見えてこなかった世界がどんどん近くなってきて、気づけば知らない顔が誰よりも近く見えてくる。

冠を被って最強だと思い込んだいたら、いきなりカーテンがめくられて同じように恍惚に笑っていた人がいた。

自分はこんな顔をしていたのかとゾッとし、下を見ると見上げてくるたくさんの美醜の手があった。

怖くなって上を見れば強烈な光を放つ足がある。

手を伸ばしてもそれには届かない。

何度も踏みつけられて、気づけばたくさんの手の一本になっていた。


「じゃあ開けてくださーい」

「えっ!?  あたしが開けるの!?」

視聴覚室の前に着くと里穂が背中を押し、あたしを遠慮なく前に進ませようとする。

ニヤニヤする笑い方にあたしはムッとして口をへの字にして睨んでみたが、全く里穂にはつうじていなかった。

「ほらほら女王様頼みますよー」

「もーっ、ええい!」

勢いに任せて思いきり引き戸を開く。

緊張から固く目を瞑り、裏返った声を張った。

「く、黒咲くん! ドレス出来たんだけどどうかな?」

赤くなる頬を抑え、勇気を出して目を開くと視界にキラキラが広がった。


「……え?」

視聴覚室に散りばめられた光る石。

それはまるで簡易的なプラネタリウムのようだった。

天然の星空に見慣れてはいてもまた異なる小さな寄せ集めの輝きに息を呑んだ。

「わぁー、なにこれすごーい」

「あ、来たんだね」

「これが光る石なんだねー。 すごいなぁ、ちょっと感動しちゃった」

「そのドレスも光るんだね。 光の粒がキラキラしてる」

その言葉に固まってしまう。

無邪気に笑う芽々の姿が頭をよぎった。

「これはめめりんが考えて……」

「へぇ、時森が……。さすが、北島の良さを引き出してるよなぁ」

誰にでも優しい黒咲くん。

でもその優しさが今ほど痛く感じたことはない。

その良さを特別に感じてくれているわけではないとわかっていたからであった。

嫌でもわかる、ケジメの時だ。

芽々の親友にそれを見られているというのが今のあたしにはちょうど良かった。


「……黒咲くんは、どう思う?」

「え?」

「何も思わない? あたし、ドレス着て黒咲くんの前に立って……」

「……キレイだと思うよ。 本当に星の女王様っているんだなって、そう錯覚しそうになるくらい」

「……うん、ありがとう」


カメラがあるから泣かなくて済む。

さっぱりさせて、未来へ歩き出す。

拗らせるのは女王に似つかわしくないのだから。

艶やかに笑うのがあたしが描くかっこいい女王様だ。


「里穂っち、動画撮影お願い。 あたし、奏とめめりん呼んでくるから」

「……わかった」

引き戸を抜けて、現実世界へと帰る。

せっかく整えたキラキラが滲んで見えた。

【姫を辞めるためには、淡さなんていらない】

不慣れなヒールの音が廊下に響いていた。


***

【side:里穂】


麻理子が去ったあと、視聴覚室に残されたアタシは黒咲くんを見てため息をつくしかなかった。

「黒咲くんって罪作りだねぇ」

「ええ?」

「誰に好意向けられてものらりくらり。 それだと結婚どころか、恋愛も難しいんじゃないの?」

その言葉に対する反応は遅く、鈍いものだった。

「……責任、とれないから」

「責任?」

「家に来てもらうことになるから。 そんな理由が前提の結婚なんか、したくないよ」

「……それじゃあ、あんたはずっと孤独だよ。 向き合おうとしてる人にもその態度貫くの?」

返答はない。

いや、喉の奥に言葉を詰まらせていた。

アタシは肩を落として辺り一面の幻想世界を眺めながら、ここは全てが夢で出来たような世界だと感じていた。

「アタシは将来、たくさん子供を産むよ。 この町に残る。 アタシは好きだから。ここで生きるよ」

「……ありがとう」


ーーバタバタとした音が近づいてくる。

やがてそれは視聴覚室の前で止まり、荒々しく引き戸が開かれた。

「麻理子様がすぐ行けって何事!?」

長い髪を乱して登場した芽々に笑ってしまう。

スイッチが入ると真っ直ぐ全力に動く芽々は壁をぶち抜く力を持っている。

たくさんの手が引っ張ってきて涙することもあるけれど、それを振り払えば何も怖いものはない。

誰もがその一心不乱な姿の背を見るばかりなのだから。

「って、里穂と黒咲くんだけ?」

「芽々の登場派手だなぁ」

「えー、そんなこと言われても」

芽々はよく黒咲くんを星だと言う。

星のようにキラキラして優しく癒してくれる。

笑顔が一番星だと嬉しそうに語っていた。

もし黒咲くんが星なのだとしたら、芽々はその星がいるから輝ける月のような存在かもしれない。

誰かのために小さくても大きく見せて、夜空で圧倒的に輝く存在。

同じ夜空という舞台にありながらも、見える姿と実態は異なっている。

遠くにある星ほど、どんな姿をしているかわからないので、手を伸ばそうなんていう発想もなかった。

想えば一直線。

自分の想いよりも相手を優先して、怖いもの知らずに駆け寄っていくのはとても美しく見えた。

「あとは当日の動き決めるだけだから、アタシが麻理子様たちと話してくるよ」

「え?」

「芽々は黒咲くんと片付けね。 当日、石運びやすいようまとめておいてね!」

「おい、しば──」

「「……」」

視聴覚室から出ていくも、こっそりカメラ代わりのスマートフォンは置いてきて二人の様子を観察した。

「か、片付けしよっか」

「……うん」

ぎこちなく石を拾い上げていく二人は、お互いに想いを拗らせているようにしか見えない。

恋愛とは難しいものだと思いつつ、祝福を送りたくなるほどには応援している自分に気づいて鼻で笑ってしまった。

「やっぱアタシは芽々の味方なんだなぁ」


⬛︎NEXT
第11.5話《誰がために協奏する》


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